研究課題/領域番号 |
22K07317
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51010:基盤脳科学関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
正本 和人 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (60455384)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 神経血管連関 / 脳微小循環 / 大脳毛細血管 / 実験動物 / 二光子顕微鏡 / ビックデータ解析 / Stall現象 / 加齢 / 認知症 / 神経血管アンカップリング / 血管新生 |
研究開始時の研究の概要 |
認知症に対する画像診断技術は飛躍的に向上したが、認知症を根本的に治療する術はない.認知症を克服するために最も有効な対処法は、認知症の発症を阻止する予防法の確立である.これまでに認知症の発症要因の一つとして、脳血管機能の慢性的な低下が関与することが分かっている.このことは、認知症の潜伏期において脳血管機能を正常化し、生理的範囲で脳血流を維持することで、認知症の発症を予防することができる可能性を示唆する.そこで本研究では、脳の微小血管の血管反応性を制御し、標的となる脳微小血管が支配する脳領域での脳神経活動および個体の行動学習の変化を直接評価する。
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研究実績の概要 |
引き続き、神経血管カップリングを抑制した際のマウスの行動学習の評価を進めた。実験時の温度環境に注意し、正常群と抑制群との行動学習を比較したところ、抑制群で有意な遅延が認められた。本研究成果は、次年度の国内学会で発表する。さらに神経血管カップリングへの環境依存性を確認するため、実験動物の対面に他者のマウスを配置し、同様の感覚刺激実験を行った。その結果、他者がいる場合は感覚刺激に対する脳血流の増加は抑制されることがわかった。このとき、安静時の脳血流の変動に関して自発の神経活動を反映する周波数成分が増加していたことから、他者のマウスの存在により何らかの神経ネットワークが変化し、そのことにより神経血管カップリングによる脳血流の増加が抑制されたと解釈される。したがって、安静時活動の変動による神経血管カップリングへの就職作用について注意深く識別する必要がある。また安静時の脳血行動態に関しては、微小循環の変動現象に着目して評価を進めた。微小循環の障害は、血球が毛細血管内に停滞するStall現象が知られている。本研究では、毛細血管の径の変動とStall現象との因果関係を調べ、毛細血管が血球のサイズよりわずかに収縮することで血球が停滞することを実験的に示した(Murata et al., Stroke 2024)。一方、血球のサイズよりも大きい範囲での毛細血管内腔の変動は血球の運動には影響せず、またこれらの変動成分は0.1Hzの周期で0.5 μm程度の振幅であり、血管壁細胞の密度とは独立で5 μm程の機能単位で変動していることを示した(論文投稿中)。本成果に関しては3件の国内学会(うち1件は招待講演)ならびに4件の国際学会(うち3件は招待講演)での論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国際誌への論文成果(IF:8.4)ならびに1件査読中の成果を得ることができた。一方、論文成果には至っていないが、当初計画していた複数の実験において計測データの再現性が確認され、プロジェクトは最終段階に至っている。したがって、当初の計画以上に進展していると判断した。特に動物を扱う実験においては不確定要素も多く、控えめな見積もりをしていたことが起因している。学会発表を重ねる中でデータの不安部分についてさらなる検討を重ね、論文化を目指す。また、グリアならびに微小血管の構造解析においては構造から機能を推定する手法を確立しつつある。細胞内カルシウムイメージングによりある程度の機能発現を分類することで構造との相関を確認する段階にある。こちらも次年度前半には論文投稿が可能な状態である。また微小循環の評価については、構造から得られるデータはほぼ解析が終了した。特に重要な成果として、Stall現象のトリガーには構造因子以外の作用として粘性抵抗の揺らぎが作用する可能性を示唆した点が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、神経血管カップリングの抑制による神経機能への影響についてメカニズムの検討を進める。当初の計画通り薬理学による比較実験を行う。特にグリアを標的とした場合、血流による影響よりもグリアそのものの神経作用が懸念される。したがって血流の抑制によるグリアの機能への影響を追加で検討する必要がある。グリアの評価には開発中の形態解析手法を用いた比較検討を行う。また神経ネットワークの評価については、大規模な画像計測によるアプローチを進める。一方、微小循環動態の定量指標については、毛細血管の運動性が重要な指標となり得ることがわかったので、様々な病態モデルにおいて検証を行う。これまで行ってきた低酸素、脳虚血に加えて、脳出血および間欠性の低酸素曝露による実験を予定する。さらに背景因子としての加齢、Diabetic、高脂血症等についての影響についても引き続き適切なモデルを導入し検討を進める。特に、微小循環のStall現象には、血管構造と共に血球の物性や血液の粘性がより強く作用している可能性が見えてきているので、これらの病態モデルにおいて血球、あるいは血球と血管内皮細胞の界面、そして血管内皮細胞の評価に注目して検討を進める。
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