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抗CD38抗体による抗腫瘍効果の分子機構解明と新規併用療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K07488
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分52010:内科学一般関連
研究機関川崎医科大学

研究代表者

北中 明  川崎医科大学, 医学部, 教授 (70343308)

研究分担者 通山 薫  川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (80227561)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワードCD38 / daratumumab / 抗体療法 / シグナル伝達
研究開始時の研究の概要

多発性骨髄腫の治療薬として臨床応用された抗CD38抗体は、その高い有効性により標準治療を一変させた。われわれの研究からは、抗CD38抗体の抗腫瘍効果には抗体結合後に引き起こされる細胞内チロシンキナーゼの活性化が重要であり、シグナル伝達におけるFc受容体の関与が示唆されている。本研究では、抗CD38抗体の刺激後に活性化されるシグナル分子が抗CD38抗体の作用に及ぼす分子機構を明らかとし、その制御によって抗腫瘍効果を増強する手法の確立を図る。

研究実績の概要

われわれはマウス抗CD38抗体がさまざまな造血器腫瘍細胞に増殖抑制・アポトーシス誘導効果を示すことを発見し、CD38を標的分子とした抗体療法、免疫療法の検討を行ってきた。これまでに抗腫瘍効果を十分に発揮するためにはマウス抗CD38抗体のFc部分の存在が重要であり、抗体の結合後にFc受容体をシグナル伝達の起点とする細胞内チロシンキナーゼ(PTK)の活性化が惹起されることを見出している。この発見を受け、われわれは標的細胞に結合した抗CD38抗体のFc部分が、同じく標的細胞上に発現するFc受容体と結合することで抗腫瘍効果を増強するメカニズムを提唱している。
われわれが作成したヒトCD38高発現モデルであるBa/F3-CD38細胞に、臨床的に使用されているヒト型IgG1 kappaモノクローナル抗体daratumumab (DARA)を作用させたところ、細胞増殖抑制効果を有するマウス抗CD38抗体(T16)の場合と同様の細胞内チロシンリン酸化が惹起された。また、完全長のDARAがPTKを活性化するのに対し、DARAのF(ab')2断片は、PTK活性化を引き起こさなかった。
Ba/F3-CD38細胞はマウス抗CD38抗体によって惹起される細胞内チロシンリン酸化の観察に最適化されたモデル細胞であるが、臨床的にDARAの標的となる造血器悪性腫瘍細胞よりも多量のCD38抗原を細胞表面に発現している。そのため、内因性のCD38分子を発現しているヒト細胞株においてDARAの効果を確認したところ、複数のヒト細胞株で、Ba/F3-CD38細胞に認められたものと同様の細胞内チロシンリン酸化が観察された。
また、クロスリンク実験によって、DARAのFc部分は、生化学的事象のみならず、細胞生物学的機能の発揮に関しても重要であることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

われわれはBa/F3-CD38細胞が抗CD38抗体によるPTK活性化の観察に最適な細胞であることを明らかとしている。DARAによる刺激は、Ba/F3-CD38細胞にマウス抗CD38抗体と同様のチロシンリン酸化を惹起させ、RS4;11、REHなどのヒト細胞株においても、同程度の細胞内チロシンリン酸化を引き起こした。
完全長のDARAによる刺激がPTKを活性化するのに対し、DARAのF(ab')2断片はPTK活性化を惹起しなかった。Ba/F3-CD38細胞の表面にDARA F(ab')2を結合させた後、二次抗体を用いてCD38分子のクロスリンク実験を行なったところ、 DARA F(ab')2を完全長のウサギ抗ヒトIgGで架橋した場合にのみ、チロシンリン酸化が観察された。このことは、DARAを介したPTKの活性化に Fc部分の存在が必須であることを示している。
引き続いて細胞増殖抑制効果を指標にDARAの作用をヒト細胞株を用いて解析した。完全長の DARAは、バーキットリンパ腫由来細胞株Daudiの増殖をDARA F(ab')2よりも有意に強く抑制した。次に、Daudi細胞の表面にDARA F(ab')2を結合させた状態で完全長のウサギ抗ヒトIgGまたはウサギ抗ヒトIgG F(ab')2 を加えたところ、完全長のウサギ抗ヒトIgGで架橋を行った方が、より強力な細胞増殖抑制作用を示した。これらより、DARAの作用機序について、チロシンリン酸化を指標とした生化学的な解析と、細胞増殖抑制効果を指標とした細胞生物学的な解析は、ともにFc部分の重要性を示す結果となった。

今後の研究の推進方策

これまでの検討によって、CD38発現細胞に対するDARAの増殖抑制作用におけるFc部分の役割を解析するために必要なモデル細胞株の選定は概ね終了した。マウス抗CD38抗体を用いた解析では、CD38刺激が、B細胞受容体(BCR)シグナルに重要なCD19やLyn、PI3-キナーゼを活性化することから、これらB細胞関連のシグナル分子がCD38分子を起点としたシグナル伝達に関与することが想定されたが、初期の古典的解析手法では、CD19などの細胞表面分子とCD38の直接的な会合を証明することができず、その活性化機序を明らかにできなかった。その後、CD38はIgMクラスBCR(IgM-BCR)の成分である膜結合IgM、Igα、Igβ、CD81と共局在することが報告され(Deaglio他、2003 年)、抗体やクロスリンク剤あるいはCD31を介した刺激で、CD38がCD19/CD81複合体とともにキャップ領域に再局在化することが見出されている(Deaglio他、 2007)。最近になって、CD38がCD19と近接し、BCR刺激の後にIgM-BCRと近接することが見出された(Camponeschi他、2022)。DARAに代表される抗CD38抗体の結合や、CD38のサイレンシングがBCRシグナルを阻害することも示され、CD38がIgM-BCR を介したB細胞の活性化に不可欠な分子であることが想定されている。これまでに解析してきたDaudi細胞は細胞表面にIgMを発現していることから、BCRシグナルにおけるCD38分子の存在意義、DARAがIgM-BCR陽性細胞に及ぼす影響などの検討に適しており、これまでヒト細胞の検討として主に未分化B細胞株をサンプルとして得た解析結果に、新たな知見を加えることが可能になると期待される。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Integrated genetic and clinical prognostic factors for aggressive adult T-cell leukemia/lymphoma2023

    • 著者名/発表者名
      Kameda Takuro、Kataoka Keisuke、Kamiunten Ayako、 et al
    • 雑誌名

      Haematologica

      巻: - 号: 8 ページ: 2178-2191

    • DOI

      10.3324/haematol.2022.281510

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書 2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Nationwide prospective survey of secondary myelofibrosis in Japan: superiority of DIPSS-plus to MYSEC-PM as a survival risk model2023

    • 著者名/発表者名
      Shide K, Takenaka K, Kitanaka A, Numata A, Kameda T, Yamauchi T, Inagaki A, Mizuno S, Takami A, Ito S, Hagihara M, Usuki K, Maekawa T, Sunami K, Ueda Y, Tsutsui M, Ando M, Komatsu N, Ozawa K, Kurokawa M, Arai S, Mitani K, Akashi K, Shimoda K
    • 雑誌名

      Blood Cancer Journal

      巻: 13 号: 1 ページ: 110-110

    • DOI

      10.1038/s41408-023-00869-9

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Real-world clinical characteristics of post-essential thrombocythemia and post-polycythemia vera myelofibrosis2023

    • 著者名/発表者名
      Shide K, Takenaka K, Kitanaka A, Numata A, Kameda T, Yamauchi T, Inagaki A, Mizuno S, Takami A, Ito S, Hagihara M, Usuki K, Maekawa T, Sunami K, Ueda Y, Tsutsui M, Ando M, Komatsu N, Ozawa K, Kurokawa M, Arai S, Mitani K, Akashi K, Shimoda K
    • 雑誌名

      Annals of Hematology

      巻: 103 号: 1 ページ: 97-103

    • DOI

      10.1007/s00277-023-05528-4

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 血液疾患以外の併存疾患によりみられる血球異常2023

    • 著者名/発表者名
      北中明
    • 雑誌名

      薬事

      巻: 65 ページ: 3242-3246

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 骨髄系腫瘍概論/クローン性造血/骨髄系腫瘍を好発する遺伝性腫瘍症候群2023

    • 著者名/発表者名
      北中明, 通山薫
    • 雑誌名

      臨床検査

      巻: 67 ページ: 688-692

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Histone deacetylase inhibitor, panobinostat, exerts anti-proliferative effect with partial normalization from aberrant epigenetic states on granulosa cell tumor cell lines.2022

    • 著者名/発表者名
      Hazama Y, Tsujioka T, Kitanaka A, Tohyama K, Shimoya K.
    • 雑誌名

      PLoS One.

      巻: 17(7) 号: 7 ページ: 0271245-0271245

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0271245

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 骨髄増殖性腫瘍の早期診断を目的とした好塩基球増加症スクリーニング体制の検討2023

    • 著者名/発表者名
      近藤敏範, 今田昌秀, 内田圭一, 山本絵梨, 富岡菜々子, 小川千紘, 大倉尚子, 北中明, 通山薫, 近藤英生, 和田秀穂
    • 学会等名
      第85回日本血液学会学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 赤芽球系異形成が及ぼす再生不良性貧血の予後への影響2022

    • 著者名/発表者名
      高折晃史, 通山薫, 北中明, 黒川峰夫, 三谷絹子(他12名、9番目)
    • 学会等名
      厚生労働科学研究費補助金 「特発性造血障害に関する調査研究」令和4年度第1回班会議総会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 血液専門医テキスト(改訂第4版)2023

    • 著者名/発表者名
      日本血液学会(北中明, 通山薫 (担当:共著))
    • 総ページ数
      668
    • 出版者
      南江堂
    • ISBN
      9784524203710
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] 血液疾患のすべて 題名:骨髄検査2022

    • 著者名/発表者名
      北中明(分担執筆)
    • 総ページ数
      368
    • 出版者
      メジカルビュー社
    • ISBN
      9784758317870
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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