研究課題
基盤研究(C)
運動症状を主体とするパーキンソン病(PD)は、加齢や遺伝的要因など多因子が関与する疾患であるが、発症原因は未だ不明な点が多い。根本的治療法の確立に向けた病態の解明は急務であり、発症のリスクとなる遺伝的要因の探索は不可欠である。本研究では、PDの疾患感受性遺伝子の可能性が示されたVPS13遺伝子について、発症のしやすさや重症化など臨床型に相関したハプロタイプを決定し、さらに培養細胞や疾患モデル動物を用いた分子生物学的検討によりVPS13の機能に影響を及ぼすリスク因子の発見を目指す。
若年発症の常染色体潜性遺伝性パーキンソン病(Parkinson's disease, PD)の原因遺伝子であるVacuolar protein sorting 13 homolog C (VPS13C)、およびそのパラログ遺伝子であるVPS13A/B/Dについて、PD発症における遺伝的要因の意義と機能の解明を目指し研究を進めた。DNAバンクに登録される症例に対するルーチン解析として遺伝子パネルを用いたIon TorrentシステムによるPD関連遺伝子の網羅的解析を行っている。VPS13A/B/C/Dのスクリーニングにより検出されたレアバリアントについて、日本人PD患者群991人、公共ゲノムデータベースであるJapanese Multi Omics Reference Panel (jMor) 8.3KJPNの8,380人をコントロール群として関連解析を行った。遺伝子パネルの解析領域から検出されるバリアントの内、jMorpにおいてMiner Allele Frequency (MAF)が1%以下のバリアントをレアバリアントと定義した。患者特異的なレアバリアントの中にはin silico解析で有害性が予測されたバリアントも検出されたが、いずれの遺伝子も両群間におけるレアバリアントの保有率に差はなかった。また両群間で明らかな頻度に差があるコモンバリアントも検出されなかった。本年度は新たに352例のスクリーニングを行い、VPS13C変異陽性3例が同定された。いずれも若年発症例であり、bi-allelic(ホモ接合体あるいは複合ヘテロ接合体)であることを確認するため、現在両親の解析を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
患者群は目標とする1,000人をほぼ達成、コントロール群はin-house controlから公共ゲノムデータベースを利用することで人数を増やし、より精度が高い関連解析を行うことができた。新たに352例のスクリーニングによりバリアントのデータが蓄積され、さらにVPS13C変異陽性の若年発症3例が同定された。担当医の協力も得られ、両親の解析の他、病的意義の探索に向けたRNA解析やiPS細胞樹立を検討中である。
新たに同定された3例のVPS13C変異陽性例について、家系解析の他、病的意義の評価のために発現量探索などRNA解析を行う。さらにiPS細胞の作製を目指し、先にiPS細胞を樹立しているVPS13C変異例と併せて神経細胞の作製および機能解析を検討する。2024年度は新たな300例のスクリーニングによりバリアントデータの蓄積を進め、レアバリアントと臨床像の相関について臨床遺伝学的検討を行う。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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