研究課題/領域番号 |
22K07506
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
清水 潤 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (40260492)
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研究分担者 |
久保田 暁 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (30771589)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 筋炎特異抗体 / 全身性強皮症 / 臨床像 / 免疫組織化学 / 免疫介在性壊死性ミオパチー / 膠原病関連自己抗体 / 筋炎 / 特異抗体陰性 / 臨床病理像 / 分子病理 |
研究開始時の研究の概要 |
筋炎の7割の患者では筋炎特異抗体が出現し筋炎特異抗体の種類が臨床像と密接に関係するため患者治療において有用な情報が得られるようになった。一方、残り3割の“筋炎特異抗体陰性の筋炎”では筋炎関連抗体が出現し膠原病合併筋炎が代表的となるが、その臨床病理像は不明である。一方、実臨床に近い課題として、膠原病合併筋炎に筋炎特異抗体が時に合併するがその場合の臨床病理像は不明である。本研究では、① “筋炎特異抗体陰性の筋炎”および膠原病合併筋炎の臨床病理像の特徴を明らかにする、② 複数の免疫背景(筋炎自己抗体)が存在する場合に臨床病理像が変化するか?の疑問に答えることを目的にする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、筋炎特異抗体陰性の筋炎として、全身性強皮症(SSc)症例の筋障害を検討した。SSc分類基準ACR/EULAR (2013)を満たすSSc症例連続56例(生検39例、非生検17例)と対照群104例(SSc非合併の筋炎連続症例)の臨床像を比較検討した。SScの筋障害の定義は、先行報告に従い四肢筋力低下、血清CK上昇、針筋電図での安静時放電の3所見のいずれかを認めたものとした。平均年齢は56.6歳、dcSSc37例lcSSc19例。平均血清CK値は681 U/L (21~6748 U/L)。筋炎特異抗体の合併例はなく、強皮症3抗体の出現が約6割存在した。針筋電図は76%(35/46)で安静時放電を認めた。筋病理検討では対照群と比較し、炎症細胞浸潤の程度,壊死・再生線維の頻度,HLA-ABCの広がりは有意に軽度であった。また、炎症の乏しい例が7~8割で、筋周膜の炎症、筋線維のHLA-ABC, -DRの発現の程度は2峰性の傾向があった。通常の筋炎と比較し有意差を持ち異なる臨床像として、筋力低下の自覚がない例が4割(39%)、進行性筋力低下の病歴がない例が3割(34%)、筋力低下がない例が約2割(17%)、上肢の筋力低下の近位有意性がない約2割(23%)、下肢筋力正常の例が約3割(28%)、症状がCK上昇のみの例が25%、安静のみでCK正常化例が2割(20%)であり、EULAR/ACRの筋炎合致度はprobable未満が4割を占めた。また、筋力低下がありながら針筋電図正常である筋の7筋全例で免疫組織学的変化が存在した。近年、 SScに伴う筋障害の病態背景として、骨格筋の微小循環障害の存在が注目されている。SScに伴う筋障害例が、筋炎として非典型的な臨床像を高頻度に有することは、通常の筋炎と異なるSSc特有の筋障害機序の存在を臨床の観点より支持する知見と考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は,免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)では半数近くの症例で,筋炎特異抗体“陰性”筋炎でも認める合併抗体が併存していること,IMNMの筋病理像が合併抗体の存在により影響をうけることを明らかにした.2023年度は,筋炎特異抗体“陰性”筋炎の代表として、全身性強皮症(SSc)症例の筋障害を検討し、SScに伴う筋障害では通常の筋炎と異なる筋障害機序が存在することを臨床的観点より明らにした。現在、SScに伴う筋障害例の生検筋を用い、筋障害の機序を検討中である。2023年度の後半は、SScに伴う筋障害例の臨床像解析に時間を要したために、当初、予定していた患者血清と生検筋を用いた試料解析に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で、SScに伴う筋障害症例の生検例の中の7-8割は骨格筋微小循環障害を背景としてSSc-関連ミオパチーであるが、残りの2-3割では炎症性病理がありオーバーラップ筋炎に近い病態であることが明らかになった。SSc-関連ミオパチーとオーバーラップ筋炎は異なる病態と考えられる。2024年度は、現在まで進めているSScに伴う筋障害例の血清と生検筋を用いた試料解析を継続し、すでに抽出済みの臨床因子との関連解析を、統計的手法を用い行っていく。また、今までの研究結果について,学会発表を行ったうえで論文化を進めていく。
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