研究課題/領域番号 |
22K07354
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
瀬野 晋一郎 杏林大学, 保健学部, 講師 (70439199)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | かゆみ / 電気刺激 / 電流知覚閾値 / かゆみ知覚閾値 / VAS / 痛み |
研究開始時の研究の概要 |
かゆみは生命の危機に直結しないが、慢性的な症状で苦悩する患者は多く、QOLの低下も危惧される。現在、かゆみに対する評価は問診票、VASなど主観的手法が中心で、客観的評価は存在しない。申請者は痛みの定量化に従事した経験を活かし、電気刺激を用いてかゆみの新たな評価法と測定システムの開発に取り組む。 本研究ではかゆみの定量化に最適な電気的刺激法を確立すると同時に、電気刺激によるかゆみ知覚時の生体反応(発熱、発赤の有無、血流変化など)の有無や掻破行動の解析をそれぞれ分析する。種々の基礎実験を健常な被験者に対して行い、得られたデータを基に、実用可能なかゆみ定量評価と測定システムを具現化する。
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研究実績の概要 |
慢性的なかゆみは、睡眠、仕事、就学などQOLを著しく低下させ、社会的に大きな損失を及ぼす可能性がある。そのため、かゆみの症状や特徴を正確に診断・評価することは極めて重要である。しかし、既存の評価法は問診や視覚的アナログスケール(Visual Analog Scale、 VAS)など主観に委ねられるものが多く、客観的評価は存在しない。そこで、本研究の目的はかゆみを客観的かつ定量的に提示可能な評価法と測定システムを確立することである。 測定システムの開発に向けて、今年度は最適な電気刺激パターンの選別について検討した。神経系のうち、一次感覚ニューロン(Aβ線維、Aδ線維、C線維)は正弦波電流刺激に発火特性を有しており、本研究は過去に開発した電気刺激装置を用いて13種類の正弦波刺激(周波数帯域1~4000 Hz)で検証した。被験者15名の左手首内側へ電気刺激を経皮的に加え、電気刺激に対する知覚感度(Current Perception Threshold: CPT)を測定したところ、CPTは周波数の増大と共に上昇する傾向が観察され、従来の研究報告と一致した。 次に、同部位へCPTの1.2倍量、1.4倍量、1.6倍量でそれぞれ刺激を行い、このときに誘発される感覚(かゆみ、痛み)の大きさをVASで評価した。実験の結果、2~100 Hzの周波数帯域でかゆみは知覚されやすく、これはかゆみの情報伝達に関わる無髄C線維が5Hz付近の低周波刺激で興奮しやすい点と合致している。一方、5Hz以下の刺激では負荷増大に伴い痛みも大きくなり、C線維がかゆみだけでなく、痛みの情報伝達にも関与するため、その結果が反映されたと考えられる。以上より、かゆみ誘発には20~100Hz付近の周波数帯域が最適な刺激となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は電気刺激の応用的手法によりかゆみ感覚を客観的かつ定量的に評価することを目的とする。今年度は被験者15名を対象に13種類の正弦波刺激(周波数帯域1~4000 Hz)を用いて生体計測を行い、かゆみの誘発は20~100Hz付近の周波数帯域が最も良好な刺激条件であることを確認した。このような結果より、評価システムの主要部にあたる電気刺激の特性を概ね把握できたと考えている。 一方、被験者が少なかったこともあり、性別、年齢、体脂肪率など生体特性に依存した電気刺激の知覚感度(CPT)に関する詳細な分析はできなかった。また、本研究で使用した電気刺激装置は仕様の関係上、かゆみの知覚に要する電流値(かゆみ知覚閾値:Itch Perception Threshold, IPT)と痛みの知覚に要する電流値(疼痛知覚閾値:Pain Perception Threshold, PPT)をそれぞれ計測できなかった。しかし、実験結果に基づいて考察すると、大多数の健常人においてIPTはCPTの1.6倍量より小さいこと、PPTはCPTの1.6倍量あるいはそれ以上となることをそれぞれ予測できる。次年度以降は、IPTとPPTを計測可能な測定システムの改良に取り組み、CPTに対するIPTおよびPPTの関係性を検討したい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は(1)評価システムの改良、(2)かゆみ指標と主観的評価の分析、(3)かゆみに対する反射的行動の解析に取り組むことを計画している。 本年度の実験結果より、かゆみは20~100 Hzの正弦波刺激に対して誘発されやすい可能性が示唆されたため、次年度はこれらの刺激条件を利用して3つの電流値(CPT、IPT、PPT)を計測可能なシステムの改良に取り組むことを計画している。 評価システムの改良後、2つの測定値(CPTとIPT)を用いたかゆみの定量的評価指標を考案する。電気刺激に対する知覚感度は生体特性(性別、年齢、体脂肪率など)や刺激条件(波形、周波数、電極サイズなど)で変化するため、考案する評価法ではこれらの影響を無視できるようにCPTを基準とした指標の提案を計画している。また、本法のかゆみ指標と従来法の主観的評価の間に良好な関係性が認められるか分析する。 かゆみを知覚すると、引っ掻く、叩くといった掻破行動により不快な症状を軽減や緩和させ、一時的に欲求を満たす。この反射的動作はかゆみに対する主観的要素を反映すると考えており、次年度は指先に加速度などのセンサモジュールを装着し、掻痒時の動作解析を検討している。
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