研究課題/領域番号 |
22K07709
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 滋賀県立総合病院(研究所) |
研究代表者 |
加川 信也 滋賀県立総合病院(研究所), 画像研究部門, 主任研究員 (10393191)
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研究分担者 |
奥山 智緒 滋賀県立総合病院(研究所), 画像研究部門, 上席専門研究員 (40347464)
東 達也 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 分子イメージング診断治療研究部, 部長 (50324629)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | D-アミノ酸 / メチオニン / PET / 標識合成 / 感染症 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、D-アミノ酸は、細菌による感染症等において注目されており、D-[11C]Metを用いたアミノ酸PETイメージングは、脳腫瘍だけでなく、細菌感染症診断への臨床応用への発展が期待される。本研究は、部品数や準備作業を簡略化したうえに高収率で不純物の少ない安全なC-11標識製剤の製造が可能な新規合成法を開発し、D-アミノ酸PET製剤:D-[11C]Metの合成に活用して、腫瘍診断や細菌感染症の診断を普及させることを目的とする。
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研究実績の概要 |
生体内の蛋白質を構成するL-アミノ酸の光学異性体であるD-アミノ酸が近年様々な分野で注目されており、D-アミノ酸PET製剤であるD-[methyl-11C]methionine (D-[11C]Met)は、腫瘍診断だけでなく細菌感染症の評価に対しての有用性が期待される。本研究では、D-[11C]Metの標識合成を新規に開発した迅速簡便法により行い、部品数や準備作業を大幅に簡略化したうえに高収率で不純物の少ない安全な合成法を確立する。さらに、ヒトでの臨床を行うために自動合成装置を用いて安全性を確認し、D-アミノ酸PETイメージングの普及拡大を目指す。 今回、製剤化部の工程を効率的に行うため、別のアミノ酸であるα-[N-methyl-11C]-methylamino isobutyric acid ([11C]MeAIB)に着目して、使い捨てのイオン交換カラムを用いた固相抽出による合成法を確認した。HPLCによる分離精製を省略し、使い捨てのイオン交換カラムを用いた[11C]MeAIBの固相抽出法による合成は、放射能: 8.9 ± 1.0 GBq、合成時間: 18.7 ± 0.1 min、放射化学的収率: 27.4 ± 3.1%、放射化学的純度: > 99.9%であり、合成時間短縮及び合成収量増加と良好な結果であった。続いて、これらの条件を参考にしてL-[methyl-11C]methionine (L-[11C]Met)の標識及び製剤化部工程の開発を行った。L-[11C]METの合成は、放射能15 GBq以上、合成時間15分以内、L体の異性体混入量は1%以下であった。今回開発した[11C]METの合成法は、使い捨てカラムを用いて分離精製が可能であり、今後の臨床での有用性が非常に期待される方法であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、製剤化部の工程を効率的に行うため、別のアミノ酸であるα-[N-methyl-11C]-methylamino isobutyric acid ([11C]MeAIB)に着目して、使い捨てのイオン交換カラムを用いた固相抽出による合成法を確認した。[11C]MeAIBの標識合成は、JFEエンジニアリング社製のカセット式多目的合成装置を用い、前駆体であるα-Aminoisobutyric acid methyl ester hydrochlorideを用いて[11C]CH3OTfによりN-メチル化反応を行った後、水酸化ナトリウムにて加水分解を行い[11C]標識化合物を得た。得られた標識化合物は、HPLC分離精製を省略し、使い捨てのイオン交換カラムを用いた固相抽出による合成法で検討した。その結果、放射能: 8.9 ± 1.0 GBq、合成時間: 18.7 ± 0.1 min、放射化学的収率: 27.4 ± 3.1%、放射化学的純度: > 99.9%であり、合成時間短縮及び合成収量増加と良好な結果であった。 続いて、これらの条件を参考にしてL-[methyl-11C]methionine (L-[11C]Met)の標識及び製剤化部工程の開発を行った。前駆体の量や種類、標識法、精製法等の様々な条件を考慮し、効率的で信頼性の高い標識合成法を確立した。L-[11C]METの合成は、放射能15 GBq以上、合成時間15分以内、D体の異性体混入量は1%以下であった(D体の簡易的な合成は確認済み)。
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今後の研究の推進方策 |
L体のmethionineの合成は成功しているため、今後はD体の標識合成条件の検討を行う(簡易的な合成は確認済み)。前駆体の量や種類、標識法、精製法等の様々な条件を考慮し、効率的で信頼性の高い標識合成法を確立する。続いて、新たに開発する[11C]CO2回収法(使い捨てのスパイラルチューブ等)により、カセット式自動合成装置に最適で、作業が大幅に簡略化されて1日に複数回の薬剤の合成を可能とするシステムを構築する。 本研究で開発した新規合成法によるシステムについて、薬剤委員会及び倫理委員会で承認を得るような安全性試験を行い、国内外の合成装置メーカーに新たな製造技術や製品開発に結び付けるような合成方法を開発する。さらに、 D-アミノ酸PETイメージングを目的として、D-[11C]Met-PETを用いた画像評価の有用性を検討するため、腫瘍及び感染症モデルマウス等を用いた評価を行い、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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