研究課題/領域番号 |
22K07397
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
瀧川 洋史 鳥取大学, 医学部, 講師 (30511373)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 神経学 / 老年医学 / 神経変性疾患 / 分子生物学 / 進行性核上性麻痺 / 大脳皮質基底核変性症 / パーキンソン症候群 / バイオマーカー / Chromogranin B |
研究開始時の研究の概要 |
神経変性疾患においては,これまでの対症療法やリハビリテーションによる治療から抗タウ抗体などによる疾患修飾療法が開発され,治験が進みつつある.本研究によってPSにおけるバイオマーカーを確立することは,早期からの確実な臨床診断,臨床評価の指標といった臨床応用が期待される.また,バイオマーカー研究をきっかけにPSの病態を解き明かすブレイクスルーをもたらすことが期待され,脳神経科学だけではなく,老化やガンなどの領域にも応用可能な知見をもたらし,本邦の重大な社会問題でもある高齢化社会における国民の健康促進に寄与することが期待できる.
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研究実績の概要 |
パーキンソン症候群(PS)は,原因不明の進行性の神経変性疾患であり,未だに有効な治療法はない.PSでは多彩な臨床像のために臨床診断が困難な場合が少なくない.脳脊髄液を用いた網羅的な質量分析,血清中のmicroRNAを用いたアレイ解析等によってPSのひとつである進行性核上性麻痺(PSP)に特異的なバイオマーカー候補としてChromogranin B(CHGB),アミロイド前駆タンパク(APP)を含めた複数の候補分子,疾患特異的microRNA候補を得てきた.候補分子については,細胞骨格,翻訳後修飾などのpathwayとの関連が明らかとなった.本研究では,PSの早期診断,病態解明,治療戦略に資するバイオマーカーを確立することを目的としている. PSPに特異的な変化を示すCHGBのバリアントであるbCHGB_6255について,神経系培養細胞より回収したライセートからの免疫沈降法による精製では,微量のためにアミノ酸配列を解析するのに十分量を得ることは困難であった.そこでタグを付したCHGBを神経系培養細胞に強制発現させる系の確立を試みたが,発現効率が極めて悪く,実験条件の検討を行った. APPのN末側,C末側に対する抗体を用いたWestern blotting法によって得られたPSPに特異的な変化を示す2種類のバリアントについて多数例での解析を進めた. 一方,PSP特異的microRNAについては,血清中のmicroRNAを用いたqPCRによる多数例での検証研究を行い,1種類のmicroRNAにおいてPSP群と対照群において有意差を確認した.中枢神経におけるmicriRNAの発現を解析するために剖検脳から抽出したmicroRNAに対するqPCR,あるいは,剖検脳標本に対するin situ hybridization,免疫組織化学染色による二重染色による解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
CHGBについては,バリアントのひとつであるbCHGB_6255がPSPにおいて特異的な変化を示しており,バイオマーカーとしての検証研究,あるいは,神経細胞内での機能解析を進めるためにbCHGB_6255のアミノ酸配列の同定が重要である.神経系培養細胞より抽出したライセートを用いた免疫沈降法での濃縮・精製を試みたが,bCHGB_6255が極めて微量であるために質量分析等の解析に対応する十分量の精製が困難であった.そこで神経系培養細胞にプラスミド発現ベクターを用いてタグを付したCHGBを強制発現させた系での解析を試みた.しかしながらトランスフェクション効率が極めて低く,試薬やDNA量などの条件設定を検討するために進捗が遅れた. また,microRNAに関する検証では,PSP群と対照群において末梢血中での有意差が確認されたが,中枢神経系での発現を確認するために剖検脳から抽出したmicroRNAについてqPCRによる解析を行ってきたが,microRNAの検出が安定しないために進捗が遅れていた. また,Covid-19の影響のために試薬が入手し難い状況であることも影響した.
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今後の研究の推進方策 |
タグを付したCHGBタンパクを神経系培養細胞において強制発現し,細胞ライセートを回収し,免疫沈降法などによる精製・濃縮を進め,アミノ酸の同定を行う.また,PSPでは神経細胞内での異常リン酸化タウの凝集体形成が病態に関与していると推測されている.CHGBを強制発現させた神経系細胞内でのタウタンパクの変化について抗タウ抗体によるWestern blotting,免疫染色等による解析を進める. APPのN末側,C末側に対する抗体を用いたWestern blotting法によって得られたPSPに特異的な変化を示す2種類のバリアントについて多数例での解析を継続する. 一方,microRNAに関しては剖検脳から抽出したqPCRによる解析を継続する.PSPの神経変性においてタウタンパクの凝集体形成が特徴的とされているためmicroRNAの局在,あるいは,タウタンパクとの関連をin situ hybridization,免疫組織化学染色による二重染色にて解析する. また,質粒分析で疾患特異的な変化を示した他のバイオマーカー候補については,ELISA法などによって検証実験を進める.
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