研究課題/領域番号 |
22K07600
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (40381256)
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研究分担者 |
仲地 ゆたか 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (10522097)
橋本 恵理 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30301401)
石井 貴男 札幌医科大学, 医学部, 教授 (40404701)
館農 勝 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (60464492)
森元 隆文 札幌医科大学, 保健医療学部, 講師 (60516730)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | シンクロナイザーニューロン / 認知的共感性 / 情動的共感性 / 統合失調症 / パルブアルブミン含有ニューロン / GABAインターニューロン / 睡眠時スピンドル波 / 末梢血脳神経由来エクソソーム / schizophrenia / occupational function / social function / synchronizer neuron / empathy |
研究開始時の研究の概要 |
統合失調症の職業的・社会的機能回復の問題について,脳神経回路におけるオシレーション形成細胞の変異による脳機能変化 (gamma-band activity・スピンドル波変動),脳細胞由来末梢血Exosome発現分子変化 (Parvalbumin・GAD67変動),および行動学的変化 (対人,注意・記憶機能変動) を比較解析し,認知的・情動的共感性機能の神経回路を適切に調節することが,患者の社会・職業機能回復につながっていることを明らかにする。併せて,その効果をより高める治療手段としての,集団心理療法と認知行動療法の併用療法の有用性を検討,新たな効果的な治療法の開発へ進めることを目指す。
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研究実績の概要 |
統合失調症の治療では,患者の社会的認知能力や,対人コミュニケーション能力を正しく評価・診断することが極めて重要な課題であるが,日常生活技能に加え,職業機能回復と相関した脳機能変化を直接的,簡便に評価できる方法は極めて少ない。本研究の目的は,そうした能力の変動を,ヒトの認知機能の神経基盤を形成する周期的神経活動 (オシレーション) 形成細胞 (シンクロナイザーニューロン) としての,パルブアルブミン (PV) 含有 GABA系 interneuron の脳内活性動態を指標として解析する手段を確立することである。本研究では,PV含有ニューロンに特異的に作用する分子を用いた,①ヒト疾患患者前駆細胞-PV含有ニューロン分化・成熟変動の評価 (in vitro),② PV含有ニューロン減弱モデルの (脳・血液・行動) 相関解析 (in vivo) を実施する。さらに,これらの手法を用いて,③薬物療法に加え,集団心理療法,集団認知行動療法を実施した際の,精神疾患患者の認知的・情動的共感性機能変化と,その基盤となる脳機能変化(睡眠時スピンドル波解析),脳神経由来末梢血exosome内の分子変動の連関解析を進め,精神疾患の治療手段の有用性を動物モデル・ヒト臨床研究の両面から明らかにすることを目指す。初年度は,22q11.2欠失患者由来iPS細胞のニューロン分画において,PV(+)GABA系interneuronの分化・生存機能変化時の発現分子の網羅的比較解析を行い,同ニューロンの分化・生存機能を正に制御する因子として,Sonic Hedgehog agonist,およびHSP modulatorの各処置群で共通して変動する遺伝子の同定を得た。同遺伝子は,統合失調症に関する複数のGWASで検出された責任領域に存在する遺伝子で,今回の目的を担う分子候補の発見として期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,シンクロナイザーニューロンの特異的産生・機能的成熟に対する検討として,PV(+)GABA系interneuronの分化・生存機能変化の解析を実施した。22q11.2欠失患者由来iPS細胞のニューロン分画において,コントロール群,および3処理群(Purmorphamine投与群,低17AAG投与群,高17AAG投与群)の4群(各N=4,計12サンプル)から精製した微量RNAを用いてRNA-seq解析を行った。クロンテック社 SMART-Seq kit とイルミナ社 NExtera XT kitによるRNA-seq用ライブラリの調整後,イルミナNovaSeq6000によるシーケンス解析を実施した。各サンプル4,000万リードのシーケンスからヒトゲノムGRCh38を参照配列としてHISAT2/StringTieツールにより遺伝子発現レベルを算出し,発現解析ツールedgeR(R/Bioconductor)により各投与群で顕著な発現変化を示した遺伝子群を同定した(Purmorphamine投与群では53遺伝子,低17AAG投与群では226遺伝子,高17AAG投与群では915遺伝子)。各群に共通する遺伝子がいくつかみられたが,特にPurmorphamine投与群と低17AAG投与群で共通して同定された遺伝子(2番染色体上のHSP関連遺伝子)は,統合失調症に関する複数のGWASにおいて検出された責任領域に存在する遺伝子であり,統合失調症の病態との関係を含め,今回の研究の中核となる候補分子となる可能性が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の検討で新たに同定された疾患関連候補分子について,細胞機能変異に及ぼす影響の詳細に関する追加実験を行う。次に,2年目として,統合失調症モデルラットにおけるシンクロナイザーニューロンの機能変動の検討を実施する。具体的には,妊娠ラットへのPloy I:C投与による胎生期免疫ストレス誘発統合失調症モデルラットを作成し(本モデルラットで,扁桃体/腹側・背側海馬のPV(+)GABA系interneuron特異的減少を報告),コントロール群,統合失調症モデル群,モデル + 抗精神病薬投与群,モデル + HSP modulator投与群等の各群において,ソーシャルインタラクション評価,および援助行動評価を用いた,社会的行動,認知的・情動的共感性機能の変化の比較解析を行う。加えて,脳神経回路変動解析として,行動実験終了後に各動物群の脳組織切片を作製し,扁桃体,前部帯状回,後部帯状回,背側海馬,腹側海馬の各脳領域におけるPV (+) GABA系インターニューロン数の変動等を免疫組織学的に解析する。さらに,末梢血を用いた脳-血液連関病態解析として,CD17/NCAM-L1-Biotin抗体にStreptavidin-microbeadsを反応させ,MACSを用いてNeuronal exosome分画を得て,Glutamate (Vglut),GABA (Vgat),GABAergic interneuron (PV, SST, GAD1/67) 関連分子の発現変動を調べ,Glutamate/GABA神経活性バランス変動の解析,および網羅的分子変動解析を実施し,シンクロナイザーニューロン活性化指標ともなる特異的分子の絞り込みを進める。
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