研究課題/領域番号 |
22K07912
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
郷 清貴 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40908779)
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研究分担者 |
加藤 太一 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20422777)
山本 英範 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (80801662)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 蛋白漏出性胃腸症 / 腸内細菌叢 / Fontan手術 / 単心室症 / メタゲノム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
蛋白漏出性胃腸症(Protein-Losing Enteropathy: 以下PLE)は単心室型の先天性心疾患に対する機能的修復術であるFontan手術後の患者に発症する予後不良な疾患である。しかし、その発症機序は解明されておらず、治療法も確立していない。近年、消化管疾患だけでなく、様々な疾患の発症や重症化と腸内細菌叢の関連が報告されているが、Fontan術後のPLEと腸内細菌叢の関連についての報告はない。本研究の目的は、次世代シークエンサーを用いたPLE患者に特異的な腸内細菌叢組成の探索と、便のメタボロームによる網羅的な解析により、PLEに関与する菌種、代謝物などの因子を同定することである。
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研究実績の概要 |
Fontan術後に発症するPLEはしばしば治療抵抗性で予後不良であるが、発症や活動性を予測するバイオマーカーは開発されていない。本研究はFontan術後PLE患者とPLE未発症患者の腸内細菌叢を、16S rRNAを標的とした次世代シークエンスにより網羅的に解析して比較した。その上で細菌叢の多様性や特定菌種の存在量の変動がPLEの発症や活動性と関連するか検討した。研究同意を得られたPLE患者17例(活動性PLE群:8例、寛解期PLE群:9例)、対照群:20例を対象とした。便サンプルから細菌DNAを抽出した後、16S rRNA領域のPCR増幅を行い、次世代シークエンンサーMiseqを用いて配列データを得た。配列データを得た後の細菌叢に関する一連の解析を、QIIME2パイプラインにより行った。 α多様性の指標Chao1、Shannon index、Faith’s PD indexは活動性PLE群において寛解期PLE群と対照群に比し有意に低く、活動性PLEにおける細菌叢の多様性低下が示唆された。Unweghited Unifrac距離は、活動性PLE-寛解期PLE群間と活動性PLE-対照群間(q<0.01)に有意差を認め、活動性PLE群の細菌叢構成は他の2群と異なることが示された。Linear discriminant analysis effect size (LEfSe)解析では、活動性PLE群では寛解期PLE群に比べBifidobacterium属、Ruminococcus torques属の相対存在量が少なく、Granulicatella属の相対存在量が多かった。 ここまでの本研究の成果について、学会での報告および国際学術誌での論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、すでに学内での倫理審査を終えていたこともあり比較的速やかに対象患者の便検体および臨床情報の収集を開始することができた。便検体からのDNA抽出、次世代シークエンスの過程は問題なく施行できた。解析結果は概ね仮説通りであり、これまでの研究成果を国際学術誌に論文発表できたことから本課題2年度としては概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに症例を蓄積し、複雑なPLEの病態と腸内細菌叢の変容との関連をより詳細に検討したいと考えている。同時に、現在マウスに下大静脈の部分結紮術を行い、Fontan術後の中心静脈圧上昇を再現したモデル作成を行っている。患者糞便やPLEの活動性への関与が疑われる細菌種を同モデルに投与することでPLEを発症または増悪するかの検証を予定している。これにより、特定の細菌叢構成や菌種が実際にPLE発症や増悪に関与するかを検討する。
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