研究課題/領域番号 |
22K07732
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
近藤 直哉 大阪医科薬科大学, 薬学部, 助教 (80756172)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | セラノスティクス / 共有結合 |
研究開始時の研究の概要 |
低分子化合物やペプチドを母体とした分子プローブは、ラジオセラノスティクスへの利用の期待が高まる一方、一般的に腫瘍への滞留性が低く、治療への応用に高い障壁を有する。本申請課題では、ペプチドを母体としたイメージングプローブについて、物性や全身動態への影響を最小限に腫瘍内滞留性向上が期待できる手法として、腫瘍特異的に発現する標的分子とプローブの共有結合形成を利用したプローブ開発を提案する。
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研究実績の概要 |
低分子化合物やペプチドを母体とした分子プローブは、ラジオセラノスティクスへの利用の期待が高まる一方、一般的に腫瘍への滞留性が低く、治療への応用に高い障壁を有する。本申請課題では、ペプチドを母体としたイメージングプローブについて、物性や全身動態への影響を最小限に腫瘍内滞留性向上が期待できる手法として、腫瘍特異的に発現する標的分子とプローブの共有結合形成を利用したプローブ開発を提案する。本手法は、簡潔な薬剤設計・合成が可能であり、タンパク質表面の求核性を利用するため汎用性が極めて高い。本研究では、合成した共有結合形成プローブについてRI標識体を用いたインビボでの精細な検討によりセラノスティクス用プローブとしての有効性を実証する。本研究で提案する手法の実現により、現状、治療への適用が困難なイメージングプローブのセラノスティクスへの利用やホウ素中性子捕捉療法、その他リガンドと標的タンパクとの相互作用を有する数多の薬剤について性能向上の可能性が拓かれる。 本年度は、共有結合を形成するがん細胞膜に特異的に発現するタンパク質の候補として、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CXCモチーフ型ケモカイン受容体4(CXCR4)等を設定し、それぞれのタンパク質のリガンドに共有結合性を付与するユニットを結合させる手法により、共有結合形成能を有する複数のリガンド合成に着手した。また、そのうちの2種のリガンドについて、標的タンパクとの共有結合形成能を有することを、インビトロ実験により明らかにした。 さらに、本研究成果を活用する治療法のひとつと設定しているホウ素中性子捕捉療法に関して、薬剤開発を並行して進め、有効な結果を得た。 以上の成果については、関連学会での発表や、学術誌への掲載により世間に公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共有結合を形成するがん細胞膜に特異的に発現するタンパク質の候補として、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CXCモチーフ型ケモカイン受容体4(CXCR4)、Integrin、ソマトスタチン受容体(somatostatin receptor:SSTR)を設定し、それぞれのタンパク質のリガンドに共有結合性を付与するユニットを結合させる手法により、共有結合形成能を有する複数のビオチン化リガンドを合成した。また、そのうちの2種について、対応する精製タンパク質と水溶液中で混合し、熱処理後に、ポリアクリルアミド電気泳動を行う事で、共有結合形成の有無やその至適条件について明らかにした。 また、本手法を利用可能な治療法の一つであるホウ素中性子捕捉療法用の薬剤開発を並行して進め、有望な化合物を見出した。 さらに共有結合形成によりリガンド-抗原結合後の薬剤の細胞内挙動が変化する可能性を念頭に、薬剤の挙動や細胞内局在を明らかにできる蛍光センサー開発についても着手し、従来のセンサーより性能が優れる有望なホウ素センサーを見出した。 以上の成果については、関連学会での発表や、学術誌への掲載により世間に公開した。 以上のように、共有結合形成によるセラノスティクス実現に向けて、基礎的な実験を既に終えており、本研究の進捗状況に関して、おおむね順調に進んでいると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の根幹であるリガンドとなるプローブと標的タンパク質との共有結合が既に基礎的に証明されたため、今後の研究推進の方策として、共有結合形成リガンドへの蛍光色素導入による蛍光プローブ、放射標識による放射プローブ、ホウ素結合による中性子捕捉療法用プローブ、など実際の利用を見据えた修飾を行った薬剤開発を進める。 蛍光プローブを用いることで、共有結合性リガンドの細胞内輸送への影響等、治療に重要な性質についての詳細評価が期待できる。ホウ素薬剤に関しては、これまでに開発した蛍光センサー等を適宜組み合わせて実験を行う。 放射標識プローブに関しては、インビボへの展開を考え、例えばキレート試薬であるDOTAを導入した共有結合性リガンドに111-インジウムを用いて標識した放射プローブを担癌モデル動物に投与する予定をしている。 インビトロ、インビボの検討の結果により、細胞中や生体内での共有結合形成の成否を総合的に判断し、薬剤設計に適宜フィードバックを行う事で、優れた共有結合形成可能なプローブ開発を進めていく予定である。
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