研究課題/領域番号 |
22K07300
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 晃司 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70621019)
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研究分担者 |
黒川 幸典 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10470197)
和田 遼平 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10912032)
高橋 剛 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50452389)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 環状RNA / 食道癌 / リキッドバイオプシー |
研究開始時の研究の概要 |
circular RNAはnon-coding RNAのひとつで、バックスプライシングによって生成される数百~数千の塩基からなる環状構造を有するRNAである。その構造からRNAseに耐性を持ち、線状RNAよりも安定している。本研究の目的は、食道癌に特徴的なcircRNAを探索し、臨床的に有用なバイオマーカー(診断・治療効果予測・予後予測)となるかを検討することである。さらに、これらcircRNAの特性(安定性・転写翻訳制御)を生かした核酸治療薬開発の基盤確立を目指す。とくに、スプライシング制御に着目した、新規治療戦略の基礎的検討を行う。
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研究実績の概要 |
circular RNA(circRNA)は、数千の塩基からなる環状構造を持ち、線状RNAよりも構造が安定している。食道癌において血清中のcircRNAを用いた報告はない。食道扁平上皮癌において多く発現するcircRNAを特定し、新規診断バイオマーカーへの応用の可能性を探索することを目的とした。 1.Target circ RNAの設定:NGSを行い、targetの設定から行った。食道扁平上皮癌の組織検体を用いて腫瘍部10例と正常部7例から抽出したRNAを用いてcircRNA-seqを行い、腫瘍部でup regulationとなるcircRNAを15種抽出した。癌部で有意に(FC>4, FDR<0.1)高発現となる5種のcircRNAを抽出した。別患者5名の組織にて、5種のcircRNAの発現をRT-PCRにて測定し、再現性が得られたhsa_circ_Aとhsa_circ_Bの2種に絞り込み、血清での検討へ進む方針とした。 2.食道癌臨床検体(血清)での発現定量・背景との比較:今回、血清から抽出したRNAを用いて血清中のcircRNAをRT-PCRにて定量化する手法を確立した。そして食道扁平上皮癌症例 142例(術前無治療41例、術前DCF症例101例)の外来初診時採取の血清と、健常人90名の血清を対象とし、血清中のcircRNAの発現量を定量化してESCC有病群と健常人を比較することによりバイオマーカーとしての可能性を検討した。予後予測マーカーとしての有用性を検討するために、test setESCC32例の治療前血中における発現量を測定しYouden's indexより再発予測のcutoffを設定した。validation setESCC101例で同様に発現量を測定し予後解析を行ったところ、2種のcircRNAのうちいずれかが閾値以上であることが独立予後不良因子であった。血中hsa_circ_Aとhsa_circ_Bは食道扁平上皮癌における新規の予後予測マーカーとなる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたバイオマーカー(診断・治療効果予測・予後予測)としての有用性の検討として、1.NGSにて抽出された候補circRNAは、食道癌の診断および治療効果予測のバイオマーカーとして臨床的に有用性があるか?2.どの程度疾患特異性はあるのか?に関して検討をすすめ、候補となる環状RNAの絞り込みがすすんでおり、当院での食道癌患者142例での検討において診断能の評価を完了することができた。また、健常人血清も収集することができ、食道癌診断マーカーとしての可能性も確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに食道癌症例および健常人サンプルでの追加測定をすすめ、診断能をより正確に評価する。また、複数の環状RNAの適切な組み合わせを検討することで、より高い診断法を確立する。また食道癌治療にともなう変動を評価することで、バイオマーカーとしての妥当性を検証する。他癌での血液中の環状RNAを定量し、本研究で候補として抽出された環状RNAの疾患特異性を検討する。候補環状RNAと臨床病理学的因子との相関を検討し、癌の進行や転移に関連する環状RNAを同定し、データベースを用いた結合miRNA候補を同定する。ネットワーク解析を用いて、下流シグナルの変動を予測し、食道癌細胞株を用いた機能解析を追加する。また環状RNA発現制御にかかわる可能性のあるRBPやスプライシング因子に関しての検討を行う。
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