研究課題/領域番号 |
22K07617
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鬼塚 俊明 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (00398059)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 聴覚定常状態反応 / evoked power / phase locking factor / induced power / 臨床神経生理 / 統合失調症 / うつ病 / 双極性障害 / 精神疾患 / 臨床脳波 / 神経同期活動 / 多施設研究 |
研究開始時の研究の概要 |
多施設での臨床脳波検査で収集した大規模且つ疾患横断的なガンマ帯域神経活動データの解析を行う。これにより、主要な精神神経疾患(統合失調症・双極性障害・うつ病・自閉スペクトラム症)について、興奮性・抑制性神経系の異常からみた病態を明らかにする。本研究は将来的に、異種性が問題視されている精神疾患の再定義・再分類につながり得る。
|
研究実績の概要 |
本年度は主にてんかんの脳波について検索を行った。 40Hzの頻度のクリック音に対する聴性定常反応(ASSR)のevoked powerおよびphase locking factor (PLF)はGABA抑制介在ニューロンの機能を反映し、induced powerは興奮性グルタミン酸作動性機能を反映していると考えられている。本年度はてんかん患者のASSRを健常者と比較し、個別化医療につながる可能性を模索した。 てんかん患者33名および健常者119名を対象としてevoked power、PLF、induced powerを算出し、更に、特徴のある症例に注目した。 健常者とてんかん患者という2群で比較した場合、evoked power (p=0.941)、PLF (p=0.606)、induced power (p=0.751)であり、有意差は認められなかった。 しかし、特徴のある症例の詳細を調べてみた。症例は右前頭~側頭、右頭頂の広範な皮質形成異常、異所性灰白質を認める症例であり、脳波ではF8、T4より突発波が頻発している。本症例において突発波の出現しているF8のASSRのevoked power、PLFは健常者、他のてんかん患者に比べ低い可能性があり、これは同部位のGABA 作動性の抑制性介在ニューロンの機能不全を示している可能性がある。またinduced powerは高い可能性があり、これは同部位の興奮性ニューロンの障害(NMDA 受容体の機能低下)を示している可能性がある。このように、ASSRを調べることで、てんかん原性の神経基盤が推測され、てんかんの個別化医療につながる可能性が示唆された。 今後は他の精神疾患のASSRを比較検討していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
聴性定常反応(ASSR)の研究は概ね順調である。 健常者のASSRデータは119名を解析でき、統合失調症、うつ病、双極性障害、てんかんの脳波を順調に収集できている。特徴のある症例を調べることもできた。この症例は、右前頭~側頭、右頭頂の広範な皮質形成異常、異所性灰白質を認める症例であり、脳波ではF8、T4より突発波が頻発している。本症例において突発波の出現しているF8のASSRのevoked power、PLFは健常者、他のてんかん患者に比べ低い可能性があり、これは同部位のGABA 作動性の抑制性介在ニューロンの機能不全を示している可能性がある。またinduced powerは高い可能性があり、これは同部位の興奮性ニューロンの障害(NMDA 受容体の機能低下)を示している可能性がある。このように、ASSRを調べることで、てんかん原性の神経基盤が推測され、てんかんの個別化医療につながる可能性が示唆された。 このように、ASSRの臨床応用まで視野に入れた解析を行っており、申請時の目標を達成しつつある。 また、代表者は九州大学大学院医学研究院精神病態医学の共同研究員として研究を続けているが、異動先の国立病院機構榊原病院でも臨床脳波計を使用して、ASSRを記録できるようにセッティングを行った。また、三重大学精神科とも連携を取り、三重大学でも臨床脳波計によるASSR測定が可能となった。 このように多施設へ展開を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は引き続きデータ収集を継続し、目標症例数を集める。解析では、ガンマ帯域神経活動の位相同期性及びパワー値を指標として、各疾患群及び健常者間での評価を行う。 解析の詳細は以下の通りで行う予定である。脳波の1試行は、刺激呈示の400ミリ秒前から900ミリ秒後までとし、±200μV以上の信号を含む試行は除外して解析を行う。得られた脳波波形にウェーブレット変換を適用し、時間周波数解析を行う。ASSRパワーは150回の試行を加算平均して得られる波形に対し、式を用いて算出する。標準化するため、ASSRパワーは平方根をとり、ASSR位相同期性PLFについて計算を行う。PLFは0(位相が全く同期していない活動)から1(位相が厳密に同期している活動)の値で表現される。パワーとPLF を計算するにあたり、我々は刺激の200ミリ秒前から100ミリ秒前をベースラインとして補正を行う。35-45Hzの周波数帯域にわたって、刺激開始より0-500ミリ秒におけるASSRパワー・PLFの平均値を計算し統計解析を行う。 さらに、疾患内での変化(初発の統合失調症での経時的変化など)にも注目することで、包括的に各精神疾患でのガンマ帯域活動の変化とその背景にある興奮系/抑制系バランスの異常について疾患特異性・共通性を検討する。診断についての感度・特異度を算出し、診断の補助マーカーとなりうるかも検討する。
|