研究課題/領域番号 |
22K07381
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
笹倉 寛之 愛知医科大学, 医学部, 特別研究助教 (50751616)
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研究分担者 |
池野 正史 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (80298546)
武内 恒成 愛知医科大学, 医学部, 教授 (90206946)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 脊髄損傷 / シナプス / 人為的シナプス架橋分子 / マウスモデル / 再生 / 人工的シナプス架橋 / 行動回復 |
研究開始時の研究の概要 |
損傷から時間が経過した慢性期脊髄損傷は、その回復が困難となる。しかしながら、罹患者の多くは慢性期に属し、慢性期脊髄損傷の治癒は社会的要請が大きな研究テーマである。本研究では、人為的シナプス架橋分子CPTX(Suzuki, Sasakura, Ikeno, Takeuchi, Yuzaki et., al. Science, 2020, Aug 28)を慢性期脊髄損傷モデルマウスに投与し、その回復を試みる。具体的に、CPTXを長期的に発現する不死化細胞を樹立し、マウス慢性期モデルに移植する。CPTXの長期発現により今まで回復が困難であった中枢神経病態の治癒法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究事業は、人為的シナプス架橋分子CPTXによる失われた中枢神経機能回復を目指したものである。人為的シナプス架橋分子CPTXは慶應義塾大学医学部の鈴木、柚﨑らによって開発された強力なシナプス形成能を持つ人工タンパク質である(Suzuki, Sasakura., al. Science, 2020, Aug 28)。本事業責任者らは、CPTX投与により急性期の脊髄損傷を回復することを見出した。これはシナプス構造を直接的に制御することにより損傷で失われた脊髄機能を回復させる画期的な研究結果であった。この成果を踏まえ、回復が困難とされている慢性期脊髄損傷治癒の研究に着手した。 マウス脊髄損傷挫滅モデルにおいて、損傷後6週間経過した個体は以降の運動回復が全く認められなかった。つまり運動機能の回復度合いがプラトーに達し、本研究室の実験条件で損傷後6週間経過したマウス個体を慢性期脊髄損傷モデルとみなせることを確認した。損傷から長い時間が経過しているため、慢性期実験において損傷脊髄と他組織との癒着が実験技術上大きな障害となる。癒着によりCPTXの再投与や細胞移植の際、脊髄を同定できない、傷つけてしまう場合が多い。それを解消するため、損傷時に癒着防止シートおよび人工硬膜を用い検討した。これらの処置により損傷脊髄の同定・アクセスが容易になることを見出した。また損傷脊髄を非侵襲的に再現よく同定・アクセスし薬剤を注入する技法を開発した。これらの技術的な改善をもとにCPTXタンパク質を注入したところ慢性期からの運動回復が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究事業一年目の状況として順調に進行していると考えられる。理由として以下の二点が挙げられる。(1)マウスの慢性期脊髄損傷挫滅モデルを作成し、損傷部位に安定的にCPTXタンパクおよびCPTXを発現する細胞株を供給できる実験系を確立した。霊長類、ラットモデルの脊髄損傷に比べマウスモデルの脊髄は小さく、慢性期で再手術を行う際には周囲の組織との癒着が激しい上に個体間での差も大きく、困難が伴った。大きなダメージを与えることなく正確に損傷部位を露出させ、薬液を注入する技術を開発することができた。(2)マウスの慢性期脊髄損傷挫滅モデルにCPTXを注入することにより、運動を上向きに回復させることに成功した。慢性期の脊髄損傷からの回復は従来困難とされていたので、この結果は大変インパクトある結果だと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、CPTXによる慢性期脊髄損傷からの回復条件の最適化を測る。具体的にはCPTXの投与濃度・量の検討、さらには複数回投与が可能かどうか検討する。CPTXにより回復した個体に関して、運動回復を従来のBMS(Basso Mouse Scale)スコアによる評価(Basso et al., J. Neurotrauma, 2006)に加え、parallel rod による脚の落下頻度の定量化、当研究室で開発中の暗黒条件下の歩行定量システムを用いた定量化を行う。 研究分担者の池野と協力し、歯髄細胞(SHED細胞)をマウスから単離し、SHED細胞にhTERT、HSVtk遺伝さらにCPTX遺伝子を導入し、CPTXを永続的に発現する不死化した細胞の樹立を試みる。細胞の樹立に引き続き脊髄損傷部への移植を行いたい。
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