研究課題/領域番号 |
22K07846
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
三木 崇範 香川大学, 医学部, 教授 (30274294)
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研究分担者 |
太田 健一 香川大学, 医学部, 助教 (50403720)
鈴木 辰吾 香川大学, 医学部, 准教授 (50451430)
横山 俊史 神戸大学, 農学研究科, 助教 (10380156)
割田 克彦 鳥取大学, 農学部, 教授 (40452669)
石川 一朗 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (90870098)
金西 賢治 香川大学, 医学部, 教授 (10263906)
日下 隆 香川大学, 医学部, 教授 (50274288)
大給 日香里 香川大学, 医学部, 助教 (50909611)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 母体炎症 / 脳腸相関 / 炎症性サイトカイン / 脳内炎症 / 母体感染 / 慢性炎症 / 代謝調節 / 脳-末梢臓器連関 / メタボリックシンドローム |
研究開始時の研究の概要 |
妊娠中の母体感染が児の脳発達及びエネルギー代謝に与える影響を明らかにするため、妊娠炎症曝露モデルを用いて影響を受ける児脳領域と、それによって変動する行動異常を明らかにする。特に視床下部と自律神経系には特別に焦点を当て、妊娠中の炎症による視床下部への影響と末梢組織(肝・膵・腸管・脂肪組織など)の変化を網羅的に解析し詳細に評価する。これにより、妊娠中の慢性的母体感染が如何なる機序(例えば、神経、内分泌・生理活性物質など)で、脳-末梢臓器の連関を破綻させるのか、そしてそれは将来の肥満を基盤とする生活習慣病の発症に如何に影響するのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では妊娠中の母体感染が児の脳発達に与える影響について明らかにするため、妊娠炎症曝露モデルを用いて脳の発達異常と末梢臓器の連関に着目し研究を行った。2022年度は、妊娠後期に着目して母体炎症そのものが脳発達に与える影響に関しての研究に着手した。まず最初に妊娠後期(妊娠18、19日齢)にグラム陰性菌の細胞壁を構成し様々な毒性を示すリポポリサッカライド(LPS)を投与する上で、大量投与による母体自体の疼痛ではなく炎症そのものが児に及ぼす影響を調べる事を目標に妊娠動物の行動に殆ど影響が無く、出産数及びその後の養育にも影響の無い投与量を検討した。その結果、65 ug/kg b.w.の腹腔内投与が適切である事が明らかとなった。具体的には投与に起因した流産などは起きることなく、母体も投与中及び授乳中の体重減少は無く出生数もコントロール群と変わらなかった。しかしこの投与量では1時間後に炎症性サイトカインの一つtumor necrosis factor-αがコントロール群(溶媒であるPBSを腹腔内投与した群)の10倍以上に上昇すること、更に脳内のミクログリアの形態解析では投与から3時間後をピークに突起の長さや分岐が減少している事が確認され、少なくとも母体において末梢組織の炎症が速やかに脳内へと移行し、脳内炎症を引き起こしていることが確認できた。 2023年度は、この投与量を用いて児の感覚野の神経回路網形成がなされる初期の段階での母体炎症が引き起こす児の脳発達への影響を明らかにし、その原因として末梢臓器、特に脳腸相関に着目して解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まだ報告の少ない妊娠後期の炎症そのものの影響に焦点を当てる上で、出産数への影響やその後の母獣の育児行動に影響を与えないLPS濃度の十分な検討が必要であった。そのためいくつかのLPS濃度を検討し適切な投与量にたどり着くまでに時間がかかった。しかしながら、その検討と並行して次年度以降に行う仔の解析に向けた予備実験も行っている(脳内のミクログリア形態の解析手法の確立、今後の検討に使う興奮/抑制性ニューロンマーカーの染色条件の検討、複数の血中サイトカインを同時かつ網羅的に解析する手法の検討、腸管バリア関連遺伝子の解析の準備及び糞便からのgDNA抽出/腸内細菌叢の解析方法の確立など)。そのため、成果自体はやや遅れているが次年度以降のスムーズな脳腸相関の解析に移行できる準備状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2022年度に決定した投与量を用いてまず児の脳発達への影響を調べる。特に本研究では児の感覚野の神経回路網形成の時期に母体内で炎症に晒されるモデルである事から、これまでの報告及び我々持つ知見から初期の感覚野での回路網形成の異常が出生後のその他の様々な脳領域の神経回路バランスを連鎖的に崩壊させて、最終的に前頭葉に大きな影響を与える事が予測される。そこで、ヒトの思春期頃に相当し前頭葉の神経回路網形成の臨界期である生後5週齢で前頭葉を中心とした様々な脳領域の興奮/抑制ニューロン及びシナプスの解析を行う。それと同時に妊娠中の炎症そのものが一過性に児に影響を与えたのか、それとも児の持続的な脳内/末梢環境に影響を与え続けているのかを検討するために生後の脳内炎症及び児の腸内環境(腸管バリア機能と腸内細菌叢)を調べ、それらを仲介する因子として血中の炎症性サイトカインをTNFαも含めて複数解析する。
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