研究課題/領域番号 |
22K07293
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
今井 源 東北大学, 大学病院, 助教 (80747585)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 大腸癌 / オキサリプラチン / NINJ2 / 抗菌薬 / 前向きⅡ相試験 / 抗癌剤 / マイクロビオーム / メタボローム / 抗がん剤 |
研究開始時の研究の概要 |
東北大学個別化医療センターのバイオバンク検体を用い、抗がん剤感受性を示した患者の、がん組織内に分布する細菌種を同定する。 その細菌を用いて、抗がん剤の感受性を高めるための新たながん治療法の開発を目指す。 またその菌種が抗がん剤感受性を高めるメカニズムを詳細に解析し、抗がん剤の効果予測バイオマーカーを確立させる。このバイオマーカー確立は、抗がん剤の感受性が期待できない患者への、不要な抗がん剤の投与を避けることに繋がり、がん患者の副作用を回避させ得る新たな治療戦略となり得る。
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研究実績の概要 |
大腸がんと細菌の関係性は近年盛んに研究されている。Citrtobacter freundii(C.Freundii)は腸内常在菌であり、かつ大腸がんを初め多種の癌組織内にも浸潤し、腫瘍微小環境を形成している。マイクロビオームの癌細胞に対する影響を検討するため、C.Freundiiの培養液を濾過し、その濾液を大腸癌細胞株に作用させ、癌細胞内での遺伝子変化をRNA-seq解析により網羅的解析を行った。その結果、C.Freundiiにより癌細胞内でNinjurin2(NINJ2)遺伝子発現が低下する事を新たに発見した。NINJ2 shRNA及びNINJ2過剰発現プラスミドの大腸癌細胞株への導入実験を行い、NINJ2発現低下がオキサリプラチン(進行大腸癌治療におけるKey drugの一つ)の効果を減弱させる事をin vitro実験で証明した。また大腸癌Xenograftモデルを用いたin vivoの検証でも組織内でNINJ2発現が低下する事でオキサリプラチンの効果が低下することを示した。 一連の実験内でNINJ2を過剰発現させることにより、大腸癌に対するオキサリプラチンの殺細効果が維持されることを示しており、このことは将来的にNINJ2を過剰発現させる新たな薬剤の開発を介した、進行大腸癌患者の生命予後を改善させる新規治療法の開発に繋がることを示唆している。現在、C.Freundiiの培養濾液がいかなるメカニズムで大腸癌細胞の遺伝子発現に影響したかを、細菌から分泌されるExtracellular vesiclesの内包物質の解析により明らかにするため、さらに実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、体内のマイクロビオームと大腸癌化学療法の関係性の一端を解明した。しかしながら、発見した事実を臨床応用するためには、さらに詳細なメカニズムの解析が必要である。現在、細菌が分泌するExtracellular vesicleの解析を進めており、それに内包されている物質の同定、定量に努めている。同定、定量されれば、そのうちどの物質が癌細胞に遺伝子変異を生じさせ、オキサリプラチンの耐性を生じさせたかが明らかになる可能性がある。現在はその点に重点を置き研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
体内のマイクロビオーム(腸内細菌叢及び癌組織内細菌叢)の変化が、抗癌剤に対する腫瘍免疫に変化を生じさせることが報告されてきている。 本研究で同定したNINJ2遺伝子は、近年血管内皮の炎症を制御するレギュレーターであることが発見報告された(Wang Jingjing et al. Cell Signaling. 2017Jul:34:231-241)。NINJ2がTRL4と相互作用することで、NF-kBを制御する事が報告されている。一方でオキサリプラチン投与によりNK-kBの活性が低下することで抗腫瘍効果が発現されることも報告されている(Cascrius S et al. Am J Clin Oncol. 2007 Oct;30:526-530)。これらの事実を統合すると、我々が発見したNINJ2発現低下によりNF-kB活性化が生じ、それを起点にオキサリプラチンの効果減弱が観察された可能性が浮上する。今後はNINJ2発現変化による癌組織内の炎症細胞や炎症サイトカインの定量を行う事で、オキサリプラチン耐性の詳細なメカニズムを解明し、最終的にはオキサリプラチンの耐性を解除させる下目の新規大腸癌治療オプションの確立に努めていく。
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