研究課題/領域番号 |
22K07897
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
木内 善太郎 杏林大学, 医学部, 助教 (00756249)
|
研究分担者 |
成田 雅美 杏林大学, 医学部, 教授 (70313129)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | グルココルチコイド / 骨障害 |
研究開始時の研究の概要 |
合成糖質ステロイド(以下、GC)は様々な疾患の治療に頻用されるが、小児では長期使用にて骨軟骨の成長障害を惹起させる。GCの骨への影響は、骨芽細胞や破骨細胞のアポトーシス調整や骨端軟骨細胞の増殖抑制に関わるが詳細は不明である。最近、申請者は新規のGC作用の実行分子Glucocorticoid-induced transcript1 (以下、GLCCI1)の機能として、胸腺T細胞では抗アポトーシス作用を発揮することを明らかにした。本研究では骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞でのアポトーシス経路とGLCCI1の関与を証明し、その経路を標的としたGC誘発性骨障害における新規の救済薬の開発を行う。
|
研究実績の概要 |
申請者は新規の糖質ステロイド(GC)作用の実行分子Glucocorticoid-induced transcript1(GLCCI1) の機能として、胸腺T細胞では抗アポトーシス作用を発揮する事を明らかにした。この研究の中でGLCCI1は、キナーゼの対応基質として機能する事、floxマウスとして作成した全身細胞でのGlcci1高発現であるGlcci1 conditional transgenic mouse(TG/Cre mouse)は、体格が小さい事を発見した。軟骨細胞に関しては、ATDC5にデキサメタゾン(DEX)を10μM投与し、蛋白とRNAレベルでGLCCI1の発現が増強したが、glucocorticoid receptor antagonistであるRU486を加えた後にDEX投与しRNAを評価したところGlcci1の発現は抑制されていた。軟骨細胞においてもGlcci1はglucocorticoid receptorからのシグナルにより制御されていることが分かった。骨の研究では、tamoxifen投与(100mg/kg 週1回経口投与で6週間)を行ないGLCCI1の発現を増強させた18週齢メスのTG/Cre mouseにて軟X線、骨密度測定、マイクロCTを行い骨構造解析を行なった。その結果、Cre recombinaseを有しないTg mouseに比較し、TG/Cre mouseは軟X線にて低身長で、長管骨が細く、骨密度は23.6%も減少していた。マイクロCTでの骨構造解析ではTG/Cre mouseは骨梁数や骨梁幅も減少し、海綿骨が粗造化しており骨粗鬆症を呈していた。元々、GLCCI1はGCによりmRNAの発現が増加する分子として同定されており、GLCCI1がGCによる骨障害作用の根幹に関わる実行分子として働く可能性を強く考える重要な研究成果を得る事が出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
小児感染症の流行に伴う診療業務の増加に加え、GLCCI1の軟骨細胞や骨芽細胞での基本的な情報収集のためのin vitro実験に当初予期していた以上に時間を要している。そのため、遺伝子導入実験まで到達する事が出来ていない。
|
今後の研究の推進方策 |
骨格の構成要素である軟骨と骨の発生・発達は、軟骨細胞・骨芽細胞・破骨細胞が重要な役割を担い、いずれもglucocorticoid receptorを発現しており、従来からGCの作用標的細胞として研究されてきた。中胚葉および神経堤に由来する共通前駆細胞から分化する軟骨細胞・骨芽細胞は内軟骨性骨化と膜性骨化に重要な働きを担っている。軟骨細胞のcell lineであるATDC5および骨芽細胞のcell lineであるMC3T3-E1にGlcci1 plasmid constructをtransfectionしGlcci1過剰発現細胞と、Glcci1 small hairpin RNAをtransfectionしGlcci1 knock down細胞を作成し細胞周期の変容、アポトーシス活性化能と増殖能を解析する。さらに、これらの細胞株におけるキナーゼの発現変容を、キナーゼアレイとメタボロームを用いて正常株と比較検討する。 また、in vivoでは18週齢メスのTG/Cre mouseでは骨密度が低下しており、非脱灰標本にてVillanueva Goldner染色を行い類骨の評価をし、骨代謝回転評価も行う予定である。TG/Cre mouseは全身細胞にてGLCCI1が高発現している実験系であり、骨・軟骨代謝以外にも、性ホルモン、副甲状腺ホルモン、ビタミンDなどの内分泌系が関与している可能性もある。骨からのRNA抽出を行いRNAシークエンスにて、GLCCI1高発現によりどのような分子やパスウェイに変化が生じたか網羅的に解析を進める。これによりGLCCI1対応キナーゼやリン酸化経路の同定を行う。これらを標的とした化合物をさらにスクリーニングすることでGC誘発性骨障害における新規の救済薬の開発を行う。
|