研究課題/領域番号 |
22K07504
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
宮川 聡美 東京医科大学, 医学部, 兼任助手 (40931324)
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研究分担者 |
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ヒト乳歯歯髄幹細胞 / 培養上清 / 実験的自己免疫性神経炎 / シュワン細胞 / ヒト脱落乳歯歯髄幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
今日、間葉系幹細胞を用いた細胞療法が盛んであるが、その細胞培養上清(CM)の投与でも効果があり、免疫拒絶を考慮する必要もなく、安全性も高いため注目されている。当研究室では、最近、ヒト脱落乳歯由来の歯髄幹細胞(SHED)に不死化遺伝子を導入し安定的に高い増殖性を示す細胞株を作製した。歯髄幹細胞は、元々神経系由来のため、本研究では、まず、末梢神経障害の病気であるギラン・バレー症候群のマウスモデルである実験的自己免疫性神経炎モデルマウスを用いて、SHED-CMの治療効果とその作用機序について明らかにし、さらに、他の末梢神経障害の病気への応用の可能性についても検討する。
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研究実績の概要 |
2023年度はマウスシュワン細胞株IMS32を用いたSHED-CMの作用機序の検討を行った。 ①SHED-CMの蛋白質分子の関与:IMS32細胞に、無血清下SHED-CMまたはコントロール培地を加えると、SHED-CMの容量依存的に細胞増殖が増強された。そこで、SHED-CM中のどの分子が関与しているかを調べるために、可能性の高い10種類以上の組換えサイトカインを選びIMS32細胞に加えると、HGFとbFGF、NRG1で細胞増殖を増強し、さらに、SHED-CMによる細胞増殖の増強が、それぞれの抗体でブロックされることがわかった。さらに、SHED-CMでIMS32細胞を刺激すると、c-METやErbB2-4、その下流のERKやAKTのリン酸化を誘導し、SHED-CMおよび上記のサイトカインは、いずれもシュワン細胞の分化に重要な転写因子EGR2の発現も増強した。 ②SHED-CMのエクソソームの関与:SHED-CM中のエクソソームからRNAを抽出し、GeneChip miRNA Arrayを用いて網羅的に発現解析を行ったところ、アレイに用いた6599種類のmicroRNAの内、845個のmicroRNAが検出された。その中には、シュワン細胞の機能に関与していそうなmicroRNAも含まれていた。そこで、SHED-CMを超遠心機を用いて分離後、上清を蛋白質、沈渣をエクソソーム分画に分けて、まず、NanoSightにより粒子サイズが平均100 nmであることや、エクソソームのマーカー分子CD63とCD81の抗体を用いたウエスタンブロット解析より、両者が綺麗に分離されていることがわかった。そこで、分離前のSHED-CMとコントロール培地、両分画をIMS32細胞に加え細胞増殖を調べると、エクソソーム分画では増殖への影響が殆どなく、蛋白質分画で分離前と同レベルに、細胞増殖を増強した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不死化したヒト脱落乳歯歯髄幹細胞の培養上清(SHED-CM)による実験的自己免疫性神経炎(EAN)の抑制効果とその作用機序が明らかになってきているので、ほぼ計画の予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、当初は、SHED-CMによるT細胞活性化の抑制効果について調べる予定であったが、SHED-CMのシュワン細胞や神経細胞への効果の方が大きいと考え、さらに詳細に調べ、そこまでで論文に纏めることにし、T細胞活性化の抑制効果については先送りにすることにした。 ①SHED-CMによるシュワン細胞のミエリン化増強効果:既報に従い、マウス坐骨神経よりシュワン細胞を分離後、初代培養を行う。この初代培養シュワン細胞、または、ヒトテロメラーゼ遺伝子を導入し株化したhTERT-シュワン細胞株(ATCCより購入)を培養し、そこへSHED-CMおよびコントロール培地を加え、経時的に、細胞を固定し免疫蛍光染色と、細胞溶解液を調製しウエスタンブロット解析により、成熟シュワン細胞への分化マーカーであるミエリン塩基性蛋白質(MBP)やMyelin protein zero(P0)、EGR2の発現増強を調べる。次に、EGR2発現誘導の重要性を明らかにするため、EGR2特異的siRNAおよびコントロールsiRNAを遺伝子導入し、EGR2発現の低下を確認後、成熟シュワン細胞への分化への影響を調べる。 ②SHED-CMによる神経細胞の神経突起伸張増強効果:神経成長因子(NGF)の添加により神経突起伸張能を有するラット褐色細胞腫PC12細胞に、SHED-CM、または、コントロール培地、NGFを加え、48時間後、細胞形態を写真に撮り、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて神経突起の長さを定量し、神経突起伸張能への効果を検討する。SHED-CMに神経突起伸張効果が見られれば、それに関与していそうなNGFやHGF、bFGF、NRG1などのサイトカインに対する抗体を加え、その神経突起伸張能の増強効果がブロックできるか検討し、その作用機序を明らかにする。
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