研究課題/領域番号 |
22K07538
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村山 繁雄 大阪大学, 大学院連合小児発達学研究科, 特任教授(常勤) (50183653)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 認知症 / 嗜銀顆粒 / 神経原線維変化 / 老人班 / レビー小体 / TDP43 / アルツハイマー病 / レビー小体型認知症 / argyrophilic grain / tauopathy / dementia / neurofibrillary tangle |
研究開始時の研究の概要 |
PART (primary age related tauopathy)、LATE (limbic age related TDP43 encephalopathy)は米国からの提唱で純粋例が多いと記載されているが、嗜銀顆粒検出に必要なGallyas鍍銀染色、抗4リピート(R)タウアイソフォルム特異抗体が採用されていない技術的問題が原因である。都市近郊高齢者コホート連続剖検例中開頭・登録同意を得た症例からなる高齢者ブレインバンク例と、日本ブレインバンクネットワーク関西拠点蓄積神経変性疾患リソースを組み合わせ疫学病理学的検討を加えることで、上記二疾患疾患概念の修正を行うことが本研究の概要である。
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研究実績の概要 |
大阪大学発達障害・精神・神経疾患ブレインバンク(BBNNPD)、東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンク(BBAR)の新規登録例を、BBARプロトコールに従い網羅的にスクリーニングした。切り出し部位はCERAD、DLB Consensus Guideline、ヨーロッパ神経病理標準切り出し部位を網羅するかたちをとった。 通常染色はH.E.、K.B.、Gallyas鍍嗜染色を行った。免疫染色として、抗タウ抗体(AT8, RD4, RD3)、抗アミロイドβ蛋白抗体(12B2:11-28)、抗αシヌクレイン抗体(Psyn#64、MJF-R3)、抗TDP43抗体(PSer 409/ 410)を用いた。ステージ分類には、アルツハイマー型神経原線維変化は、Braak Gallyas StageとAT8 Stage、老人班はBraakアミロイドステージ、CERADとThalステージ、レビー小体関連病理はDLB Consensus Guideline, 1st, 4thとBBAR ステージ分類、TDP43はBBARステージ分類、嗜銀顆粒はSaito Stagingで評価した。脳血管障害に関しては、生前MRI画像を参考に正確な評価を試みた。臨床的な認知・運動症状については、病歴を後方視的に詳細に検討した。 今年度はいわゆるLATE(limbic age associated TDP43 proteinopathy)、PART(primary related tauopathy)の抽出と嗜銀顆粒疾患の併存を評価した。これまでの経験通り、米国でのPART該当例で嗜銀顆粒を伴わない症例は存在しなかった。同様に"LATE"症例に関して、認知症を伴う群はTDP43蓄積部位に恒に嗜銀顆粒を伴っていた。次年度は純粋嗜銀顆粒性認知症の検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブレインバンク新規登録数に関して、大阪大学発達障害・精神・神経疾患ブレインバンクでは、連携施設である大阪刀根山医療センターと共同することで、20例を確保出来た。これらは全て神経内科疾患かつほぼ神経変性疾患である。一方筆頭研究者クロスアポイント先である健康長寿医療センター高齢者ブレインバンクでは連携施設を含め、40例を蒐集出来た。これらは在宅高齢者支援総合病院患者コホート剖検例が大半を占める。スクリーニングにより得られた認知症を伴うPART症例は2例、LATE症例は1例のみで、いずれも嗜銀顆粒を伴うことが確認出来た。一方純粋嗜銀顆粒性認知症は2例で、いずれもTDP43をは伴っていなかった。以上の点より少なくとも本邦では、純粋LATE症例は極めて稀であること、米国では嗜銀顆粒が無視されている結果、純粋LATE症例が過大評価されている見解が支持された。 嗜銀顆粒に関しては2022年度までに蓄積された、高齢者ブレインバンク2568例の検討では、Saito Stage 0 1424例(55.5%)、Stage 1 582例(22.7%)、Stage 2 339例(13.2%)、Stage 3 223例(8.7%)であった。 Saito Stage 3、223例の合併病理としては、アルツハイマー病が21例(9.4%)と最多で、ついで進行性核上性麻痺 16例(7.2%)、神経原線維変化優位型認知症(いわゆるPART)14例(6.3%)、レビー小体型認知症 11例(4.9%)、大脳皮質基底核変性症 7例(3.1%)、limbic TDP43 proteinopathy(いわゆるLATE,認知症を伴うものも伴わないものもあわせて)5例(2.2%)で、合併病理が乏しい例(いわゆる純粋型)が130例あった。次年度はさらに新規蓄積症例に網羅的検討を加えていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
嗜銀顆粒について、Cambridgeグループとの共同研究でのクリオ電顕の検討により、嗜銀顆粒が独立した構造としてNatureに発表出来、英国で存在が認知された点は大きい。ただ、MAPT loop domain変異、ATRAG(4 repeat astrogliopahy)と同じとされ、4 repeat over expressionの反映とされた点に関しては、細胞内局在が異なる点と、少ない例の検討ながら、超微形態が異なる点を説明できない。プリオン病サーベイランス委員会病理コアの実績を生かし、嗜銀顆粒に関しては、免疫組織化学を含む組織病理所見に加え、凍結脳Western blotにマウスへの伝搬実験を加えた検討を継続する。同時に"PART"、"LATE"との合併についての検討を継続する。 "PART"に関しては、嗜銀顆粒との合併例と非合併例での検討を継続する。嗜銀顆粒とアルツハイマー型神経原線維変化(ADNFT)の出現が比較的解離する解剖学的部位は、嗜銀顆粒は側頭葉内側面前方、"PART"に関しては後方である点のみで、その他は全て一致する。両者の検討には、RD4がADNFTの染色性が弱い点を生かし、RD3とRD4の免疫組織化学を活用しさらに検討を続ける。 "LATE"に関しては、最好発部位での海馬支脚でのスクリーニングを継続し、出現多数例と嗜銀顆粒との関係をさらに追求する。嗜銀顆粒は樹状突起後シナプス構造に形成されると考えられているが、"LATE"の場合、神経細胞体内と一部核内及び短い突起内に出現する点で、細胞内局在が異なる。しかし好発部位は左右差を含め、ほぼ共通することが問題である。現在嗜銀顆粒と"LATE"の左右差が異なる症例が1例存在するが、さらに複数例の抽出を試みることで、嗜銀顆粒とTDP43の疾患機構での上流・下流関係をより正確に評価していきたい。
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