研究課題/領域番号 |
22K07304
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
荻野 広和 徳島大学, 病院, 講師 (20745294)
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研究分担者 |
三橋 惇志 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任助教 (00833732)
木宿 昌俊 徳島大学, 病院, 薬剤師 (90597501)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | がん免疫療法 / 樹状細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が現在癌診療において幅広く用いられているが、単剤治療の効果は限局的であり、「複合がん免疫療法」の開発が進められている。腫瘍内免疫療法とは免疫賦活薬を腫瘍局所へ投与することで効率よく抗腫瘍免疫応答を誘導する方法であり、以前我々は抗原提示細胞である樹状細胞を皮下腫瘍局所へ投与することで全身的な抗腫瘍免疫応答を誘導することを報告している。本研究では、樹状細胞を腫瘍局所へ投与する腫瘍内免疫療法とICIの併用療法は理想的な複合がん免疫療法になり得ると考え、その有用性を検証し至適投与スケジュール、有効性を規定する因子を同定することを目的に実験を行う。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、樹状細胞の腫瘍内への局所投与と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を併用する複合がん免疫療法の有効性を確立することを目的としている。予備的な実験にて、マウス悪性中皮腫細胞株であるAB1-HAをBALB/cマウス皮下へ移植したモデルにおいて、この併用療法が優れた抗腫瘍効果を示すことを見出していた。このことに基づき2022年度は以下の検討を行った。まず併用療法の至適投与スケジュールを検討すべく、AB1-HA皮下移植モデルを用い、①無治療群、②抗PD-1抗体先行投与群、③樹状細胞先行投与群、④同時開始群の4群間で比較したところ、同時開始群で最も強い抗腫瘍効果が得られた。次にこの併用療法により、樹状細胞投与局所のみならず全身性の抗腫瘍免疫応答(アブスコパル効果)が誘導されるか検討した。マウス皮下2箇所に腫瘍を移植し、①無治療群、②抗PD-1抗体単独投与群(腹腔内投与)、③樹状細胞単独投与群(樹状細胞は片側にのみ投与)、④併用投与群の4群間で比較したところ、併用治療は樹状細胞接種側のみならず非接種側においても単剤治療と比較し強い抗腫瘍効果を示した。この併用効果は樹状細胞を腫瘍局所に投与することで効率よくがん抗原の取り込み/T細胞へプライミングを可能とするためと考え、次にこのプライミング相においてどの共刺激分子が重要な役割を果たすかを検討した。我々はすでに樹状細胞上の代表的な共刺激分子であるCD80、CD86のノックアウトマウスを確立しており、野生型マウスおよびノックアウトマウス由来の樹状細胞を用いて、AB1-HA皮下腫瘍に対する併用治療の抗腫瘍効果を比較したところ、いずれの樹状細胞を用いた場合も同等の抗腫瘍効果を示した。このことは樹状細胞上にCD80/86いずれか一方でも発現していれば十分な共刺激がT細胞に入る可能性を示唆しており、現在さらなる解析を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定として本研究課題の全期間を通じて①樹状細胞腫瘍内投与とICI投与の至適投与スケジュールについての検討、②樹状細胞腫瘍内投与とICI併用療法によるアブスコパル効果についての検討、③治療で誘導されるCD8陽性T細胞の腫瘍に対する細胞傷害活性についての検討、④樹状細胞腫瘍内投与によるCD8陽性T細胞活性化機構の検討、⑤新規複合がん免疫療法の効果規定因子の同定を行う予定としていた。2022年度はこのうち①と②の解析を行い結果を得た。並行して④についてCD80およびCD86ノックアウトマウスを用いて検討したところ、当初の予定と異なりCD80/CD86単独欠損では表現系に差がないことが明らかとなったため、現在追加で新たなノックアウトマウスの作成を行なっている。このように一部当初の仮説と異なる部分もあるが、全体として当初の予定通り、概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討では主にマウス悪性中皮腫細胞株であるAB1-HAの皮下移植モデルを用いて行なってきた。今後の予定としては、①まずこれまでに得られた現象が他の細胞株やモデルを用いた場合にも同様に観察されるかについて検討する。具体的にはマウス肺癌細胞株であるLLCやCMT167、マウス大腸癌細胞株であるMC38などを用いる。②次にこの併用療法により得られる抗腫瘍効果がCD8陽性T細胞による抗腫瘍免疫応答に由来することを確認すべく、細胞傷害性アッセイを行う。具体的には治療後の腫瘍組織および流入リンパ節よりCD8陽性T細胞を単離し、in vitroにおいて腫瘍細胞と共培養した際の細胞傷害活性やサイトカイン発現レベルをクロムリリースアッセイやフローサイトメトリーなどにより解析する。③またこれまでに樹状細胞腫瘍内投与によるT細胞活性化作用はCD80/CD86の単独欠損では失われないことが明らかとなったため、現在新たなノックアウトマウスの確立を試みており、これらを用いてT細胞の活性化機構の解明を試みる。④また併用療法の効果を規定する因子を同定するため、種々のマウスを用いた検討の際に得られた腫瘍検体を用いて、治療後の腫瘍浸潤免疫細胞数、各細胞のフェノタイプなどを検討する予定としている。
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