研究課題/領域番号 |
22K07879
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
鈴木 禎史 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第二部, 科研費研究員 (70465003)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 神経変性疾患 / 髄鞘形成不全 / 病態解析 / 幹細胞分化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、6名のPLP1重複変異PMD患者から樹立した疾患特異的iPS細胞を分化誘導したOPCs、OLsを用いて、①PLP1重複変異がもたらす細胞自律的な分子・細胞病態をミトコンドリア機能障害に着目した網羅的な解析により解明し、②その病態機序がOLs分化や髄鞘化に及ぼす影響を、神経細胞との共培養による機能的解析から検証することで、本仮説を実証する。さらに③上記①と②で得られた病態分子候補のレスキュー実験による細胞表現型や髄鞘化の改善を検証することで、本疾患の新たな治療標的の同定を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、PLP1遺伝子重複によって起こる先天性大脳白質形成不全症の代表的な疾患であるPelizaeus-Merzbacher病(PMD)の新規病態解明を行うことである。 疾患特異的iPS細胞を用いて、①病態モデル構築、②iPS細胞から分化誘導したオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs)とオリゴデンドロサイト(OLs)を用いて、PLP1重複変異によって起こる細胞・分子病態について、ミトコンドリア機能障害に関連した解析を進めた。 ミトコンドリア障害によって起こると仮定した代謝異常を検証するために、オルガノイドサンプルを用いたメタボローム解析を行うことができた。現在詳細な解析中であるが、予想とは反してコレステロールやコレステロールエステルの合成量に関して、コントロールと大きな差が無いことがわかった。 昨年に引き続き、オルガノイドを用いてOLsの分化効率について解析を続けた結果、PMD-OLsの細胞数の減少と細胞形態異常(Processの長さや分岐数の低下)を検出した。これまでの解析結果から、OPCsの段階で細胞形態異常が起きており、OPCs-OLsの分化期間にミトコンドリアROSと細胞内ROSが上昇することを確認してきたことから、ROSが病態候補の一つであると仮定し、ROSのインヒビターを用いた解析を行った。ROSの上昇がみられるオルガノイド培養90日にNAC(N-アセチルシステイン)を継続的に添加し、その30日後に解析した結果、NAC非添加群と比較してNAC添加群のOPCsではProcessの長さや分岐数の改善がみられた。さらに、一部のOLsにおいても同様の改善が見られ、神経軸索に向かって伸長したProcessを検出することができた。今回の結果から、細胞形態異常の上流にOPCsから上昇するROSが働いている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、使用機器の移設などで実験を進めるにあたって制限がある期間があった。そのため、昨年度と同様の解析や準備していた実験については進めることができたが、ミトコンドリアの機能や分解に関する実験については、予備検討しか実行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
PMD-OLsの分化成熟度や髄鞘化について検証し、PMDの正確な病態像を捉える。同時に、OPCsから上昇するROSが細胞病態として寄与するか証明するために、ROSインヒビターを用いて髄鞘化の改善効果を確認していく。 PLP1重複変異によって起こると仮説するミトコンドリア機能異常について、OPCsのどの段階でどのような異常が引き起こされるか検証し、発症機序を明らかにしていくことを計画している。
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