研究課題/領域番号 |
22K07405
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
鈴木 幸一 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (20206478)
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研究分担者 |
吉原 彩 東邦大学, 医学部, 講師 (10439995)
山中 大介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (10553266)
三上 万理子 帝京大学, 医療技術学部, 研究員 (20840276)
藤原 葉子 帝京大学, 医療技術学部, 研究員 (50392494)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 甲状腺 / サイログロブリン / 細胞内シグナル伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
甲状腺濾胞内に蓄積するサイログロブリン(Tg)は、TSHの作用に拮抗して甲状腺機能遺伝子の発現をダイナミックに制御する強力なnegative-feedback調節因子であるが、その作用機序は不明のままである。しかし、あらゆる生理作用の破綻は何らかの病的状態につながることから、甲状腺細胞内におけるTg作用を担う分子の異常は、何らかの甲状腺機能異常症につながると考えられる。本研究では、Tgによる甲状腺濾胞機能調節機構の全貌とその破綻による病態を明らかにする目的で検討を行う。
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研究実績の概要 |
甲状腺機能は下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって厳密に制御されると一義的に理解されてきた。しかし、我々は甲状腺濾胞内に貯蔵される甲状腺ホルモン前駆体であるサイログロブリン(Tg)が、TSHによって誘導される甲状腺機能遺伝子を転写レベルで制御する強力な生理活性物質であることを明らかにしてきた。これまでの検討で、TgはTSH受容体下流のPKA経路、MAPK経路、PI3K/Akt経路などに関わるタンパク質のリン酸化を誘導することを明らかにしたが、それらを阻害してもTgの作用を打ち消すことはできなかった。したがって、Tgの作用はこれらのシグナルに介在するのではなく、それとは全く別の新たなシグナル伝達経路を利用している可能性が考えられた。 先ず、リン酸化プロテオミクスによる網羅的な解析を行い、Tgシグナルに関連すると考えられる候補遺伝子を複数得た。これらに対する特異的阻害剤やsiRNAを用いて、Tgによる遺伝子発現抑制効果が影響を受けるか検討したが、いずれも単独ではTgの作用を打ち消すことができなかった。したがって、Tgがタンパク質のリン酸化以外のシグナル伝達機構を持つ可能性も考慮するために、約400種類の阻害剤を含むライブラリーを用いてTgシグナルの全体像を明らかにするための検討を行った。具体的には、96 well plateに培養したラット甲状腺FRTL-5細胞の培養液に、濾胞内濃度のTgと阻害剤ライブラリーに含まれる各阻害剤を添加する。24時間経過後にRNAを抽出し、real-time PCRによって甲状腺特異的遺伝子の発現解析が完了した。現在、Tgの作用がキャンセルされた阻害剤の作用点に関わる遺伝子のパスウェイ解析を行い、Tgシグナルの全体像を明らかにしている最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既にリン酸化プロテオミクス解析を完了し、阻害剤ライブラリーのスクリーニングに着手し、その実験も完了している。現在データのパスウェイ解析中であるが、それによって得られた候補系路のvalidationを行うことにより、Tgが利用する細胞内シグナル伝達経路が解明されることが期待出来る。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に変更はなく、次年度は前年度の検討によって得られたTgシグナルに関連する阻害剤の作用点の遺伝子に対して、CRISPR-Cas9システムやウイルスベクターを利用したゲノム編集法によって抑制、または亢進状態に陥らせたstableなFRTL-5細胞クローンを作製し、甲状腺機能遺伝子の発現や細胞内局在を野生型と比較解析する。具体的には、培養液に濾胞内濃度のTgを上記のクローン細胞に添加し、総タンパク質を抽出する。その後、Tgシグナル遺伝子の欠損型、過剰型がその下流のシグナルに影響を受けるか特異的リン酸化抗体等を用いて、Western blottingによって検証する。細胞内局在の検討に関しては免疫細胞蛍光染色を行い、共焦点レーザー走査型顕微鏡で甲状腺特異的遺伝子の発現調節に関わる転写因子(PAX-8, TTF-1, TTF-2など)の細胞内局在が変化するか観察する。二重チャンバー細胞培養システムを用いて培養し、放射性ヨード輸送能や甲状腺ホルモンの分泌量等を測定し、Tgシグナル異常状態における甲状腺機能に与える影響を解析する。また、TgがTSHと拮抗する作用機序を明らかにするため、培養液にTSHおよびTSHシグナルの促進剤であるforskolinやdbcAMPをTgと同時に添加して上記と同様な解析を行い、TgシグナルとTSHシグナルとの相互作用を明らかにしてTgの作用機序を解明する。
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