研究課題/領域番号 |
22K07725
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
小橋川 新子 (菓子野新子) 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (70637628)
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研究分担者 |
菓子野 元郎 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (00437287)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ミトコンドリア断片化 / 放射線 / Drp1 / mtDNA / SASP因子 / VDAC / オートファジー / ミトコンドリア形態 / SASP / 細胞老化 / 分泌因子 / 炎症 / ミトコンドリアDNA / 遅発性活性酸素種 / ミトコンドリア |
研究開始時の研究の概要 |
放射線による癌治療において、照射に伴う炎症の軽減が課題である。そのためには炎症性物質の発現機構の解明が必要となる。申請者は放射線によるミトコンドリア断片化がミトコンドリア機能不全を引き起こすことを明らかにしてきた。本申請で提案する研究の目的は「放射線によるミトコンドリア断片化メカニズムの解明」そして「ミトコンドリアからのシグナルは老化関連分泌因子(SASP因子)の誘導に関与するのか明らかにする」ことである。本研究は正常細胞に対する副反応を軽減することを目指し、それによって線量を高める工夫ができるのではないかと考えている。また、ミトコンドリアシグナルの役割を調べる新たな研究展開を創り出したい。
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研究実績の概要 |
放射線による癌治療において、照射に伴う炎症の軽減が課題である。そのためには炎症性物質の発現機構の解明が必要となる。本研究は「放射線による炎症を軽減する手法の確立」を目指すものである。これまでに放射線によるミトコンドリア断片化がミトコンドリア機能不全を引き起こすことを明らかにしてきた。本研究の目的は「放射線によるミトコンドリア断片化メカニズムの解明」そして「ミトコンドリアからのシグナルは老化関連分泌因子(SASP因子)の誘導に関与するのか明らかにする」ことである。本研究は正常細胞に対する副反応を軽減することに着目し、それによって線量を高める工夫ができるのではないかと考えている。また、放射線生物学においてもミトコンドリアシグナルの役割を調べる新たな研究展開を創り出すことになると考えている。 放射線による癌治療においては、正常組織での皮膚の炎症が副反応としてよく知られており、放射線皮膚炎の予防に関するトライアル試験が必要とされている。放射線による癌治療は、副反応を制御することにより線量を高く設定でき、治療効果を高めることが期待できる。故に放射線による炎症誘発機構を解明し、炎症反応を制御・軽減することは癌治療においての課題である。本研究の学術的問いは「放射線による炎症を軽減する手法の確立」である。これまでの放射線治療には「局所照射」など、物理化学の成果が副反応の軽減に役立てられてきた背景があり、放射線生物学を活かした副反応の制御にはまだまだ改善の余地が残されている。本研究では、放射線による炎症性サイトカインの誘導機構について複数のステップを視野に入れ、ミトコンドリアシグナルが関与するのか明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではまず、放射線照射後のミトコンドリア断片化と、SASP因子の発現との関連性を調べた。Drp1をshRNAトランスフェクションし、放射線によるミトコンドリアの断片化を抑制した細胞を作成した。対照コントロールとしてshEGFP発現細胞を用いた。6GyのX線を照射し、1日後から3日後までの細胞で、自然免疫応答の一つである cGAS-STING細胞質DNAセンシング機構の活性化と、ミトコンドリア断片化について調べた。その結果、X線照射2日後にshEGFP細胞では断片化したミトコンドリアにcGASが局在している様子が観察された。対照的にshDrp1を発現し、ミトコンドリアのフラグメント化を抑制した細胞においてはミトコンドリアへのcGASの集積が照射後に観察されなかった。近年、ミトコンドリアDNAの細胞質への露出によるcGASの活性化が報告されてきており、そのメカニズムとして、VDAC(Voltage-dependent Anion-channel)がオリゴマーを形成することが報告されている(Exp. Mol. Med., 55, 510-519, 2023)。そこで次にVDACのオリゴマー形成とミトコンドリア断片化との関連を調べることにした。VDACの蛍光免疫染色を行い、オリゴマーが形成されれば、その部位の蛍光強度が高くなり、フォーカス状に観察されると考えられる。現在までにVDAC抗体での蛍光免疫染色を試した。今後、放射線照射に加え、Drp1ノックダウン細胞とコントロール細胞とのmtDNAの露出、VDACのオリゴマー形成について比較検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、放射線照射後、shDrp1細胞ではcGASのミトコンドリアへの局在が抑制されていたことから、mtDNAの細胞質への露出はミトコンドリアの断片化が関連していることが考えられる。そこで、VDACのオリゴマー形成とミトコンドリア断片化とに関連があるのか調べてみたい。ミトコンドリアの断片化はダイナミックにミトコンドリア膜の大規模な変化をもたらすが、この動的変化とミトコンドリア膜に局在しているVDACの動態とはよくわかっていない。これまで、ミトコンドリア断片はミトコンドリアの膜透過性を亢進し、アポトーシスを亢進させることがわかっているが、どのようにして膜透過性が亢進されているのか、について迫れる研究を展開したい。つぎに、放射線によるDrp1活性化機構を調べるため、Drp1ノックアウト細胞にリン酸化部位の変異の入ったDrp1を導入し、放射線応答に変化があるのか検討を行う。また、これに加えて、放射線照射後のSASP因子の発現について合わせて検討を行う。MtDNAの細胞質への露出とミトコンドリアの断片化についてはノックダウン細胞のみではなく、Parkin、PINK1と関連したミトコンドリアのオートファジー経路の関与についても更なる検討を行う予定である。また、mtDNAを欠失しているRho細胞を用いてSASP因子の発現解析を行う。 これらのデータがそろい次第論文としてまとめ、順次投稿していく予定である。
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