研究課題/領域番号 |
22K07529
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
小野 麻衣子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 研究員 (70595876)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | αシヌクレイン / 神経障害 / PETイメージング / 生体核磁気共鳴 / グルタミン酸 |
研究開始時の研究の概要 |
パーキンソン病やレビー小体型認知症では、異常なαシヌクレイン凝集体の蓄積が病態の主因と考えられている一方で、凝集体が生体脳内で蓄積・伝播する過程で神経障害をもたらす機序には未解明な部分が多い。本研究では、その過剰興奮がパーキンソン病の症状発現に重要な役割を果たすことが示唆されるグルタミン酸作動性神経に着目し、αシヌクレイン伝播モデルマウスを用いて、陽電子断層撮像法や生体核磁気共鳴法等を駆使してαシヌクレイン凝集体伝播に誘導される神経障害メカニズムを明らかにする。さらに、化学遺伝学的手法を用いた神経活動の操作によるαシヌクレイン病態の変化を検証し、病態制御法の開発につなげる。
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研究実績の概要 |
パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症といったαシヌクレイノパチーは異常なαシヌクレインの凝集・蓄積が病態の主因と考えられているが、神経障害が起こる機序は未解明な点が多く、根本的な治療法は開発されていない。 異常なαシヌクレイン凝集体は、生体脳内を伝播することが近年の研究により明らかとなっている。異常なαシヌクレインは、生体脳内を伝播する過程でどのように神経障害をもたらすのか? これを明らかにするためには、ヒト病態を良好に再現したモデル動物における生体-組織横断的な解析が必要である。本研究では、申請者らが独自に開発したαシヌクレイン凝集体蓄積を可視化するポジトロン断層撮影(PET)リガンドを用いてαシヌクレイン伝播モデルマウス生体脳における凝集体蓄積を評価し、凝集体蓄積・伝播に伴う神経障害を代謝型グルタミン酸受容体PET、およびグルタミン酸CEST-MRやMRスペクトロスコピー(MRS)といった生体核磁気共鳴手法を用いて経時的に解析する。また、生体イメージングにおける変化の背景となる分子機構をモデルマウス摘出脳の組織化学的解析により明らかにするとともに、DREADD技術による神経活動操作が凝集体の伝播や線維障害に及ぼす影響を検証する。一連の取り組みを通じて、生体レベルでのαシヌクレイン凝集体蓄積・伝播における神経障害メカニズムの解明と制御を試みる。 2023年度には、αシヌクレイン凝集体蓄積・伝播と神経障害の連関の経時的な解析を目的として、αシヌクレイン伝播モデルマウスを対象に、申請者らが独自に開発したPETリガンドを用いたαシヌクレイン凝集体蓄積の経時変化の評価と、2022年度に確立した生体核磁気共鳴手法による脳内グルタミン酸濃度の経時変化の評価に着手した。また、αシヌクレイン伝播モデルマウス摘出脳を用いて、生体イメージングでの変化の背景となる分子機構の組織化学的手法による解析に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には計画のとおりに、αシヌクレイン凝集体蓄積・伝播と神経障害の連関の経時的な解析を目的として、αシヌクレイン伝播モデルマウスを対象に、αシヌクレイン凝集体PETと2022年度に確立した生体核磁気共鳴手法によるαシヌクレイン伝播病態の経時的評価に着手した。また、αシヌクレイン伝播モデルマウス摘出脳を用いて、生体イメージングでの変化の背景となる分子機構の組織化学的手法による解析に着手した。加えて、2024年度に計画している、神経活動操作がαシヌクレイン凝集体の伝播や線維障害に及ぼす影響の検証のための予備検討として、DREADDの発現により神経活動を操作したマウス生体脳でのMRS撮像法を確立した。2023年度に計画した実施目標は達成されたことから、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
αシヌクレイン凝集体蓄積・伝播における神経障害メカニズムの解明を目的として、生体イメージング手法による、αシヌクレイン凝集体蓄積・伝播と神経障害の連関の経時的な解析を引き続き実施する。 具体的には、線条体へのαシヌクレイン線維接種から4、8、12、24週後のモデルマウスおよび対照マウスにおいて、αシヌクレインPETリガンドを用いた撮像を実施し、生体脳におけるαシヌクレイン凝集体蓄積の経時変化を評価する。同時に、グルタミン酸神経伝達異常を生体核磁気共鳴手法により評価し、αシヌクレイン凝集体蓄積・伝播との連関を生体脳で検証する。また、生体イメージングでの変化の背景となる分子機構の検証を、組織化学的手法を用いて実施する。線条体へのαシヌクレイン線維接種から4、8、12、24週後のモデルマウスおよび対照マウスの摘出脳を用いて、免疫組織化学的手法、生化学的手法によりαシヌクレインの凝集形態や神経変性を解析し、αシヌクレイン凝集体蓄積・伝播における神経障害メカニズムの解明につなげる。 さらに、神経活動操作が凝集体の伝播や線維障害に及ぼす影響を検証する。具体的には、DREADD(hM3Dq/hM4Di)を搭載した逆行性に感染するアデノ随伴ウィルスベクターをマウス線条体に注入し、αシヌクレインが伝播する経路の神経細胞にDREADDを発現させる。その後、線条体にαシヌクレイン線維を注入し、DREADD作動薬を投与して神経活動を活性化/抑制する。生体イメージングおよび組織化学的解析によりαシヌクレイン伝播病態を解析し、神経活動非操作群と比較することで、神経活動操作が凝集体の伝播や線維障害に及ぼす影響を検証する。
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