研究課題/領域番号 |
22K07356
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大友 麻子 東海大学, 医学部, 講師 (50535226)
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研究分担者 |
秦野 伸二 東海大学, 医学部, 教授 (60281375)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / ALS / 上位運動ニューロン / 下位運動ニューロン / 骨格筋 / iPS細胞 / 細胞モデル |
研究開始時の研究の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis, ALS)は、大脳皮質運動野の上位運動ニューロン(UMNs)と脳神経及び脊髄前角の下位運動ニューロン(LMNs)の選択的変性と脱落を特徴とする進行性の神経変性疾患である。本研究では、これまでほとんど研究対象とされていない UMNsと LMNs の形成するシナプス機能や、LMNsと MSCs の結合によって形成される神経筋結合部の機能に着目し、健常者とALS細胞モデルを比較、解析することによって、ALS疾患における UMNs 及び LMNs の細胞種特異的な疾患感受性を生みだす分子メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis, ALS)は、大脳皮質運動野の上位運動ニューロン(UMNs)と脳神経及び脊髄前角の下位運動ニューロン(LMNs)の選択的変性と脱落を特徴とする進行性の神経変性疾患である。本研究では、ALS疾患特異的障害部位である、UMNsとLMNs、及びLMNsと骨格筋(MSCs)の機能的な結合、さらにはUMNsとLMNs及び MSCs の結合を有する新たなALS細胞モデルを構築することを目的とする。本年度は、細胞材料の作製を進めた。ALS疾患モデル細胞として、上位運動ニューロン変性が優位なALS2型(ALS2変異)と、下位運動ニューロンの変性が優位であるALS6型(FUS変異)に着目した。健常者由来の人工多能性幹細胞(iPSCs)を用いて、ALS2ノックアウトiPS cell lineを作製した。同時に、同一バックグラウンドを持つiPSCsにFUS変異を持つiPSCsを入手した。それらiPSCsを用いて、LMNsの運命決定遺伝子をテトラサイクリン依存的に発現する遺伝子カセットを導入し、安定的にそれらを発現する細胞をプールとして確保した。健常者、ALS2型、FUS型のiPSCsを下位運動ニューロンへと分化誘導後、細胞生存率について解析を行った結果、分化誘導後2-3週間の時点においてもFUS細胞モデルにおいて顕著に細胞生存率が低下していた。一方で、ALS2細胞モデルでは、細胞生存率は維持されていた。現在、UMNsを含む興奮性神経細胞及び骨格筋についてもそれぞれの分化に関わる転写因子の導入を行い、細胞の特異性や性質を精査している。これらが終了後、共培養を開始し、細胞同士の機能的結合を有するALS細胞モデルの構築を行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、実験計画に従って、細胞材料の作製を進めた。実験計画当初は、オプトジェネティクスを用いて、光刺激によって神経細胞を刺激し、細胞同士の結合及びシナプス機能評価を行う計画であったが、近年、Caged-Glutamateなどのケージド化合物の使用が可能となったため、実験計画を精査し、ChR2を発現するクローン株の取得は行なわなかった。また、実験に用いる細胞種の品質を維持し、細胞数を確保するため、iPSCsからそれぞれの細胞種への分化誘導方法を工夫した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、上位運動ニューロンと下位運動ニューロン及び下位運動ニューロンと骨格筋共培養によって生理学的結合を有するALS共培養モデルを作製して神経機能に着目した表現型を解析し、ALS疾患に特徴的な表現型が再現されるのかを検証する。疾患表現型の再現を確認後、健常者との比較を遺伝子発現プロファイルやタンパク質動態に着目して行い、UMNs及びLMNsの疾患感受性を生み出すメカニズムを解明する。2022年度までに、健常者、UMNs優位型ALS(ALS2)及びLMNs優位型ALS(ALS6)iPSCsよりを分化誘導可能なiPSC細胞株を取得した。本年度は、UMNsを含む興奮性神経細胞及び骨格筋についてもそれぞれの分化に関わる転写因子の導入を行い、細胞の特異性や性質を精査している。これらが終了後、共培養実験を開始し、細胞同士の機能的結合を有するALS細胞モデルの構築を行う計画である。2023年度は、共培養開始後、2-3週間後に免疫染色やqPCRによって、シナプスマーカーの発現やシナプス形態の定量化を行う。シナプス伝達は、Ca2+ imageing を行いて評価する。同時に、MEA(Microelectrode arrays, 微小電極アレイ)を用いた電気生理学的解析による生理的結合評価評価を行う。それらの解析を通じ、ALS特異的な疾患表現型の再現を確認後、健常者由来のサンプルと、UMNs優位型ALS(ALS2)及びLMNs優位型ALS(ALS6)のサンプルのそれぞれの細胞を用いて網羅的遺伝子発現解析をmRNA-seq解析を行うことによって、細胞表現型の生じる背景にあるメカニズムを明らかにする。
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