研究課題/領域番号 |
22K07498
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
宮本 勝一 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (50388526)
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研究分担者 |
伊東 秀文 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20250061)
桑原 基 近畿大学, 医学部, 講師 (40460860)
南野 麻衣 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (40927216)
中山 宜昭 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (50590436)
井上 徳光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80252708)
楠 進 近畿大学, 医学部, 教授 (90195438)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 補体 / 神経疾患 / 神経免疫 / 視神経脊髄炎 / ギラン・バレー症候群 / 重症筋無力症 |
研究開始時の研究の概要 |
補体は、ウイルスや細菌などの外敵から生体を守る免疫システムで重要な働きをしているが、その制御が破綻すると疾患の原因になることが知られている。重症筋無力症や視神経脊髄炎などの神経疾患でも、病態への補体の関与が示唆されているが、詳細な作用機序は明らかにされていない。 本研究では、神経疾患における補体の病態への関与を解析し、補体活性や抗補体治療の効果を判断できるバイオマーカーを見出すことを目的とする。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、神経疾患の病態における補体の関与についての解析を行い、病態に関与する補体活性を示す新規マーカーを見出すこと、そして、治療の効果判定や予後を予測できるバイオマーカーを開発することを目的とした研究を継続した。 補体は、ウイルスや細菌などの外敵から生体を守る免疫システムで重要な働きをしているが、その制御が破綻すると疾患の原因となる。神経疾患では重症筋無力症や視神経脊髄炎(NMOSD)は、補体が関与した自己抗体誘導性の病態が想定されており、再発予防治療に補体C5に対する抗体製剤が承認されている。しかし、無効例も存在し、その予測は困難である。補体の活性化経路は、古典経路、レクチン経路、第二経路があるが、これらの神経疾患の病態における補体の詳細な作用機序は明らかにされていない。 前年度は、NMOSDと、同じく神経免疫疾患であるギラン・バレー症候群(GBS)の解析を行ったところ、NMOSDでは補体第二経路が活性化しており、制御因子が低下しているため、そのまま終末経路まで補体が活性化し、神経細胞が傷害されることが判明した。一方、GBSでは補体第二経路Baは上昇していたが、制御因子CFHが機能しており、その結果、sC5b-9は上昇しておらず終末補体経路は活性化していなかった。これらの新しい知見を Front Immunol誌に論文発表した。 今年度は、これらの知見を基に補体因子とNMOSD予後との関連について検討し、NMOSDの疾患活動性を示すバイオマーカーを探索した。その結果、BaやsC5b-9などの補体活性マーカーは、その後の再発頻度と正の相関を認めた。また、Ba/CFH値は次の再発の予測マーカーとなり得る可能性が示唆された。補体マーカーを組み合わせたバイオマーカーはNMOSDの予後予測や治療薬の選択に有用であると考えられ、この知見を論文投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時に3年間の研究計画を立て、4段階に分けて研究を遂行する予定としたが、これまでに計画1(症例登録)を終え、計画2(補体測定)と3(新規マーカー開発)に着手できている。
計画1(症例登録)は、代表的な神経免疫疾患である重症筋無力症、NMOSD、ギラン・バレー症候群の3疾患について、各疾患とも目標症例数(約50例)の登録を終えた。その中で、過去に採取された血液検体が急性期と安定期の複数時点がペアで保存されている症例については、計画2(補体測定)に進んだ。 その結果、研究実績の概要で記載したとおり、NMOSDの病態に補体第二経路の活性化が重要であり、原因として補体制御因子が低下していることを明らかにした。この成果は論文発表することができた(Miyamoto K, et al. Front Immunol. 2023)。
今年度は、計画2の成果を受けて計画3(新規マーカー開発)に着手したところ、補体活性化因子、その分解産物、制御因子、補体関連分子などの測定値をインデックス化することで、NMOSDの予後が予測できる可能性が高いことが明らかとなった。この研究成果は、現在論文投稿の準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
計画3(新規マーカー開発)はNMOSDにおいて、補体測定値のインデックス値にて予後予測に有用であることが判明したため、個別の疾患において活用できる簡易なマーカーを見出す予定である。また、GBSやMGにおいても、新規マーカーの探索を継続する。
一方、補体全体を見たとき、3つの活性化経路のうち、古典経路とレクチン経路については単独で評価できるマーカーはまだ開発されていない。今年度は、これらの経路の活性化を表す新規マーカーを見出すことも目標とする。具体的には、古典経路とレクチン経路の共通マーカーとしてC2aやC2b、古典経路の単独マーカーとしてC1rとC1sをターゲットとし、これらのモノクローナル抗体の作成を試みる。抗体が作成できればELISA系を確立し、各神経免疫疾患の患者血液検体を測定し、古典経路やレクチン経路によって引き起こされる補体活性化を評価する。
計画4(前向き研究)については、これまでに本研究テーマで見出された知見を踏まえ、前向き研究での検証を行う。
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