研究課題/領域番号 |
22K07316
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51010:基盤脳科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 秀典 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00407686)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ベータ波 / 大脳皮質運動野 / 運動計画 / 脳波位相 / 高ガンマ波 / デルタ波 / Phase-Amplitude Coupling / 神経修飾 / 認知行動 / 光遺伝学 / デルタ・シータ波 / オプトジェネティクス(光遺伝学) / 位相ロック |
研究開始時の研究の概要 |
大脳皮質運動野で観測される脳波の一つであるベータ波は運動時に特徴的に観測される脳波として知られているがどのような運動情報を担っているかに不明な点が多い.光遺伝学的手法を使ってベータ波発生中に運動野を光刺激することでベータ波の生理学的意味を調査する.ベータ波は適切な運動を誘導する知覚情報をその位相で表現する可能性を明らかにすることで,領域に依存しない脳の柔軟な情報表現能力を本研究を通じて提案する.
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研究実績の概要 |
大脳皮質の運動野の神経活動は実際の運動と密接な関係があり,運動制御に直接的な役割を果たすと考えられてきた.一方,運動野で特徴的に観測されるベータ波については視覚刺激応答がある事実から何を表現するのか不明な点が多い.本課題はベータ波発生時に大脳皮質運動野の神経活動を修飾した場合の神経・行動応答を記録し、ベータ波の生理学的意味を明らかにする.修飾有無に応じた応答を比較し,ベータ波の生理学的意味の一つとして大脳皮質における機能領域部位に依存しない脳の柔軟な情報表現を提案する. 研究計画における刺激応答実験を実施した.視覚条件弁別課題中の実験動物(サル)の大脳皮質運動野(2か所)と体性感覚野(1か所)においてベータ波が特徴的に発生する視覚条件提示後の運動準備期間に電流刺激した.刺激時系列はベータ帯域(20Hz)に加えて,比較としてデルタ(5Hz),アルファ(10Hz),ガンマ(40Hz),高ガンマ(100Hz)を適用した.刺激強度は運動閾値下に設定され,刺激による運動惹起と課題失行は観測されなかった.
潜在的な注意に関与する前頭眼野と運動計画の役割を担う運動前野において,昨年度に発見した視覚提示に同期するデルタ波と高ガンマ波帯域脳波の解析を進めた.多点同時計測されたデルタ波の試行間位相コヒーレンス発生頻度の集合で構成されたデルタ波パタンは視覚条件の別を表現した.またデルタ波の試行間コヒーレンスと高ガンマ波振幅変化の同期出現(Phase-Amplitude Coupling, PAC)について視覚条件を最も弁別するPACパタンは運動直前に再出現した.本結果は脳波位相は課題条件をコードし,注意を伴う視覚情報を運動計画に変換する機構が皮質領域間を横断して並列的に存在する可能性を示唆する.脳波に表現される複数皮質機能領域の並列的神経情報処理は,振動的神経活動として本課題の大局的支持となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い,神経応答記録のために大脳皮質運動野への128チャネル電極留置手術を成功させ,術後の多点脳波記録を成功させた.続いて,2方向の到達目標を指示する視覚条件提示に対する遅延弁別課題中の大脳皮質刺激実験を実施した.光刺激の準備をしていたが遺伝子発現不良等の実験中の不測事態に備えて,まずは確実な成果が見積もられる従来の刺激手法である電流刺激応答を優先して記録した.刺激において多点電極を使用したことで実験中の複数領域の刺激応答記録を可能にした.尚,電流刺激実験に先行して運動閾値下の電流強度を調査した.また電流刺激による記録脳波の不感に対応するために無刺激の試行を毎日必ず記録し,有刺激の試行における神経活動の基底とする. また前頭眼野と運動前野におけるデルタ波と高ガンマ波の試行間コヒーレンスとPACの課題関連性について解析を並行して進行し,論文投稿の準備に至った.本申請における振動的神経活動の生理学的意味についての一つの解として発表する価値は大きい.以上から二年次における目標達成と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に記録されたデータについて行動変化についてまずは解析する.電流刺激の有無による運動開始遅延,上肢到達時間潜時,課題正答率について刺激部位と刺激時系列の相違を比較する.また神経活動について視覚条件提示時のベータ波の発生確認と試行間位相コヒーレンス発生頻度を無刺激試行について算出する.有刺激試行において行動変化がある場合の発生ベータ波の振幅と位相,脳部位を無刺激試行のデータから特定する. 不測の急な研究室閉鎖により継続的実験と準備された実験動物の使用は困難となった.別施設での作業を視野に入れて,実験装置の移動,実験システムと適切な実験変更を設計する.また並行して,今年度集録した記録データの上記解析を進行させる.
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