研究課題
基盤研究(C)
腫瘍の周りにある正常組織への線量限度によって、腫瘍への投与線量を妥協しなければならない症例や炭素線治療を断念せざるを得ない症例がある。正常組織への線量を更に低減させる照射技術の開発が喫緊の課題となっている。短時間に大線量を照射する超高線量率照射場ではFLASH効果が起こり正常組織への障害が減らせる。電子線などではFLASH効果が確認されているが、炭素線ではFLASH効果が生じるのか明らかになっていない。本研究の目的は、炭素線を用いた超高線量率照射法の確立と炭素線においてFLASH効果が存在するかを確認することである。本研究によりFLASH炭素線治療というこれまでなかった新治療法の開拓に繋がる。
本研究の目的は、炭素線を用いた超高線量率照射法の確立と炭素線においてFLASH効果が存在するかを確認することである。本研究では炭素線におけるFLASH効果を評価するための基盤となる研究を行った。研究期間内には以下のことを行った【①炭素線を用いた超高線量率照射装置の開発、②炭素線におけるFLASH効果の確認】。本研究成果に関して国際学会発表ではBest E-Poster Awardを受賞した。また学術論文の発表や特許出願を行った。令和4年度は既存の炭素線照射装置の機能として備わっていない、炭素線を超高線量率で標的に正確に照射する実験系の確立を行った。以下の2段階(加速器系、照射系)に分けて研究を進めた。(ⅰ)超高線量率照射モードの作成加速器運転パラメータの調整を行い、既存の炭素線照射装置にて超高線量率照射モード(monochromatic beamモード)の開発を行い、複数のエネルギーにおいて超高線量率照射をできるようにした。(ⅱ)超高線量率照射場の線量測定法と照射野形成法の開発超高線量率照射では制御上の理由から装置既存の計器類が使用できない。超高線量率照射に対応するモニタ線量計、照射野形成法、線量測定法の開発を行った。モニタ線量計は電離量を調整するために気圧が調整できる密封型を採用した。照射野形成にはスキャニング法を用いた。線量測定には電離箱型線量計を使用し、照射野の形状や大きさを評価した。開発したモニタ線量計を用いることで、照射量とスポット移動を制御することが可能になった。次に控える生物実験に必要な照射野サイズを満たすことを確認した。また低線量から高線量に渡って線量を調整した。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画通りに進んでいる。
研究実施計画通り、炭素線におけるFLASH効果の確認に向けた取り組みを行う。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Anticancer Research
巻: 43 号: 2 ページ: 581-589
10.21873/anticanres.16194
http://www.radonc.med.osaka-u.ac.jp/fc_research.html