研究課題
基盤研究(C)
EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子変異は、本邦を含む東アジア人で頻度が高く、特に肺腺がんの約半数に存在することが知られている。進行・再発 EGFR変異肺がんに対する第一選択薬は EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)であり、これまでに第1・第2・第3世代の EGFR-TKIが臨床応用されている。近年、第4世代と呼ばれる EGFR-TKI(EGFR T790M/C797S 2次的変異を阻害可能)が開発されている。本研究では、第4世代 EGFR-TKIの有用性と、第4世代 EGFR-TKIに対する獲得耐性機序を明らかにする。
EGFR変異肺がんに対し1次治療としてオシメルチニブを使用した場合に生じ得る2次的変異をBI4020(第4世代EGFR-TKI)で克服可能かという課題について、本年度も解析を継続した。昨年度に引き続き、DEL19+S768IまたはL858R+S768Iを有するBa/F3細胞株の樹立を試みたものの、最終的には樹立できなかった。また、BI4020を1次治療として用いた場合に生じ得る獲得耐性機序を探索するという課題について、昨年度PC9株よりPC9BIR株(獲得耐性株)を樹立し、EGFRの2次的変異は有さないことを確認していたが、本年度は引き続きその耐性機序の探索をおこなった。PC9BIR株はMETタンパクの発現亢進およびリン酸化の亢進があり、METによるbypass signalによって耐性が生じたと考えられたが、その後MET阻害剤との併用で耐性は克服できなかった。またMET遺伝子のコピー数増加も認めなかった。PC9株とPC9BIR株について、RNAシーケンスを行い比較したところ、FGFR1の発現亢進も認めたが、FGFR1の阻害でも耐性克服はできなかった。今後も引き続きPC9BIR株の耐性機序について探索を進める予定である。さらに、HCC4006、HCC827、H1975株からもBI4020耐性株が樹立でき、来年度に耐性機序の探索を進める予定である。さらに、稀なEGFR変異であるエクソン20挿入変異を有する肺がんモデルについてもmobocertinib耐性機序の検討を進め、T790MとC797Sが主な耐性機序であること、T790Mについてはsunvozertinibで克服可能であることを同定し論文化した。一方、昨年度に解析を開始した新規EGFR変異解析法であるIdylla法の有用性および正確性を検証する研究(当院ゲノム生物学教室との共同研究)では、解析が完了し論文報告した。
2: おおむね順調に進展している
S768Iを2次的変異として有するBa/F3株は樹立できなかったが、それ以外の解析は多少の遅れはあるものの順調に進んでいる。また、EGFRエクソン20挿入変異モデルに関する解析や、新規EGFR変異解析法であるIdylla法の有用性および正確性に関する解析は極めて順調に進み、論文化も完了したため、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
今年度に樹立したHCC827BIR株、HCC4006BIR株、H1975BIR株について獲得耐性機序の探索を始めるとともに、今年度に完了しなかったPC9BIR株の耐性機序の探索を継続する。これらの研究について完了を目指すとともに、近年注目されている EGFR uncommon変異を対象とした獲得耐性機序に関する検討も並行して進める方針である。
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