研究課題/領域番号 |
22K07854
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
|
研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
新井田 要 金沢医科大学, 総合医学研究所, 教授 (40293344)
|
研究分担者 |
研 澄仁 金沢医科大学, 総合医学研究所, 講師 (40709391)
浦 大樹 金沢医科大学, 総合医学研究所, 講師 (90624958)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 結節性硬化症 / 遺伝子型・表現型相関 / モザイク変異 / ヒト末梢血由来iPS細胞 / ハプロ不全 / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
結節性硬化症(TSC)に対する分子標的薬による超早期治療介入を実現するためには,中枢神経症状の重症化を正確に予測することが必要である.本研究では,国内の2大TSCレジストリを用いて背景が均一な重症群および軽症群の症例をリクルートし,探索的なオミックス解析により比較することで中枢神経症状重症化に関連するバイオマーカーを同定する.また得られたバイオマーカーに関してTSC患者における大規模測定を行い,重症度予測の妥当性の検討とカットオフ値の設定を行う.
|
研究実績の概要 |
今年度は、結節性硬化症レジストリより解析特異点となり得る患者を検索し、TSC2のナンセンスバリアントをモザイクとして持つ患者に注目した。この患者の末梢血より、正常iPS細胞と、TSC2変異をヘテロ接合性に有するiPS細胞の双方を樹立した(Ura et al. Establishment of human induced pluripotent stem cell lines, KMUGMCi006, from a patient with Tuberous sclerosis complex (TSC) bearing mosaic nonsense mutations in the Tuberous sclerosis complex 2 (TSC2) gene. Stem Cell Res. 2023;70:103129.)。2023年度先進ゲノム支援を受け、これらのiPS細胞を用いたRNA-Seqによるトランスクリプトーム解析を実施した。この結果、TSC2バリアントを持つ細胞では野生型のみの細胞と比較して、ある特定の遺伝子群Xが有意に発現上昇しており、さらにその発現量の差は神経系に分化した際により顕著となることが判明した。遺伝子群Xは本研究の目的であるバイオマーカーの最有力候補と言え、今後さらなる解析を行う予定である。今年度はまた、TSC2遺伝子のmRNAスプライシングバリアントに関する詳細解析をロングリードシーケンスを用いたTargeted RNA-Seqで実施した。これによりDNAレベルのスプライシングバリアントの影響は、全てのmRNAバリアントで等しく生じていることが実証され、表現型に与えるスプライシングの揺らぎの影響は少ないことが推察された(Ura et al. Target-capture full-length double-stranded cDNA long-read sequencing through Nanopore revealed novel intron retention in patient with tuberous sclerosis complex. Front Genet. 2023;14:1256064.)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内における結節性硬化症患者の2つの大規模レジストリ(金沢医科大学希少疾患遺伝子診断支援事業、日本結節性硬化症学会レジストリシステム JTSRIM)を用いて、本研究の課題である結節性硬化症における「神経・精神症状重症度予測バイオマーカーの同定」を行うための解析特異点患者を検討した。この結果、TSC2のナンセンスバリアントを体細胞モザイクとして持つ患者が抽出され、本患者の末梢血よりTSC2バリアントを含むiPS細胞と、野生型TSC2のみのiPS細胞を同時に樹立することが出来た。この2つの細胞はTSC2ナンセンスバリアント(ヘテロ接合)を除いてゲノム配列は完全に一致しており、2つを比較することでTSC2バリアントの影響をバックグラウンドノイズなしに解析することが可能となる。2023年度先進ゲノム支援を受け、これらの細胞のトランスクリプトーム解析を施行し、TSC2バリアントを持つ細胞では、遺伝子群Xの発現が特に神経分化誘導において10倍以上に上昇することを突き止めた。一方でTSC1/2遺伝子のスプライシングバリアントの構成には2つの細胞で変化はなく、別のTSC2スプライシングバリアントに対するロングリードRNA-Seqの検討でも、スプライシングバリアントの変化の影響は少ないことが示された。目的とするバイオマーカーとしては、スプライシング多型の個体差よりも、遺伝子群Xの発現多型と考える方が妥当と思われた。遺伝子群XにはDNAレベルで発現量を規定する多型が存在する可能性があり、次年度はこれを検討する。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、目的とするバイオマーカの最有力候補として遺伝子群Xを得ることが出来た。今後はこれらの遺伝子群の多型とmRNA発現量、結節性硬化症の表現型との相関を検討していく。金沢医科大学希少疾患遺伝子診断支援事業レジストリで保管されている、結節性硬化症患者の核酸試料(末梢血DNA,RNA)約300検体を用いて、遺伝子群Xのゲノム領域をLong-PCR based NGSで解析し、バリアントを抽出する。またこれらの遺伝子のmRNA発現量をqRT-PCRで測定する。同一患者の臨床症状はデータベース化されており、これとバリアント、発現量を比較解析することで、表現型の重症度に影響を与えているバリアントを同定する。また複数のバリアントが影響を与えている場合には、その相乗効果に関しても解析を加える。このようにして最終的に得られた表現型バイオマーカーを用いて、新規の結節性硬化症患者を解析し、重症度予測の精度を検討する。
|