研究課題/領域番号 |
22K07350
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大竹 洋輔 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任助教(常勤) (40405915)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | パーキンソン病 / α-シヌクレイン / 免疫細胞 / T細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
パーキンソン病は、中脳黒質ドパミン神経の脱落に起因する進行性運動障害を主徴とする神経変性疾患である。超高齢社会に突入し、有病率の上昇が確実視される中、疾患修飾療法開発のための病態解明が喫緊の課題である。α-シヌクレインの脳内異常蓄積が原因とされるが、近年、このα-シヌクレインに対する自己抗体の存在や、細胞障害性免疫細胞の中枢への浸潤など、神経-免疫クロストークによる病態形成が強く示唆されている。最近、新規のパーキンソン病モデルマウスを確立し解析する中で、神経保護的に作用する免疫細胞の存在を見出している。そこで、浸潤性の神経保護型免疫細胞を解析し、パーキンソン病病態との関連性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
パーキンソン病病態時に免疫細胞の浸潤が確認されていたものの、その役割は不明であった。研究代表者はパーキンソン病の原因タンパク質であるαシヌクレインのフィブリル用構造体とαシヌクレイン発現ウイルスを同時にマウスの脳内に注入することで臨床病態を示す新規パーキンソン病モデルマウスを確立している。このマウスを用いて解析したところ、浸潤性の免疫細胞の存在を確認することができた。新規パーキンソン病モデルマウスで見られる浸潤性免疫細胞にはT細胞が含まれており、T細胞を特異的に欠損させた遺伝子改変マウスを用いてパーキンソン病病態の表現型を確認したところ、ドパミン神経の脱落が抑制され、αシヌクレインの異常リン酸化も抑えられた。パーキンソン病モデルを作成し6週間後まで運動機能を見るためにグリッドテストおよびポールテストなどの運動機能テストを実施したが、この期間では運動機能の障害は認められなかった。さらにT細胞を欠損させたマウスでは、ミクログリアの反応性が著しく低下していることが示された。これはパーキンソン病において見られる神経炎症が抑制されていることを示唆している。 一方で、T細胞の数種類のサブセットに対する特異抗体を用いて一過性に抑制したところ、ある種のサブセットを抑制したときにパーキンソン病病態が増悪したことから、T細胞であってもサブセットによって神経細胞障害性、および神経保護型免疫細胞があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画ではpan-T細胞の遺伝子改変マウスを用いたプレリミナリーな実験から、パーキンソン病病態が悪化した表現型が見られたことから神経保護型免疫細胞が優位に存在するものと考えられた。しかし実際はマウスの個体差、あるいはパーキンソン病病態の増悪度、時間的なステージによって、パーキンソン病病態が緩解したり、増悪したりすることがわかった。このことから、病態形成時および進行時に関与するサブセットあるいは役割が異なる神経保護型および神経障害型免疫細胞の存在がオーバーラップして存在することがわかった。当初表現型が安定しなかったため免疫細胞の同定に時間を費やしたが、時空間的にオーバーラップすることがわかってきたので、そこに留意し、引き続き、計画通りに研究を進めることとする。
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今後の研究の推進方策 |
パーキンソン病病態を緩解あるいは増悪する浸潤性免疫細胞に関して、特異抗体を用いてノックダウンした時のパーキンソン病病態の詳細な特徴づけを引き続き行うとともに、浸潤性免疫細胞と神経細胞あるいはグリア細胞との間にどのようなクロストークが存在するのかを共培養系を用いながらそれぞれの細胞の表現型をよく観察しながら検討していく。また、αシヌクレイン添加時の表現型も検討しながら、αシヌクレインを中心とした免疫細胞ーグリア細胞ー神経細胞間のクロストークを明らかにしていく。
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