研究課題/領域番号 |
22K07411
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
岩下 香里 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究員 (90938391)
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研究分担者 |
浅原 哲子 (佐藤哲子) 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究部長 (80373512)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 生活習慣病 / 認知症 / 糖尿病 / 単球・ミクログリア機能 / M1/M2極性 / TREM2 / 糖尿病治療薬 / 予防法 / ミクログリア機能 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、糖尿病・肥満に伴う認知症の早期予知指標・規定因子として、単球・ミクログリア機能(M1/M2比・TREM2)に焦点を当て、糖尿病・肥満症コホートにて、糖尿病・肥満における認知機能低下の実態・要因を世界に先駆け検討する。さらに、モデルマウスを用い糖尿病・肥満合併認知症におけるTREM2の病態生理学的意義を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、生活習慣病に伴う認知症について脳内炎症の鍵となる単球・ミクログリア機能(M1/M2極性・TREM2)に着目し、TREM2欠損マウスやミクログリアを用い、認知症発症機序や生活習慣病薬含めた効果的な治療法を解明することである。本年度、まず、肥満・糖尿病マウスの脳と脂肪組織ではTREM2の発現亢進を認めた。また、申請者らが作製したTREM2欠損マウスを用いて16週間の高脂肪食負荷を行い、TREM2欠損マウスは対照に比し、糖負荷試験における空腹時血糖とインスリンの上昇や骨格筋量低下を認め、耐糖能異常におけるTREM2の重要性が示唆された。今後、採取した血清・単球・脂肪組織を用い、糖尿病・肥満での脳内炎症・認知症発症における単球・ミクログリア機能とTREM2の病態意義を解明する。 マウスミクログリア細胞株BV-2において、新規糖尿病薬・イメグリミンや我々が既に認知機能改善作用を認めた植物由来フラボノイド・タキシフォリン(Proc Natl Acad Sci U S A 2019)の作用を検討し、イメグリミンやタキシフォリンによる高グルコース(HG)誘導性の炎症反応(活性酸素種、炎症性サイトカイン増加やインフラソームの活性化)の改善作用とその作用機序を認め、今後の糖尿病に伴う脳内炎症・認知機能改善に対する治療法として有用である可能性を示した(2023年アディポサイエンスシンポジウム発表、現在論文作成中)。また、認知症・MCIコホート2000例を構築し、血中sTREM2と新規アッセイ系による血中Aβ・tauの同時測定により、糖尿病群ではミクログリア機能障害によるsTREM2低下が起点になることを示した(Diabetes Res Clin Pract 2022)。以上、糖尿病・肥満合併認知症における単球・ミクログリア機能を介した脳内炎症・認知症発症機序を明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎研究では、単球・ミクログリア機能(M1/M2極性・TREM2異常)を介した生活習慣病に伴う認知症の進展機序の解明に向け、TREM2欠損マウスの16週間の高脂肪食負荷試験を完了し、耐糖能異常や筋委縮など有意な成績を見出しており、今後、各マウスの血清・単球・脂肪組織を用い、メタボローム解析・microRNAアレイを含めた肥満症・糖尿病における脳内炎症・認知機能低下・認知症の発症機序メカニズムを単球・ミクログリアに発現するTREM2に焦点をあてて検討していくことができる。 また、臨床研究においては、認知症・MCIコホート2000例)を構築し、世界初で血中sTREM2と血中Aβ・tauの同時測定・比較検討し、糖尿病性認知症ではミクログリア機能障害によるsTREM2低下が起点となる可能性を報告し、糖尿病性認知症の特徴や予知バイオマーカー評価系(sTREM2低下・Aβ不変・tau上昇)を提唱することができた(Diabetes Res Clin Pract 2022)。 さらに、本年度、新規にNHOコグニティブフレイルコホート(J-DOS3)(2022年採択)やコグニティブフレイル健診コホートの構築を開始し、データベース構築と血清・血漿取得を行っており、肥満症・糖尿病の有無別に解析を行っており、計画通り、順調に研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られたTREM2欠損マウスや各糖尿病・認知症モデルマウスの血清・単球・脂肪組織を用いて、各群別に体重・糖脂質代謝・全身性炎症状態・単球/ミクログリア機能(M1/M2・TREM2)のみならず、脳や脂肪組織における網羅的遺伝子発現解析、メタボローム解析やmicroRNAアレイも施行し、肥満や糖尿病など生活習慣病における認知機能低下・認知症進展機序と単球/ミクログリア機能(M1/M2・TREM2)の病態意義を明らかにしていく。 既に、本年度までにNHO肥満症・糖尿病コホート(認知機能低下:JDOS2、コグニティブフレイル:JDOS3)、コグニティブフレイル健診コホート、認知症・MCIコホートを構築しており、各々のデータベースを用い、取得した血液検体を活用して、肥満度, 筋肉量, 糖脂質代謝, 炎症・動脈硬化指標, 単球機能(M1/M2・TREM2発現), 血中sTREM2濃度, 新規トリガー分子血中濃度, 認知症指標[認知機能検査・脳MRI/PET、血中Aβ・tau]について横断・縦断解析し、肥満症・糖尿病に特異的なMCI/認知症の病態、低侵襲な至適血液バイオマーカーや糖代謝を統合した肥満症・糖尿症性認知症評価系の確立を目指す。 また投薬状況なども検討し、効果的な生活習慣病治療薬も解析する。 さらに、ミクログリアを用いた細胞実験にて、糖尿病治療薬など各種生活習慣病薬やタキシフォリン含めたフラボノイドによる脳内炎症・アポトーシスやアミロイドβクリアランス等への影響を検討し、その作用機序を明らかにする。 以上、生活習慣病に伴う脳内炎症・認知症の発症機序と単球・ミクログリア機能・TREM2の病態生理学的意義を明らかにし、さらに簡便な血液予知バイオマーカーの同定や生活習慣病治療薬・フラボノイドの治療効果の解明を行い、急増する生活習慣病に伴う認知症の効果的な予防・治療戦略の開発を目指す。
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