研究課題/領域番号 |
22K07584
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
中村 雅之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (90332832)
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研究分担者 |
佐々木 なつき 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (30755252)
新井 薫 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (70789536)
崎元 仁志 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (80813667)
浦田 結嘉 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90854670)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | chorein / ミトコンドリア / マイトファジー / ミトコンドリア膜電位消失 / 免疫沈降 / 質量分析 / 有棘赤血球舞踏病 |
研究開始時の研究の概要 |
有棘赤血球舞踏病 (ChAc) は稀な遺伝性神経変性疾患で、うつ病、統合失調症類似の幻覚妄想、強迫性障害などの精神症状を高率に生じる器質性精神障害であり、ChAcと精神障害との間に共通分子病態の存在があることが予想される。私達は、ChAcにはオートファジーの中でもミトコンドリアの恒常性維持に関わるマイトファジー不全を介した細胞死が関連し、加齢にも関与する可能性を予備的実験結果で得ている。今回の研究で、ChAcにおけるマイトファジーと神経変性という分子レベルの病態機序の解明と、ChAcの病態に関連する分子群と精神疾患との関連を明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
有棘赤血球舞踏病 (ChAc) は、脳神経系では尾状核の萎縮を呈し、舞踏運動などの不随意運動に加え、てんかんや統合失調症類似の多彩な精神神経症状を伴い、末梢血有棘赤血球症を来たす遺伝性神経変性疾患である。遺伝的病因はVPS13A遺伝子の機能喪失性変異であり、遺伝子産物choreinの機能が欠損することによる。CCCPによるミトコンドリア膜電位消失刺激によってミトコンドリア選択的オートファジーであるマイトファジーが誘発されることが知られている。choreinをノックダウンした細胞ではミトコンドリア膜電位消失刺激によって細胞死が亢進することを見出した。精子においては、ミトコンドリアが局在する中片部にchoreinも局在し、ChAcモデルマウスの精子は、電子顕微鏡下でミトコンドリアの大小不同、配列の乱れ、ミトコンドリア鞘の超微細構造異常などの形態学的異常を呈するなど、choreinはミトコンドリア膜の安定化に寄与し、ミトコンドリアの品質保持のためのマイトファジーとの関わりを持つ可能性が高い。choreinが機能喪失しているChAcでは加齢に伴い線条体神経細胞におけるミトコンドリアの恒常性が維持できなくなる可能性や、ミトコンドリアの機能不全による神経細胞死が誘発されている可能性が示唆される。培養細胞を用いて、CCCP刺激の有無によるchorein抗体をもちいた免疫沈降を行い、choreinとの共沈物について、質量分析を行なった。choreinと15の共沈タンパク質が示唆され、それらのうち13のタンパク質が、CCCPの刺激の有無により、分析のintensityが1.5倍以上異なっていた。現在、それらのタンパク質について、ウエスタンブロットによって再現性をそれぞれ確認しており、再現性が確認されたタンパク質についてはモデルマウス脳における発現の違いを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養細胞を用いた研究においては、共沈物の質量分析によって見出したタンパク質について、ウエスタンブロットによる再現性の確認を行っている。現在、我々の施設では、動物実験室の改築に伴い、令和3年度に仮施設への移転、また令和4年度に新施設への移転があったため、マウスの繁殖や研究に制限があった。マウス脳のchoreinとの相互作用分子については、加齢による差異なども検討しているため、十分なマウスの数を確保するために更なる時間を要する状態である。
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今後の研究の推進方策 |
当初は、培養細胞研究によって同定した分子の局在や発現の変化などを、野生型マウスとChAcモデルマウスについて、若年と老齢マウスを用いて加齢による局在や発現の変化を、脳線条体や他の脳部位において比較する予定であった。しかし、十分なマウスの数を確保するために更なる時間を要する状態であるため、培養細胞による研究をさらに進める。現在、CCCP刺激によって、2価鉄蓄積から過酸化脂質産生による細胞死であるフェロトーシスが亢進することを予備的に認めており、chorein共沈物の中でもフェロトーシス関連分子について、刺激による発現や局在の変化を同定して行く予定としている。
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