研究課題/領域番号 |
22K07682
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
多胡 哲郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (50780649)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 放射性医薬品 / 核医学 / PET / HDAC6 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では脳内のヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6)を検出するための、陽電子断層撮像(PET)用イメージングプローブの開発を目的とする。HDAC6は脳内におけるタンパク質病変の蓄積を特徴とする神経変性疾患との関連が示唆されており、従ってHDAC6をイメージングすることが出来れば、HDAC6を標的とした神経変性疾患の治療薬開発や鑑別診断に応用できる可能性がある。
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研究実績の概要 |
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)ファミリーのサブタイプの一つであるHDAC6は、非ヒストン性タンパク質の脱アセチル化や、ユビキチン化されたタンパク質の輸送などの機能を有しており、脳内におけるタンパク質病変の形成を特徴とする神経変性疾患の治療標的として注目を集めている。一方でHDAC6の脳内における発現の分布や、疾患の発症に伴う発現量の変化などについては不明な点が多い。故に陽電子断層撮像法(PET)によりHDAC6を非侵襲的に検出、定量することが出来れば、HDAC6に着目した神経変性疾患の研究や治療薬開発が促進されると期待できる。我々は脳内のHDAC6をイメージングするためのPET用プローブの開発に取り組んでおり、有望なプローブとして18F-標識テトラヒドロキノリン誘導体を報告した。本研究では、本化合物をリードとした構造最適化を実施し、臨床応用の期待できるより高性能なHDAC6プローブの開発を行う。2022年度は化合物の親水性向上を目的に設計したピリジン誘導体について、標識合成と標識体を使用した生物学的評価を実施した。ピリジン体の18F-標識合成は、ボロン酸ピナコールエステル前駆体と銅触媒を使用した18F-化反応とヒドロキサム酸化反応による2段階反応により達成した。酵素活性阻害法により測定したピリジン誘導体のHDAC6結合親和性はIC50=6 nMであった。標識体を使用したマウスにおける体内分布試験の結果から、ピリジン誘導体の血中滞留性は比較的低く、構造変換の影響が反映されたと考えられた。一方で、血中放射能に対する脳内放射能も大きく低下しており、血液脳関門透過性の低下が示唆された。マウスにおける代謝解析試験の結果からは、ピリジン体は血漿中で速やかに代謝されていた。以上の結果から、ピリジン誘導体は脳内HDAC6プローブとしては不適であると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PET用HDAC6イメージングプローブの開発を目的とした本研究において、本年度の目標は新たに設計したHDAC6プローブの標識合成法の確立であった。ピリジン誘導体はリード化合物と同様な標識合成法を採用することで、標識可能であった。放射化学的収率は約9%と低い値であったが、生物学的評価を行うには十分な収量であった。またリード化合物の製剤化法としてエバポレータ法を採用していたが、ピリジン体の合成において固相抽出による製剤化法を確立できた。標識体を使用した生物学的評価により、HDAC6プローブとしての性能が明らかとなった。以上の結果から、本研究は現在までにおおむね順調に進展していると結論付けた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、新たに開発したピリジン誘導体は血液脳関門透過性に乏しく、脳内HDAC6イメージングプローブとしてはリード化合物の方が有望であると結論付けられた。今後の研究では、リード化合物の更なる生物学的評価を実施し、その臨床的有用性を明らかにする。具体的には、構造の異なるHDAC6イメージングプローブとの比較評価や、細胞を利用した結合選択性評価を実施する。必要に応じて得られた知見を活用し、更なる構造最適化によるプローブの改良が可能か探索する。
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