研究課題/領域番号 |
22K07898
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
藤原 優子 帝京大学, 薬学部, 講師 (70722320)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 糖脂質 / 質量分析 / 副腎白質ジストロフィー / スフィンゴ糖脂質 / スフィンゴ糖脂質糖脂質 / LC-MS / 脂質代謝 / 先天代謝異常疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
副腎白質ジストロフィー(X-ALD)は、重篤な脳白質の脱髄と副腎不全を呈する先天性遺伝疾患であり、発症早期における造血幹細胞移植が唯一の治療法となっており、X-ALDの発症機序を解明し、病型特異的な診断法を確立することは、重要な課題である。申請者は、開発したスフィンゴ糖脂質の測定法を改良し、高感度なものとし、病型規定因子、および病態特異的に変動する新奇脂質を同定し、病型診断法の確立へと結びつける。
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研究実績の概要 |
X連鎖性副腎白質ジストロフィー(X-ALD)は、副腎機能不全に加えて後天的に発症する脳白質の脱髄に伴う神経細胞の変性を主体とする先天性遺伝疾患である。X-ALDでは、細胞質からペルオキシソーム内への炭素数24以上の極長鎖脂肪酸の輸送過程に異常が生じる結果、極長鎖脂肪酸の分解ができなくなり、血液や組織に極長鎖脂肪酸が蓄積する。臨床診断基準には血中の極長鎖脂肪酸分析及び遺伝子診断が用いられているが、中枢神経系の脱髄の機序や極長鎖脂肪酸蓄積の病態への関与もほとんど解明されていない。病因遺伝子であるABCD1遺伝子変異と臨床病型の間に明らかな相関関係は認められず、遺伝子型から発症年齢あるいは臨床病型を予測することはできない。現状でX-ALDの唯一の治療法は発症早期造血幹細胞の移植であり、効果的な診断・治療を行う上で発症や病型を規定する因子の探索および病型診断法の確立が強く求められている。脳白質にはガングリオシドを始めとするスフィンゴ糖脂質が多く含まれ、糖脂質がこれら疾患の炎症反応の一つの原因となっている事が考えられる。しかしながら、糖鎖構造に関する多くの報告に比べ、疎水基の構造も含めた分子種レベルでの解析はほとんど行われていないことに注目し、我々は、その複雑な分子構造の為に、網羅的な解析が著しく遅れていたスフィンゴ糖脂質の一つ一つの分子種を測定する方法を開発した。 本研究では、微量サンプル中におけるスフィンゴ糖脂質を測定するために、Nano flow を用いた高感度な構造解析法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. Nano flowによる測定、解析系の構築においては、微量サンプルの解析のために、まず、マウス脳を用いて、質量分析計にnano flowを介して、超微量持続注入装置(TriVersa NanoMate)を接続し、そのスプリッター機能により、MS分析と同時にフラクションを分取したのち、長時間微量注入と精密質量測定による構造決定の解析系の最適化を行った。 2. X-ALD患者剖検脳凍結標本とabcd1KOマウス脳を用いてスフィンゴ糖脂質の網羅的解析を行なった後、確立した解析系を用いて、患者剖検脳と野生型およびabcd1KOマウス脳での発現の相違を示したスフィンゴ糖脂質分子種の構造解析を行った。その結果、患者剖検脳に多く存在するが、マウス脳には存在しない、または微量にしか存在しないスフィンゴ糖脂質の構成糖およびセラミド分子種が同定できた。 3. 患者剖検脳のうち、炎症部位である大脳と非炎症部位である小脳での発現の相違を示したスフィンゴ糖脂質分子種の構造解析を行っている。 4. 日本ブレインバンクネット(JBBN)にヒト大脳、小脳のコントロール試料の提供の申請を行い、書類審査、会議を経て承認された。
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今後の研究の推進方策 |
1. 日本ブレインバンクネット(JBBN)より提供されるヒト大脳、小脳のコントロール試料を用いて、患者剖検脳とのスフィンゴ糖脂質の発現の相違を検証する。また、JBBNより、新たに数例のX-ALD患者大脳および小脳の提供が可能との提示を受け、症例数を増やして実験を行う。 これにより、大脳における炎症部位により発現の違いや年齢、病型による発現の違いなどを見出すことができると期待される。 2. 中枢神経系培養細胞株(特にグリア細胞株) をもちいて、スフィンゴ糖脂質の測定解析、代謝と生合成酵素の解析をおこなう。 使用する培養細胞株は T98Gヒトグリア芽腫(多形性)、U-251MGヒトアストロサイトーマ, U-87MGヒトグリア芽腫・アストロサイトーマを検討している。
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