研究課題/領域番号 |
22K07474
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
木村 成志 大分大学, 医学部, 准教授 (30433048)
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研究分担者 |
花岡 拓哉 大分大学, 医学部, 医員 (40433057)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | アルツハイマー病 / Neurovascular unit / 神経炎症 / アミロイドPET / 血液・脳脊髄液バイオマーカー / 先端画像検 |
研究開始時の研究の概要 |
MCIからADに移行した症例を対象に先端画像検査,血液・脳脊髄液バイオマーカー測定を実施することでNVU障害,神経炎症が関与するAD病態進行機構を明らかにする.このため,AD発症例を対象として神経心理検査,血液・脳脊髄液サンプルを用いたNVU障害マーカー,炎症性サイトカインとAD病態バイオマーカーの測定,FDG-PET,3.0T-MRI等の画像検査を施行することでNVU障害マーカーおよび炎症性サイトカインと画像データ,AD病態バイオマーカーとの関連を解析する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,軽度認知障害からアルツハイマー病発症者を対象としてNVU障害および神経炎症とアルツハイマー病の病態進行機構の関連を明らかにすることである.2023年は,新たな症例蓄積のため200例の健常者および軽度認知障害に対してPiB-PET,FDG-PET,MRI等の先端画像検査,血液検査,認知機能検査を実施し,データベース作成を行った.これまでの軽度認知障害の症例と併せて経時的な認知機能評価を行っている.軽度認知障害からアルツハイマー病を発症した78例の保存血漿を用いてmultiplex immunoassay systemやELISAによる各種炎症性サイトカインおよびneurovascular unit(NVU)の破綻に関連する分子としてMMPs, TIMPを測定した.また,大脳白質病変を評価するための解析ソフトを導入し,深部白質と皮質下白質の体積を測定した.PiB-PETとFDG-PETは,各関心領域における集積量の平均値の対小脳比 (mean corticalstandardized uptake valueratio <SUVR>) を算出した.PiB-PET画像は,SUVR のカットオフ値を 1.4 として陽性/陰性を判定した.軽度認知障害からアルツハイマー病に移行した症例では,アミロイド陰性の健常者および MCI群と比較して炎症性サイトカインとNVU障害マーカー(MMPs,TIMPs)とが高値であった.アルツハイマー病発症者においても炎症性サイトカインやNVU障害マーカーが脳内アミロイド蓄積量と関連していた.しかし,脳糖代謝量,脳萎縮との関連はなかった.また,脳内Aβ蓄積量,脳糖代謝量,脳萎縮の経年的変化が軽微であったため,年間変化量との関連も認めなかった.研究結果から炎症やNVUの障害は,アルツハイマー病の早期段階に関与していることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
200例の健常者および軽度認知障害をデータベースに追加した.血液バイオマーカーの測定では,アルツハイマー病発症者の保存血清中の各種炎症性サイトカインおよびMMPs,TIMPsをmultiplex immunoassay systemやELISAを用いて測定した.さらに,島津製作所と共同でアルツハイマー病病態バイオマーカーとして血漿中の Aβ関連ペプチド(APP669-711,Aβ1-40 ,Aβ1-42)を免疫沈降とマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)を組み合わせた方法で測定した.画像解析は,3年間蓄積したデータからPiB-PETとFDG-PETのSUVRを算出した.また,頭部MRI画像は解析ソフトを用いて深部白質と皮質下白質の大脳白質病変の体積を算出した.軽度認知障害からアルツハイマー病に移行した症例では,アミロイド陰性の健常者および MCI群と比較して炎症性サイトカインとNVU障害マーカー(MMPs,TIMPs)とが高値であった.これまでにMCIにおけるNVU 障害マーカーは,脳内Aβ蓄積量や大脳白質病変の重症度と相関することを明らかにしてきた.今回の結果からアルツハイマー病発症者においても炎症性サイトカインやNVU障害マーカーが脳内アミロイド蓄積量と関連していた.しかし,脳糖代謝量,脳萎縮との関連はなかった.また,脳内Aβ蓄積量,脳糖代謝量,脳萎縮の経年的変化が軽微であったため,年間変化量との関連も認めなかった.この結果から炎症やNVUの障害は,アルツハイマー病の早期段階に関与していることが考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
これまで,虚血性大脳白質病変は,Fazekas 分類を用いて半定量的に評価していた.しかし,軽微な変化を検出するには定量的な評価が必要であった.そこで,解析ソフトを導入して条件設定を行って画像解析したが,2割の症例で脳表くも膜下が大脳白質病変に含まれて測定されていた.このため,解析条件の設定を再調整している.また,今回の結果から炎症性サイトカインやNVU障害マーカーは,健常者や軽度認知障害といったAD病態の初期段階において脳内Aβ蓄積に関与することが明らかとなった.私は,認知機能検査,3.0T-MRI,ア ミロイドPET,FDG-PET等の先端画像検査,問診および生体センサによる生活習慣データの収集および解析から科学的根拠のあるADの発症危険因子を探索する大規模コホート研究を行っている.この結果から,運動や睡眠などの生活習慣因子が,脳内Aβ蓄積,脳糖代謝量,認知機能と関連することを明らかにしている.今後は,そのような生活習慣や生活習慣因子が,全身性慢性炎症やNVU障害を引き起こし,脳内Aβ蓄積や慢性脳虚血を引き起こすかを明らかにする.研究成果を学会にて報告し,論文を作成する.
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