研究課題/領域番号 |
22K07904
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 |
研究代表者 |
田中 基樹 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 障害モデル研究部, 主任研究員 (90584673)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 新生児低酸素性虚血性脳症 / プロゲステロン / 神経保護作用 / ステロイドホルモン / 神経ステロイド |
研究開始時の研究の概要 |
新生児低酸素性虚血性脳症は、母胎内や分娩時のトラブルにより脳が低酸素・虚血状態に陥ることで起きる脳障害である。新生児にてんかんや精神運動発達遅滞等の重篤な後遺症を生じさせ、最重症の場合は死をもたらす。低体温療法は現在有効な唯一の治療法だが、高度な医療機器を必要とするため実施医療機関は非常に限られ、また治療を行っても重篤な後遺症が残る場合が多い。申請者はある種のステロイドが、重度低酸素性虚血性脳症モデル動物の脳傷害を顕著に低減させることを見つけた。本研究ではこの知見を基に、医療過疎地等でも実施可能な「多くの新生児」を救うことのできる新規治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、プロゲステロン受容体アゴニストnestoroneが新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)に対する有望な新規治療薬になり得るのではないかと考え、HIEモデルラットを用いてnestoroneの有効性を検証している。2023年度に得られた主な実績は以下の2点である。 (1)HIE処置から1週間後までnestoroneを皮下投与し、HIE処置4ヶ月後の認知機能を新規物体認識試験により調べた。オス、メス共にHIE処置によって試験の成績は大幅に低下していたが、nestoroneの投与によってその機能障害は有意に改善された。一方HIE未処置のラットにおいては、nestoroneは試験成績に有意な影響を及ぼさなかった。以上の結果は、nestoroneはHIE後の認知機能障害を改善する働きがあるとともに、その機能に対する有害な副作用はないことを示唆している。 (2)Nestoroneによる脳保護作用の機序を解明するために、HIE後の神経炎症に対する作用を調べた。HIE処置48時間後に活性化アストロサイトのマーカーであるGFAP及び活性化ミクログリアのマーカーであるCD68の発現を免疫組織化学染色によって解析した。その結果、GFAP及びCD68は共にHIE処置によって顕著に増加していたが、HIE処置後のnestorone投与はそれらの増加を有意に抑制した。この抑制効果は、オス、メス両方で観察された。以上の結果より、nestoroneのHIEに対する脳保護作用は、抗神経炎症作用を介したものであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実験を予定通り行うとともに、その結果は、nestoroneがHIEに対して有望な新規治療薬であることを示すものであった。また本研究をさらに発展させるためのデータも得た。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の結果から、nestoroneはHIE処置後の認知機能障害を改善させる作用があることが示唆された。これまでの解析から、nestoroneはHIE処置後の脳組織損傷を有意に軽減させることも分かっており、損傷部位が小さくなったことで、HIE後の認知機能低下が抑えられた可能性がある。一方、nestoroneが生存組織の機能を増強することで、認知機能低下を抑えている可能性を示唆するデータも得ている。そこで2024年度では、電気生理学的手法を用いて、HIE処置後の脳組織のシナプス伝達及び可塑性を調べ、nestorone投与群と溶媒投与群との間に差があるか否かを解析する。 またnestoroneによる脳保護作用の機序の一つとして、活性化アストロサイト及び活性化ミクログリアの抑制作用があることが示唆されている。どのようなシグナル伝達系を介して、アストロサイト及びミクログリアの活性化を抑制しているのか、先行研究を基に、調べていく予定である。
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