研究課題/領域番号 |
22K07248
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 佐知子 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (70447845)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | がん免疫応答 / 免疫チェックポイント阻害剤 / 酸化ストレス / 代謝 / がん免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
チェックポイント阻害剤(ICI)は様々ながん種で治療効果が認められ臨床応用が進んでいる。一方、その治療効果は限定的であり、治療抵抗性の原因究明が求められている。本研究では、ICI治療抵抗性に関わるがん細胞の遺伝子異常に着目し、がん細胞の遺伝子発現変化に伴う腫瘍局所の免疫細胞の機能変化、および免疫機能変化をもたらすがん細胞側の要因を解析することで、ICI治療抵抗性機序を解明し、新たながん免疫療法の開発につなげる。
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研究実績の概要 |
本研究は免疫チェックポイント阻害剤(ICI)治療抵抗性となるがんの遺伝子変異を探索し、がんの遺伝子変異により治療抵抗性となる機序を解明することを目的とし解析を進めている。昨年度までに、TCGAデーターベースを用いた探索によりICI治療効果に関与する遺伝子群を同定した。同定した治療予後に関わる分子の発現を欠損させたマウスがん細胞株の担がんマウスモデルで、ICI治療抵抗性を示すこと、また、RNA-seq解析から腫瘍浸潤CD8+T細胞の活性化や増殖に関与する遺伝子発現が有意に低下し、がん細胞では代謝に関わる遺伝子発現群が亢進していることを明らかにした。本年度は、がん細胞の代謝変化を細胞外フラックスアナライザーを用いて詳細に解析し、当該分子発現欠損がん細胞株では酸化的リン酸化が亢進していることを明らかにした。TCGAデータベースを用いたRNA-seq解析から、ヒトのさまざまながん種においても当該分子発現が低いがん細胞では酸化的リン酸化関連遺伝子発現が亢進していることが示された。さらに、ChIPアッセイ、およびルシフェラーゼアッセイによる解析から、当該分子の下流のシグナル分子が酸化的リン酸化関連遺伝子の発現制御に関与していることが明らかとなった。また、当該分子欠損細胞株では酸化的リン酸化の亢進に伴い活性酸素の産生が増加していることが示された。そこで、当該分子欠損がん細胞株から産生される活性酸素のCD8+T細胞への影響について解析した結果、活性酸素の一つである過酸化水素によりCD8+T細胞のアポトーシスの誘導および細胞増殖が抑制され、抗酸化剤の添加によりアポトーシスおよび増殖抑制は減弱することが示された。今後、がん細胞の当該分子発現抑制によって引き起こされる酸化ストレス環境下でのCD8+T細胞の機能変化について詳細な解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ICI治療抵抗性に関わるがん細胞の分子を特定し、当該分子発現を欠損させたがん細胞株での詳細な代謝変化、また、がん細胞の代謝変化に伴い産生される活性酸素によるCD8+T細胞への影響を明らかにした。さらに、当該分子発現欠損がん細胞株の担がんマウスモデルでの腫瘍浸潤CD8+T細胞機能解析も進めており、ICI治療抵抗性の機序の解明に向けて研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
がん細胞での当該分子発現の欠損により、がん細胞で酸化的リン酸化が亢進しROS産生が増加していることが明らかとなったことから、ROS産生に伴う酸化ストレス下でのCD8+T細胞の代謝および機能変化についてシングルセルレベルで詳細に解析する。また、当該分子発現欠損がん細胞株を用いた担がんマウスモデルでの腫瘍微小環境でのCD8+T細胞の機能変化および、酸化ストレス抑制によるICI治療効果との関連について解析を進める。
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