研究課題/領域番号 |
22K07258
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
市川 大樹 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (60462793)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 多発性骨髄腫 / エピゲノム / 薬剤耐性 / 免疫調節薬 |
研究開始時の研究の概要 |
癌治療においては, ゲノム解析研究により遺伝子変異に応じた分子標的薬を選択するプレシジョン・メディシンが行われはじめている. 一方, 様々ながんにおいてエピジェネティクス異常の関与が報告されているものの, エピゲノム解析による適切ながん治療選択の確立にはまだ至っていない. 多発性骨髄腫は溶骨性変化や腎障害などを呈する致死性造血器腫瘍の一つである. レナリドミドなどの登場により治療改善が見られているが, これらの薬剤に抵抗性を示す多発性骨髄腫が多数存在している. 本研究ではエピゲノム制御に着目し,レナリドミド耐性機構を解明することで新規治療の開発に繋げていく.
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研究実績の概要 |
多発性骨髄腫はレナリドミド(Len)などの薬剤を用いても治癒には至らず絶対予後不良である. 我々はLen結合タンパク質であるCRBNとは無関係に, Len感受性低下因子として, メチル化ヒストン結合分子(CDYL2)を見出している. これは, Len感受性MM細胞株にCDYL2を過剰発現させることで証明してきた. 一方で, Len耐性株においては, CDYL2とそのisoformをノックダウンさせてもLen耐性が解除されなかった. そこで, RNAMM CoMMpass Study(MM患者RNAデータ)より解析を行った結果, H3メチル化酵素とCDYL2両高発現MM患者において優位に予後不良であった. さらにin vitroで CDYL2ノックダウンしたLen耐性MM細胞株を用いた結果, H3メチル化酵素阻害存在下でLen処理を行うとLen依存的に細胞死を誘導することが明らかとなった. これまでにLen誘導細胞死がcaspase-8/9/3経路を介したアポトーシスであることを見出しているが, どういった分子によるのかは不明であり, RNA-seq解析を行った. その結果, CDYL2をノックダウンしたLen耐性MM細胞株において優位に“response to dsRNA up”という遺伝子セットがエンリッチされていた. さらにFACSを用いてdsRNAの発現量を解析したところ, Len感受性MM細胞株においてのみLen処理で発現が誘導されることが判明した. 今後は, CDYL2をノックダウンしたLen耐性MM細胞株におけるH3メチル化酵素阻害剤下でのLen処理によりdsRNAが誘導されるのか, とH3メチル化酵素とCDYL2との関係性およびcaspase-8/9/3の活性化に至る上流シグナルの解析を行っていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の2023年度研究計画は, MM CoMMpass StudyのRNA-seq dataより得られた H3メチル化酵素とCDYL2との協調について阻害剤などとの併用により検討を行うこと, さらにCDYL2のレナリドミド(Len)誘導細胞死に対する抑制機序について明らかにすることであった. 実際に前者については,CDYL2をノックダウンした Len耐性MM細胞株において, H3メチル化酵素の阻害剤を用いることでLen依存的に細胞死を誘導することがわかった. 一方, Len誘導細胞死については, AnnexinV/PI染色によりアポトーシスであること, またcaspase-8/9/3経路の活性化によることを明らかにした. さらに, Len処理で誘導される因子のうちCDYL2により抑制される分子について, Len感受性MM細胞株とCDYL2をノックダウンしたLen耐性MM細胞株から得たmRNAよりRNA-seq・GSE解析を行った. その結果, “Antiviral module”および“response to dsRNA up”という遺伝子セットが優位にLen感受性株とCDYL2をノックダウンしたLen耐性MM細胞株においてエンリッチされていた. そこで, dsRNAについてFACSを用いて発現量を解析したところ, Len感受性MM細胞株においてLen処理により発現誘導されて, Len耐性株では全く誘導されていなかった.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は下記の通り遂行する. 1. CDYL2をノックダウンさせたLen耐性MM細胞株において, H3メチル化酵素阻害下におけるLen処理でdsRNAが実際に誘導され, Len誘導細胞死に影響を与えるのかをMTT法・FACS法により検討する. 2.H3メチル化酵素がどのような分子機構でCDYL2と協調して, Len誘導細胞死に関与しているかを調べるために, IP-WB法などにより分子機序を検討する. 3. Lenにおいて重要な分子であるCRBNとdsRNAの発現制御について, CRBNノックダウンしたLen感受性MM細胞株を用いて, dsRNA発現解析や, CRBNの基質であるIKZF1/3, CK1alphaなどをそれぞれノックダウンした際のdsRNA発現を確認することで, その分子機序について検討する. 4. in vivoで, CDYL2をノックダウンしたLen耐性MM細胞株においてLen処理で細胞死を誘導することができるのか, またCDYL2過剰発現させたLen感受性MM細胞株においてLen処理で細胞死を抑制することができるのかをそれぞれSCIDマウス皮下移植したのちにLenおよびH3メチル化酵素阻害剤を用いて, 腫瘍径および腫瘍を摘出したのちにdsRNAやcaspae-8/3などの免疫染色する検討を試みる.
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