研究課題
基盤研究(C)
本研究は自閉症の社会性行動障害への行動療法のメカニズムを明らかにするために自閉症モデルマウスを用いて行動学的、分子生物学的な手法で解析を行う。このため、ペア飼育期間中の二者相互作用を探索的に検討し、自閉症との関連が報告されてきた脳部位を対象に、遺伝子の後天的修飾であるDNAメチル化と遺伝子発現を解析する。ペア飼育中において、どのような二者相互作用が社会性行動の寛解に影響するかを同定し、脳部位別にDNAメチル化および遺伝子発現解析を行い、社会性行動の成績との相関を解析する。本研究は自閉症の行動療法の作用機序という観点から解析を行うことで、自閉症病態の解明を促進することに貢献する。
2022年度は、ペア飼育中のマウスについてケージ内において、どのような二者相互作用が社会性行動に影響するのかを検討するために、幼若期から開始したペア飼育中のケージ内行動を成熟期に至るまで観察、記録、解析した。具体的には、3週齢で離乳・雌雄分けし、同腹のマウスを3パターン(パターン1: 野生型-野生型、パターン2: Tsc1+/--Tsc1+/-、パターン3: 野生型-Tsc1+/-)で飼育した。パターン2: Tsc1+/--Tsc1+/-(自閉症モデルマウスのみでの飼育)での飼育では、執拗なほどのgroomingやsniffingをすることが見られ、ケンカに発展することが観察された。パターン1: 野生型-野生型やパターン3: 野生型-Tsc1+/-ではケンカに発展するほどのgroomingやsniffingは見られなかった。床敷きを運ぶ、巣を整えるなどの行動は、パターン3: 野生型-Tsc1+/-のケージ内において、協同して作業を行うことが観察された。これらのケージ内行動の特徴と社会性行動成績がどのように相関するかを現在解析中であり、今後匹数を追加して検討を進める。
3: やや遅れている
マウスの交配、出産・発育状況が計画通りに進まず研究の進展がやや遅れた。
マウスの発育発達に沿いながら、ペア飼育における各マウスの観察・記録を続け、匹数を追加していく。特に、各ペア内での役割や幼若期から成熟期にかけての特徴的な行動(毛づくろいなど)が、社会性行動にどのように相関しているのかを詳細に解析する。また、社会性行動テスト終了後のマウスから随時、脳サンプルを回収していく。得られた脳サンプルからDNA、RNAを抽出し、メチル化解析や遺伝子解析を行うまで、凍結保存を行う。
すべて 2022 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
J Reprod Immunol.
巻: 154 ページ: 103752-103752
10.1016/j.jri.2022.103752
Neuropsychopharmacology Reports
巻: 42 号: 3 ページ: 343-346
10.1002/npr2.12258
https://www.igakuken.or.jp/abuse/works_molecpsy/works2022.html#original