研究課題/領域番号 |
22K07642
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
芝本 雄太 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教授 (20144719)
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研究分担者 |
西尾 禎治 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40415526)
村井 太郎 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (00747602)
岩田 宏満 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (40611588)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | FLASH治療 / 陽子線治療 / 超高線量率照射 / フラッシュ治療 |
研究開始時の研究の概要 |
FLASHは将来がん治療の主役となることが期待されているが、現時点では基礎実験のデータはまだ十分でない。研究代表者の施設にはFLASH治療が可能な陽子線治療装置が導入されており、開発メーカー(I社)と協力して、FLASH治療の基礎研究と近い将来臨床研究も進めるを計画した。これまでにまだデータがなかったFLASH治療のin vivoにおける効果と毒性について、通常線量率照射と比較検討する。線量測定の正確さや線量分布の均一性など物理的な問題についても解決を目指す。また基礎研究のデータを検討しつつ、FLASH治療の臨床試験計画を立てたい。可能ならば研究期間の終わりまでに、臨床研究に着手したい。
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研究実績の概要 |
1) 超大強度陽子線照射による細胞のFLASH効果を探求する研究のために、本年度は細胞への超大強度陽子線照射実験の実施に向けた物理照射条件の検討及び照射線量の物理検証を行った。住友重機械工業株式会社が新たに開発した1,000nAのビーム強度の陽子線照射を可能とする超電導サイクロトロン及び照射システムを用いて、細胞照射実験に必要な3cm×2cmほどの線量分布照射野形成条件の決定及び線量測定フィルムによる線量分布測定を実施した。ビーム強度は線量率換算で70-355Gy/sの範囲で、ビーム強度ごとの線量分布測定を行った。現在、取得した線量分布データの詳細解析を実施中である。 2) 陽子線ブロードビームを使用したFLASH治療の基礎研究については、培養細胞、鶏卵、猩々蝿を用いた基礎研究を開始した。培養腫瘍細胞においては、FLASH照射と通常線量率照射を施行後、コロニー形成試験によって細胞生存率を比較したが、FLASH照射による殺細胞効果の減弱は認められなかった。したがってFLASHによって抗腫瘍効果が減弱しない可能性が示唆された。鶏卵においては、通常線量率照射およびFLASH照射後の雛の成長を観察したが、FLASH照射の方が成長抑制が弱く、障害の程度が軽減され得ることが示唆された。猩々蝿においては、生理的状態においてFLASHビームによる照射実験が可能であることを確認した。 3) 研究代表者施設におけるスキャニング陽子線ビームを用いたFLASH治療については、基礎研究の計画をメーカーと詰めている。 4) FLASH治療に関する最新の文献を収集し、早期乳癌の根治的治療におけるFLASH治療の役割を展望するレビュー論文を発表した。 5) 近い将来、FLASH照射の臨床試験に進む際の試験プロトコールの検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
物理的検討の予備的実験を開始し、ブロードビーム陽子線照射では生物実験を遂行できているものの、研究代表者の施設では、スキャニング陽子線ビームを用いたFLASH照射実験に関してメーカーと実際の照射方法の詳細について検討・議論している段階である。FLASH治療の研究については、メーカーサイドが技術を提供できないと遂行できないためこのような経過であるが、物理学的な線量精度を確証する研究の方法はほぼ確立できたので、スキャニング照射装置によるFLASH照射が可能となり次第、研究代表者の施設でも開始する予定である。一方、住友重機械工業株式会社の装置によるスキャニングFLASH照射の実験計画は進めており、培養細胞実験を含めて2023年度中には開始できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ブロードビーム陽子線照射においては、引き続き鶏卵と猩々蝿を用いて、特に正常組織防護効果の観点からFLASH治療効果の検討を行う。スキャニング陽子線ビームによるFLASH照射の検討については、さらに物理線量の評価に関する基礎的検討を行い、物理的精度に関して結論を出したい。その後に培養細胞を用いて生物効果を確認するとともに、マウス正常細胞および腫瘍を用いた実験を検討していく。またスキャニングFLASH治療の臨床研究に関しては、世界的規模での臨床研究の計画が進められており、プルトコール作成などに参画していく予定である。
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