研究課題/領域番号 |
22K07581
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
堀内 史枝 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (50363247)
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研究分担者 |
吉野 祐太 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (10646243)
河邉 憲太郎 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (90457375)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / NK細胞 / 診断マーカー / miR-15b-5p / 早期診断 / 頬粘膜 |
研究開始時の研究の概要 |
自閉スペクトラム症は、社会性の障害を中核症状とする神経発達症であるが、未だ診断に有用な生物学的指標は存在しない。成人期ASD者を対象に、血漿中の免疫系における遺伝子発現の変化を確認した。今後、血漿でみられた変化が頬粘膜サンプルでも同様の変化明らかにし、未就学児についても検証する。ひいては、小児ASD独自の変化として検討する。ひいては、早期診断に役立つスクリーニング手法としての有用性を検証する。
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研究実績の概要 |
末梢血を用いたバイオマーカーの探索として、我々の全血RNAを用いたRNA-seqより、ASD患者においてNK細胞の異常が明らかになったことより、NK細胞に着目した(PMID: 33931079)。まず、In silico解析として、RNA-seqの結果からCIBERSORTを用いて、各血液細胞の存在比率を推定した(Ct vs ASD = 6 vs 6)。その結果、活動をしていないresting NK細胞の比率が優位に減少していることを見出した(P = 0.015)。サンプル数を増やし、NK細胞に関わる遺伝子発現をPBMCを用いて検証した(Ct vs ASD = 23 vs 23、qPCR法)。NK細胞の分化や働きに関わる以下の遺伝子を対象とした:ETS1, ID2, KLRC1, KLRC2, NCR1, NCR3。その結果、ETS1のみASD群において遺伝子発現が有意に上昇していた(1.8倍、P = 0.002)。ETS1は転写因子であり、NK細胞の分化・成熟に関わっていることから、NK細胞の個数、また分化・成熟のプロセスの異常がASD患者において生じていることが示唆された。そこで、まずフローサイトメトリーを用いてRegulatory NK細胞、Cytotoxic NK細胞、Defective NK細胞に分割し割合を検討した。その結果、Defective NK細胞がASD群において優位に割合が上昇していた。Defective NK細胞は機能が十分に分かっていない部分も多いが、未分化なNK細胞であることからやはり分化・成熟に異常があると推定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の報告で、頬粘膜からは十分なRNA量を抽出することが困難であり、qPCR法で遺伝子発現を測定することはできるが、再現性に乏しいと判断してPBMCからバイオマーカーの探索、末梢血細胞の機能に着目して研究を進める方針とした。その結果、NK細胞の個数、分化・成熟に関わる異常を新たな知見として得ることができており、今後の研究で述べる各NK細胞の遺伝子発現を測定した段階で、学会、英語論文として発表することができると考えており、概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
フローサイトメトリーを用いてRegulatory NK細胞、Cytotoxic NK細胞、Defective NK細胞の比率を測定したが、これらの細胞の機能を推定するために、各種NK細胞の遺伝子発現を測定する予定である。対象遺伝子は同様にETS1, ID2, KLRC1, KLRC2, NCR1, NCR3とする。PBMCは当科で作成している保存液の中で冷凍保存しているが、どうしても長時間経つと細胞が死滅することがフローサイトメトリーの結果から分かっており、同じサンプル群から新たにPBMCを採取し新鮮な状態でフローサイトメトリーにかけてRNAを抽出する予定である。遺伝子発現の結果をみた上で、今後英語論文として発表する予定としている。 また、PBMCでNK細胞に関わる遺伝子発現を測定した際に、CX3CR1の遺伝子発現も同時に測定したが、明らかにASD群で上昇していた(1.9倍、P < 0.001)。CX3CR1は単球・マクロファージに多く発現していること、我々の結果や過去の報告よりASD患者における単球の異常が指摘されていることから、単球に着目した研究も進めていく方針である。
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