研究課題/領域番号 |
22K07337
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51020:認知脳科学関連
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
戸松 彩花 (戸松彩花) 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特任准教授 (00415530)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 運動同期 / 引き込み現象 / ニホンザル / 行動解析 / 社会的階層 / 神経活動 / 補足運動野 / 一次運動野 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、リズミックな運動が他者のリズムに引き込まれる現象を足がかりに、社会形成につながりうる未知の神経基盤を明らかにすることを目的とする。マカクザルにリズム運動を行わせ、その最中に他者のリズムを提示してすると、サルにおいても他者のリズムに合わせた運動リズムの変調が再現された。この現象は、他者の運動部位を見つめながら運動することでより顕著に発現し、他者(生物)不在のリズム提示では効果が弱かった。本研究ではその神経基盤を解明するための発展的実験を行う。具体的には、複数脳領域における自己・他者・自他差の表象割合を基にした階層性の検討および、二者対面実験での神経活動同時記録からの相互作用解析である。
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研究実績の概要 |
本研究は、生物が「社会」を形成する礎のひとつと考えられる「運動リズムが外界のリズムに意図せず引き込まれる現象」の神経メカニズムを探るために、まずマカクザルがモデル動物として有用であることを証明し、次に他者につられている状態で運動を行うマカクザルの脳神経活動から、現象の成り立ちを探ることを目的としている。 マカクザルがモデル動物として有用であることについては、自発的なリズムでレバーを操作するマカクザルの動きが、ヒトと同様に他者につられることを、相手が実在他者の場合、相手が映像のサルであった場合、相手が非生物の場合と比較して解析し、証明した。また、実在のマカクザル同士で課題運動を行う場合は、ペアに固有のつられ方があり、さらに優位なサルが劣位のサルに合わせていくことも判明した。これらの内容はTuning in to real-time social interactions in macaques.というタイトルでPNAS誌に掲載された(Tomatsu S, Isoda M. Proc Natl Acad Sci U S A. 2023 Jun 6;120(23):e2301614120)。この内容を一般にも広く伝えようと、大学共同利用機関シンポジウム2023「現代の社会問題に挑む日本の科学」(2023年10月)において、内容をかみくだいた講演も行った。 2024年度は、さらにペアの数を増やして現象の再現性を確認するとともに、実在ペアでの課題遂行中の神経活動記録を多点刺入電極もしくは脳表電極から記録し、データの蓄積と解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、2022年度後半に開始した2頭のサルABの課題訓練を完了させ、2022年度以前から課題を行っているサルCとペアにして課題を行わせた。その結果、論文で報告したものと同様に、相手につられる現象が再現された。 さらにサルAには脳表電極を埋め込み(一次運動野、運動前野、補足運動野をカバー)サルCとのペア課題中の神経記録を継続中である。またサルCには多点電極を刺入し、ペアの相手をAやBに入れ替えながら運動前野の神経活動を記録している。記録の結果、運動前野と補足運動野のLFPを比べると、相手の運動への反応度合いが違うといえそうである。 現状では記録可能な2頭(サルAとサルC)の記録手法が異なるため、2023年度内に予定していた2頭同時神経記録の開始に関して、ほぼ準備は整ったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度に引き続き、多点電極による運動前野の神経活動記録(サルC)および脳表電極による神経活動記録(サルA)を行いデータを蓄積するとともに、サルBから多点電極による補足運動野の神経活動記録ができるよう手術を行い、2頭同時神経活動記録を開始する。同時記録は運動前野から開始し、補足運動野、島皮質などにシフトしていく予定である。得られたデータは2頭の関係性の時系列に沿って分類し、脳部位ごとにどのような時間発展が生じているかを解析することで、他者のリズムにつられてしまう神経機構の解明を目指す。
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