研究課題/領域番号 |
22K07831
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
佐久間 啓 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, プロジェクトリーダー (50425683)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | バイオレポジトリ / 抗神経抗体 / MOG抗体 / 自己免疫性脳炎 / NMDA受容体脳炎 / MOG抗体関連疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
自己免疫性脳炎の治療水準向上のために、抗神経抗体同定方法の確立、抗体産生細胞の分化と浸潤の機序解明、抗神経抗体による神経障害の機序解明という三つの課題を設定し、人対象臨床研究と病態解明研究を行う。多施設共同研究により集積した臨床試料を使用し、cell-based assayにより抗神経抗体を同定するとともに測定法を最適化する。またB細胞関連液性因子の網羅的解析により、抗神経抗体産生の背景となる免疫学的異常を明らかにする。さらに同定された抗神経抗体を培養神経細胞やマウスに投与してシナプスやマウス脳病理・行動に及ぼす影響を観察し、抗体が神経症状や神経学的後遺症をもたらす機序を解明する。
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研究実績の概要 |
多機関共同研究による症例・試料の収集を継続し、新たにレジストリに98症例、バイオレポジトリに214試料を登録した。抗神経抗体の測定方法として、cell-based assay法に加えてマウス脳切片を用いたtissue-based assay法のプロトコールを確立し、この方法により抗神経抗体の幅広いスクリーニングか可能となった。 レジストリのデータを用いて、小児のけいれん性疾患において自己抗体陽性を予測する臨床スコアの作成を試みた。まず成人のてんかんで抗体陽性を予測するAPEスコアの小児における有用性を検討したところ、感度は十分だが特異度が約20%と極めて低いことが明らかになった。そこで小児用に改変したpaediatric antibody prevalence in seizure (PAPS)スコアを新たに作成し、PAPSスコアがAPEスコアに比べてAUC解析により有意に優れていることを証明した。PAPSスコアは自己免疫機序が疑われるけいれん性疾患に対する治療方針を決定する際に有用なツールとなると期待される。 また小児の炎症性脱髄性疾患であるMOG抗体関連疾患で陽性となるMOG抗体の病原性に関する解析を行った。HEK293細胞にヒトMOGタンパク質を発現させ、補体の存在下または非存在下でヒト血清中のMOG抗体と反応させた。86人の患者と11人の健常人の血清を使用し、MOG抗体価、IgGサブクラス、細胞傷害能を解析した。MOG陽性血清はMOG発現細胞に細胞死を引き起こし、細胞毒性作用は血清を熱不活性化すると消失した。十分な細胞毒性作用にはMOG IgGと添加された補体が必要であった。MOG自己抗体は組織学的に補体と共局在し、MOG IgGと補体因子からなる膜攻撃複合体を形成していた。このことから、この自己抗体が補体を介した細胞傷害性を活性化したことが示された。MOGADにおける補体の役割を明らかにするためには、より多くの患者を対象としたさらなる研究が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例レジストリおよびバイオレポジトリへの症例登録は順調に進んでおり、これらのデータと試料の解析による成果は2023年度中に二つの論文として既に刊行された。
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今後の研究の推進方策 |
現在はGFAP抗体やGABA-A受容体抗体等の新たな自己抗体の解析にも取り組み始めており、また小児のNMDAR脳炎のデータを用いた新たな研究の成果を2024年度中に報告できる予定である。
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