研究課題/領域番号 |
22K07543
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
平澤 恵理 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (50245718)
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研究分担者 |
齋藤 文仁 日本医科大学, 医学部, 准教授 (20360175)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | オリゴデンドロサイト / コンドロイチン硫酸 / グリア / 脳梗塞 / 神経修復 / oligodendrocyte / 糖鎖 |
研究開始時の研究の概要 |
コンドロイチン硫酸(CS)からなるパッチ構造に囲まれた未成熟オリゴデンドロサイト(OL)を、“第5のグリア”として着目した。この新たなパッチ構造は、臨界期終了時の大脳皮質に、特徴的な糖鎖抗原性と局在様式を示して出現する。本研究では、この糖鎖を纏う未成熟OLの機能解明を目的に、糖鎖分析、OLの分化培養、パッチ構造内外のスパイン形状の比較により仮説を立証する。得られた成果より、OLを基軸とするニューロン-グリア相互作用を明らかにし、神経疾患の病態解明と治療方法開発に活かす。
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研究実績の概要 |
本研究では、脳機能の維持と神経修復の観点から、オリゴデンドロサイト(OL)系譜の多様性とそれを規定する糖鎖特異性に着目した。特に、コンドロイチン硫酸(CS)鎖によっての抗体クローンCS56で陽性に染色されるパッチ構造に囲まれた未成熟OLの存在を発見し、「第5のグリア」として注目した。このCS56パッチ 構造の発見は、脳の発達過程で、神経回路が経験に応じて柔軟に変化する「臨界期」において重要と考えた。新たに発見されたパッチ構造は、臨界期の終わりに大脳皮質に現れ、特有の糖鎖抗原性と局在様式を示す。これらの観察から、未成熟OLがOL自身の分化・成熟やシナプスの維持に重要な役割を果たすという仮説を立た。本研究は、この未成熟OLの糖鎖構造と機能を解明することを目的とし、糖鎖分析、OLの分化培養、そしてパッチ構造内外のスパイン形状の比較を通じて仮説を検証する。さらに、脳梗塞モデルを用いて、これらOL系譜の挙動が活発化する虚血回復巣での神経修復への寄与を検証する。通常、未成熟OLは発達期の脳において髄鞘形成に至る過程にあるとされているが、髄鞘形成が終了した成体脳にも多く存在することが明らかになってきた。これは、これらのOLが成体脳にプールされ、虚血や炎症などの損傷時に増殖・分化・成熟を経て髄鞘形成に寄与する可能性があることを示唆す。NG2+グリア、GPR17+グリアといった未成熟OLの一群も発見され、これらは現在の研究において急速に進展しているが、CS56パッチに囲まれた未成熟OLはその出現時期と糖鎖硫酸化の明確な特徴から、より機能性と特異性の高いサブクラスとして期待する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンドロイチン硫酸(CS)パッチに包まれた未成熟オリゴデンドロサイト(OL)が成熟OLに至る一歩手前の状態でプール細胞として存在すると思われる。このプール細胞は、脳損傷が生じた際に迅速な修復に向けて活動を開始する可能性を考えている。ここまで本研究では、虚血再灌流時の挙動を観察することで、CSパッチに包まれた未成熟OLの神経修復、特に再髄鞘化への寄与を探ることを目標とした。病態モデルとしては、中大脳動脈閉塞(MCAO)マウスモデルを用い、梗塞及びその周囲、健常側の同部位を分析している。2022年度からにはすでに一部の実験条件の検討が開始され、2023年度は中大脳動脈脳梗塞モデルの作成条件の設定と、CSパッチを纏った未成熟OLのプロファイルの分析を進めた。電気凝固方法により、中大脳動脈脳梗塞モデルで安定した梗塞巣を得ることが可能であり、免疫染色によって、脳梗塞周辺のペナンブラ領域でのコンドロイチン硫酸の蓄積を統計学的に検証している。また、in vitroのシステムとして、初代培養及びOL細胞株の培養系で未成熟OLがCSパッチを形成するかを検証した。OL細胞株については、三次元培養系を確立し、その成果を「Kato et al」の論文として投稿し、2023年5月に受理された、初代培養の三次元培養系を解析した論文を投稿準備中である。これらの成果から、研究は全体として順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
糖鎖構造の明確化:CSパッチを構成する糖鎖構造を詳細に調べることで、パッチ内外のニューロンスパインの形状の違いを通じて、ニューロンとの相互作用を示す。 脳梗塞モデルの長期観察:脳梗塞モデルでは、定点観測から経時的に長期に観察する。この期間にわたるオリゴデンドロサイト系譜細胞の挙動を、免疫組織科学的手法を中心に検証し、梗塞後の神経回復プロセスへの寄与を詳細に調べる。 糖鎖特異性の検証:CSユニットに対する特異的抗体シリーズを用いて、より詳細な糖鎖の特異性に関して検証する。これにより、CSパッチの糖鎖構成要素が持つ生物学的役割と機能の理解を深める。 生化学的分析:脳組織および培養細胞からの二糖解析を行い、糖鎖の組成や構造を生化学的に評価する。 これらの研究は、脳損傷後の回復メカニズムを解明するための重要なステップであり、将来的には新しい治療戦略の開発につながる可能性があります。
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