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R3HDM1欠損症の発症機序として見出した遺伝子・マイクロRNA不均衡仮説の検証

研究課題

研究課題/領域番号 22K07860
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
研究機関愛知県医療療育総合センター発達障害研究所

研究代表者

福士 大輔  愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 遺伝子医療研究部, 主任研究員 (90397159)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワードR3HDM1 / miR-128 / 不均衡な発現 / 神経突起 / RNA結合タンパク質 / 軽度知的障害 / 自閉症様行動 / R3HDM1欠損症 / マイクロRNA / 染色体逆位
研究開始時の研究の概要

我々は、軽度知的障害と自閉症様の行動を示す症例の2番染色体逆位の解析を行い、世界初のR3HDM1欠損症として報告した。この逆位は、R3HDM1遺伝子内に局在するMIR128-1(miR-128)の発現には影響しなかった。さらに、R3HDM1が神経突起の伸長促進に関与することを見出しており、miR-128の作用とは相反した。従って本症例は、R3HDM1とMIR128-1の不均衡な発現により発症する、新しい遺伝性疾患概念であるとの仮説を立てた。本研究では、R3HDM1が神経突起を伸長する機構を明らかにし、R3HDM1とMIR128-1の不均衡な発現が本疾患の発症機序であるのかを明らかにする。

研究実績の概要

本研究は、研究代表者らが世界で初めて報告したR3HDM1欠損症の発症機序の解明を目的としている。本症例は、2番染色体の逆位によりR3HDM1がハプロ不全となるが、同遺伝子に包含されるマイクロRNAであるMIR128-1(miR-128-1)の発現量は、健常者と同等であり、逆位の影響を受けないことが判明した(Fukushi et al., 2021)。マウスの脳神経細胞において、miR-128は神経突起の伸長を阻害し、R3HDM1は伸長を促進すると考えられ、R3HDM1とmiR-128-1の不均衡な発現が本疾患の発症機序である可能性は高い。
今年度は以下を明らかにした。①R3HDM1と同属のタンパク質であるARPP21は、神経突起上でR3HDM1と共局在するのか否かを検討する予備実験を行った。ARPP21については、本解析に使用できる市販の抗体が市販されていないため、Flag-ARPP21を作製し、HeLa細胞に対してR3HDM1抗体と共に共染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡観察を行った。その結果、少なくともHeLa細胞ではR3HDM1とARPP21は共局在しないことが判明した。②マウス脳神経細胞におけるR3HDM1の分布について、これまでの神経細胞での解析に加え、グリア細胞におけるR3HDM1の分布についても、R3HDM1抗体を用いた蛍光免疫染法で解析を行った。その結果、神経細胞とは異なり、核での分布が少なく、核周辺や細胞質に広く分布していることが判明した。③本症例の発症機序には、R3HDM1とmiR-128-1の不均衡な発現が関与すると考えられるため、i-GONAD法によるモデルマウスの作製を進めた。今年度は、B6系統への遺伝的背景の交換を進め、5回戻し交配を行った。同じく、miR-128-1欠損モデルマウスも作出に成功し、B6系統への遺伝的背景の交換を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

今年度は、R3HDM1の細胞内における局在の解析、および神経突起を経由してシナプスまで運搬するmRNAを同定することを目標に研究を行った。R3HDM1が神経細胞において、核に多く分布していることはこれまでに見出していたが、それ以外の脳細胞におけるR3HDM1の分布については不明であった。そこで今年度は、グリア細胞におけるR3HDM1の分布を明らかにした。また、R3HDM1と同属のタンパク質であるARPP21との局在の差異についても、両者は細胞内で異なる局在を示す可能性があることを明らかにした。しかし、今年度予定していた神経突起上をR3HDM1がどのようなmRNAを運搬するのかを、RNA-seq解析で明らかにするには至らなかった。これは、前年度から引き続いている培養環境のトラブルが原因であるが、最近ようやく改善されたため、今後はマウス胎児の準備が整い次第、神経突起に特異的なRNAの同定を行う。
一方、疾患モデルマウスの作出は順調であり、R3HDM1のホモ、ヘテロ欠失マウス、miR-128-1遺伝子の欠損マウス、いずれについても継代繁殖を行っており、細胞学的、組織学的解析や行動解析に向けて準備中である。

今後の研究の推進方策

R3HDM1欠損症の発症機序を解明するためには、まずR3HDM1自体の機能を解明することが重要であるが、今年度もR3HDM1がシナプスまで運搬するmRNAを同定するには至らなかった。そこで次年度は、当研究部門でRNA解析に精通する山田憲一郎主任研究員を研究分担者に加え、研究のスピードを上げる。山田主任研究員は、日常的に培養神経細胞からのRNA抽出、さらに疾患モデルマウスの交配、維持を行っているため、1)既に抽出済みのR3HDM1ホモ欠失マウスの神経突起由来のRNAに加え、 R3HDM1の野生型マウスの神経突起由来のRNAを抽出し、両者でRNA-Seqを行うことで、R3HDM1がシナプスへ運搬する標的mRNAを網羅的に検索する。2)標的mRNAが同定できた場合、マウスの大脳皮質あるいは海馬由来の初代培養神経細胞に対してmRNAとR3HDM1を用いてin situハイブリダイゼーションを行い、神経突起上でR3HDM1が標的mRNAと結合しているのかを解析する。3)作製済みのR3HDM1の欠損マウス、miR-128-1遺伝子の欠損マウスを用いて、①胎仔由来の初代培養神経細胞を用いた神経突起形成の差異の解析、②シナプスまで運搬するmRNAの差異の解析、③脳におけるR3HDM1の分布や発現の差異についての脳薄切切片を用いた免疫染色による解析、④R3HDM1欠損マウスに特異的な行動様式(活動性、学習・記憶、不安・うつ、注意機能、運動機能など)の解析を行う。さらに両モデルマウスを交配し、本疾患のR3HDM1とmiR-128-1の不均衡モデルマウスを作製し、上記と同様の解析を行うことでR3HDM1欠損の脳病態を明らかにし、本症例の軽度知的障害や自閉症様行動の病因を解明する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 染色体腕間逆位から同定した知的障害の新規原因遺伝子R3HDM1.2022

    • 著者名/発表者名
      林 深, 福士大輔, 稲葉美枝, 加藤君子, 鈴木康予, 榎戸 靖, 野村紀子, 時田義人, 水野誠司, 山田憲一郎, 若松延昭
    • 学会等名
      第125回日本小児科学会学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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