研究課題/領域番号 |
22K07319
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51010:基盤脳科学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田端 俊英 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (80303270)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | シナプス / 可塑性 / ニューロン / ヒト / iPS細胞 / シナプス・オーガナイザー / シナプス可塑性 / 学習 / 記憶 |
研究開始時の研究の概要 |
シナプス可塑性は学習・記憶の生物学的基盤である。近年,ヒトと動物ではシナプス機能が大きく異なる可能性が示されるようになってきた。本研究では、培養ヒトiPS細胞由来ニューロンに形成させたシナプス標本を用いることで、世界に先駆けてヒト中枢シナプス可塑性の基本特性を調べ、また実験動物モデル・シナプス標本において可塑性への関与が示唆されている分子について、ヒト中枢シナプス可塑性における真の役割を明らかにする。本研究は人間特有の学習・記憶のメカニズムの解明に繋がり、シナプス機能異常を伴う発達障害・精神疾患の創薬・治療法開発および人間に近い学習機能を持つ人工知能の開発を大きく前進させることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究はヒト由来iPS細胞を中枢ニューロンに分化させた培養細胞どうしでシナプスを形成させ、主として電気生理学的な手法でそのシナプス可塑性の特性を明らかにし、マウスなど他の動物種と異なるシナプス可塑性の特性がヒト中枢ニューロンにかるかどうかを明らかにすることを目指している。 初年度は研究の基礎となる2つの方法論を完成させ、さらにヒト特有のシナプスの性質の一端を示唆する結果を得た。一つは上記の方法によって得たヒト中枢シナプス標本のシナプス形成・成熟過程をシナプス・オーガナイザー分子(PTPdelta)のマイクロエクソン選択パターンを指標として詳細に分析し、ヒト胎児の脳波の周波数に近い双極電流パルスを培地に通電することとで、成熟したシナプスを形成することに成功した。また、最終的に成熟した段階のマイクロエクソン選択パターンを解析すると、マウスの成熟中枢シナプスのマイクロエクソン選択パターンと異なっていることが明らかになった。ヒトではマイクロエクソンの選択パターンの違いは発達障害等につながることが知られており、ヒトとマウスのマイクロエクソン選択パターンの相違はヒト特有の学習機能の解明につながる可能性がある。もう一つは人工シナプス測定システムの確立である。このシステムでは、培養ニューロンの樹状突起にイオン泳動でグルタミン酸等を局所投与し、当該ニューロンからパッチクランプ電位固定記憶を行い、シナプス後電流の振幅の変化を長時間にわたり測定できるようにするものである。倒立顕微鏡に自作の大型固定式ステージを装着し、投与電極と記録電極を同等のマイクロマニピュレーターで操作できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヒト由来シナプスの形成過程のトランスクリプト分析によって、当初想定していた以上にヒト特有のシナプス形成の分子機序の種特異性が示唆されるデータを得ることができた。また、マウス培養ニューロンをトレーニング標本として、人工シナプスを用いたシナプス可塑性電気生理学的測定系を構築することができた。これらを踏まえて、次年度以降、ヒトと他の動物種の中枢シナプス可塑性の特性に相違があるか否か精密な解析が可能になったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に明らかになったPTPdeltaのマイクロエクソン選択パターンをはじめとして、シナプス関連分子のmRNA発現パターンにヒト中枢シナプスに特異的な特性があるか解析する。また初年度に完成した人工シナプスを用いた実験系にperforated-patchテクニックを組みあわせることにより、細胞質分子の流失を最小化することで、より安定的に記録できるようにし、この方法を用いて、シナプス可塑性の特性をヒトとマウスの中枢ニューロンで比較していく。
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