研究課題/領域番号 |
22K07668
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松瀬 美智子 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (30533905)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 甲状腺癌 / 放射性ヨウ素 / TERT / 放射性ヨウ素治療 |
研究開始時の研究の概要 |
甲状腺乳頭癌(PTC)の多くは治療により良好な予後が得られるものの、およそ10%の症例に再発・転移を来たし、その後の放射性ヨウ素(RAI)治療にも抵抗性となる悪性度の高いものが存在するが、耐性を獲得する分子機構は未解明である。 本研究ではPTC検体を用いて、関連する遺伝子変異とヨウ素の取り込み、治療効果との関連を詳細に検討し、RAI治療抵抗性のメカニズムがヨウ素取り込み不良によるものなのか、放射線耐性によるものなのか、症例によって異なるのか、等を明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度はまず適切な症例を選別し、RAI治療反応症例と、抵抗性症例の収集を開始した。長崎大学病院及び長崎医療センターより検体の提供を受けた。 日本核医学会の指針によると、RAI治療抵抗性は以下のように定義される。甲状腺全摘後の患者で、1-2週間の厳密なヨウ素制限を行い、TSH値が十分に上昇した状態で放射性ヨウ素I-131が投与され、かつ、下記のいずれかに該当する場合。 (1)全身シンチグラムで放射性ヨウ素の集積が全く認められないか、極めて淡い集積しか示さない病変が存在する。 (2)放射性ヨウ素の集積が良好であるにも関わらず、3-4回のRAI治療後に増大あるいは増加を示す病変が存在する。 これに従い、RAI治療抵抗性症例を抽出した。今年度は(1)(2)に適合する症例と、コントロールとしての治療反応症例を合計26症例収集した。甲状腺全摘後に残存する正常甲状腺濾胞細胞を除去する目的でのアブレーションやアジュバント症例は除外し、転移病巣・再発腫瘍に対する治療を対象とした。TERT-p変異は年齢と強い相関があり、高齢者で陽性となる症例が多いため、年齢を一致させた症例を抽出した。 抽出した症例の手術検体(凍結組織又はFFPE検体)より、それぞれ腫瘍部分と対応する正常部分のDNA・RNAを抽出した。FFPE検体はAllPrep DNA/RNA FFPE(Qiagen)を用い、凍結組織はISOGENを用いた。TERT-p変異の検出には核酸蛍光プローブとdroplet digital PCRを組み合わせ、高感度にTERT-p変異を検出できる方法を用いる予定であり、これまでのところ、解析に十分な量の核酸を抽出することができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
適切な症例を選別し、検体を収集することができている。
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今後の研究の推進方策 |
RAI治療に対する抵抗性とTERT-p変異との関連 引き続き症例の選別・収集を行い、RAI治療反応症例と、抵抗性症例をそれぞれ40例ずつ収集し、TERT-p変異とヨウ素の取り込み、治療効果との関連を詳細に検討する予定である。 RAI治療抵抗性メカニズムの解明 前述したRAI治療抵抗性の定義によると、RAI治療抵抗性のメカニズムとして、(1)はヨウ素取り込みに関連する遺伝子の発現低下や機能異常によるものと考えられ、(2)は甲状腺癌細胞の放射線耐性によるものと考えられる。以下の検討によって、RAI治療抵抗性の分子メカニズムを明らかにする。 (1)甲状腺細胞にヨウ素が取り込まれる際、ヨードトランスポーター(sodium iodide symporter: NIS)を使って細胞内に取り込まれることが分かっている。ヨウ素取り込みに関連する遺伝子の発現低下については、臨床サンプルを用いて、NISの発現量と、放射性ヨウ素の集積量、TERT-p変異との関連について検討する。(ヒト甲状腺細胞株は正常も含め、すでにNISの発現を失っており、細胞株での検討は難しいことがわかっている。) (2)甲状腺癌細胞の放射線感受性については、甲状腺癌細胞株においてsiRNAによるTERTノックダウン、もしくはCRISPR/Cas9等でTERT-p変異を導入(またはwild-typeへ置換)し、放射線感受性の変化を検討する。TERTは、変異アレルからのみ発現することが報告されているため、変異アレルのコアプロモーター領域をCRISPR/Cas9でノックアウトすることで、TERTの発現をなくすという方法も検討する。これらの細胞に放射線を照射し、放射線感受性、DNA損傷応答分子の動態、DNA修復能(g-H2AX)などをコロニー形成アッセイ、ウエスタンブロット、蛍光免疫染色を用いて比較検討する。
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