研究課題
基盤研究(C)
本研究は自閉症の社会性行動障害への行動療法のメカニズムを明らかにするために自閉症モデルマウスを用いて行動学的、分子生物学的な手法で解析を行う。このため、ペア飼育期間中の二者相互作用を探索的に検討し、自閉症との関連が報告されてきた脳部位を対象に、遺伝子の後天的修飾であるDNAメチル化と遺伝子発現を解析する。ペア飼育中において、どのような二者相互作用が社会性行動の寛解に影響するかを同定し、脳部位別にDNAメチル化および遺伝子発現解析を行い、社会性行動の成績との相関を解析する。本研究は自閉症の行動療法の作用機序という観点から解析を行うことで、自閉症病態の解明を促進することに貢献する。
2023年度は、2022年度に引き続き、ペア飼育中のケージ内において、どのような二者相互作用が、社会性行動に影響するのかを検討した。具体的には、幼若期から開始したペア飼育中のケージ内行動を成熟期に至るまで観察、記録した。マウスを3週齢で離乳・雌雄分けし、同腹のマウスを3パターン(パターン1: 野生型-野生型、パターン2: Tsc1+/--Tsc1+/-、パターン3: 野生型-Tsc1+/-)で15週齢まで継続的に飼育した。観察方法は、各週齢で2日間ずつ、飼育ケージ内の行動指標を記録した。3週齢から15週齢まで継続的に記録した指標を計数し、解析に用いた。2022年度では、パターン2: Tsc1+/--Tsc1+/-(自閉症モデルマウスのみでの飼育)での飼育では、執拗なほどのgroomingやsniffingをすることが見られ、ケンカに発展することが観察されたが、2023年度の追加解析では再現が得られ無かった。このため、sniffing、相互groomingなど現在指標として確立したものを各飼育パターンにおいて有意な差があるかを解析中である。また、ケージ内観察後の社会性行動との相関についても今後解析予定である。さらに、ケージ内観察及び社会性行動時間テスト終了後の全脳を用いて、DNAメチル化解析の予備検討を実施中である。本解析を行うにあたり、各飼育パターンから抽出できる要因を遺伝要因と環境要因(ペア飼育の相手)に区分けして、DNAメチル化のパターンを抽出する予定である。
3: やや遅れている
同腹でのマウスの組み合わせを実施しているが、マウスの出産数や遺伝子型を揃えることが難しい場合があり、やや遅延していると判断した。
各ペア飼育のパターン内におけるケージ内観察・記録を続け、解析を継続する。また、各ペア内での有意差のある指標を見出し、社会性行動にどのように相関しているのかについても解析する。社会性行動テスト終了後のマウスの脳サンプルを用いて、予備解析を開始したので、各ペア飼育のパターンで、どのような特徴が見出されるかを検討する。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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10.1002/npr2.12258
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https://www.igakuken.or.jp/abuse/works_molecpsy/works2022.html#original