研究課題/領域番号 |
22K07429
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
野上 達也 東海大学, 医学部, 准教授 (80587973)
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研究分担者 |
新井 信 東海大学, 医学部, 教授 (30222722)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 慢性腎臓病 / オウギ / カルノシン / シスプラチン / 漢方 / マウス |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、最終的には比較的安価で安全なオウギによる慢性腎臓病の進行改善を客観的に検討する診療システムを立ち上げたい。そのために、まず、慢性腎臓病の進行抑制に結びつくオウギ薬効の分子メカニズムを解明し、その標的分子を同定することを目的に本研究を実施する。本研究では、慢性腎臓病の進行に深く関連する急性腎障害に対してオウギ薬効が顕著に現れる老齢マウスを用い、候補となる標的分子がオウギ投与でどう変化するかを解析する。また、そのようにして見いだした標的分子が実際にヒトにおいてオウギの投与前後で変動するかを確認し、当該分子がヒトにおける慢性腎臓治療の指標となりうるかを検討する。
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研究実績の概要 |
我々は今年度、オウギの薬効の標的分子の候補として血清カルノシン(β-アラニル-L-ヒスチジン)を見出した。カルノシンは、ヒトの様々な組織に存在する内因性合成ジペプチドであり、腎臓の様々な代謝経路に関与している。カルノシンは、炎症性サイトカインのレベルを低下作用やメサンギウム細胞の増殖を低下作用など幅広い腎保護作用を有している。 通常、実験に汎用される若齢マウス(6~12週齢)では、血清カルノシン濃度は一定に維持されていた。この若齢マウスにオウギを経口投与すると、24時間後の血清カルノシン濃度は有意に上昇した。一方、生後1年を超えた老齢マウスでは、血清カルノシン濃度は個体により様々な値を示していたが、オウギの経口投与により血清カルノシン濃度は一定となり、その値はオウギを投与した若齢マウスの値と同程度となった。以上の結果から、オウギ投与により血清カルノシン濃度の若齢マウスでの上昇と老齢マウスでの一定化が認められ、経口投与されたオウギの薬効判断について、客観的指標として使用できる可能性が考えられた。 さらに我々は、老齢マウスで認められた血清カルノシン濃度のばらつきについて組織化学的に検討したところ、既に老齢期マウス腎臓では自然発症的にAKIマーカーであるCD3が確認できた。さらに、老齢マウスを用いてAKIを発症させたところ(CDDP14 mg/kg投与)、事前にオウギを服用させると、腎尿細管上皮細胞および糸球体に組織学的損傷が有意に改善することも認められた。以上の知見から、老齢マウスでは一部にAKIを含めた腎臓疾患が発症しており、これに対応して血清カルノシンが増加したが、オウギ投与により腎臓の病態が改善し、血清カルノシン濃度が減少した可能性を考えた。 次年度はオウギがどのような機序で血清カルノシン濃度を変化させるかを検討し、ヒトにおいてもこれらの変化が認められるかを明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オウギの老齢AKIモデルマウスに対する効果の一端を説明する分子としてカルノシンがあることについて、実験を反復し確認した。この研究成果は60th European Renal Associationにて発表予定であり、標的分子を見出すという点では順調に進行している。 カルノシンのヒトでの動態についての研究は、現時点では十分な準備が進んでおらず、取り組みを開始できていないため、概ね予定通りの進捗状況であるものの、緊張感を持って研究を進行していく必要があると理解している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、オウギ末のCKD進展抑制作用を検討する臨床研究を実施しているが、その研究と関連付けて、ヒトの血清カルノシン濃度に対するオウギの影響を検討する研究の準備を進めている。研究計画書の作成、倫理委員会での倫理的側面の検討などを実施中であり、準備ができ次第、ヒトでのデータの集積を開始する予定である。 また、血清カルノシン以外のオウギの腎保護作用を説明できる標的分子の検討は引き続き継続する。
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