研究課題/領域番号 |
22K07930
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
江川 潔 北海道大学, 医学研究院, 助教 (40450829)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ドラベ症候群 / 難治てんかん / GABA受容体 / GABA / てんかん / 知的発達症 / 脳波異常 |
研究開始時の研究の概要 |
ドラベ症候群は難治性てんかん・重度の発達障害を呈する遺伝性疾患である。現在使用されている抗てんかん薬では十分な発作抑制が得られ難く、患者とその家族とって大きな問題となっている。本研究では、一部の特異なGABA受容体のみを活性化させる新奇薬物KRM-II-81がドラベ症候群のてんかん発作、また認知機能障害に有効なのではないか、との仮説をたて、ドラベ症候群の遺伝子をノックアウトしたモデルマウスを用いて検証を行う。温熱刺激によって誘発されるけいれん、脳波異常、認知機能障害に対し、KRM-II-81を投与することでどのような効果を認めるかを検証し、従来の抗けいれん薬と比較する。
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研究実績の概要 |
2022年までにα2/3サブユニット含有GABAA受容体陽性変力薬であるKRM-II-81が、DSマウスにおいて抗けいれん作用、抗不安作用を示す一方、比較的高用量ではDSマウスにおいてのみ鎮静作用を示すという予想外の結果がえられた。その機序を解明するため、2023年度は、マウスより急性海馬スライス標本を作製し、CA1錐体細胞より全細胞パッチクランプ記録を行うことで、DSマウスのGABA作動性抑制機能、およびKRM-II-81による変化を検討した。DSマウスでは自発抑制性シナプス後電流の頻度が有意に減弱しており、SCN1A機能欠失によるシナプス前細胞(抑制介在ニューロン)の発火不全を反映すると考えられた。KRM-II-81は抑制性シナプス後電流の減衰時間を増やすことで抑制増強作用をきたしており、その増加割合はDSマウスにおいて有意に高かった。シナプス前細胞の機能不全に対する代償としてシナプス後ニューロンにおけるα2/3サブユニット含有GABAA受容体の活性化が惹起されていると考えられ、高用量KRM-II-81による鎮静作用につながっているものと考えられた。この結果は、DS患者におけるGABAA受容体陽性変力薬の導入は、より少量から開始するなど慎重にすすめるべきであることを示唆しており、臨床へのフィードバックとしても重要な結果と考えられた。代償機能とするとKRM-II-81慢性投与ではα2/3サブユニット含有GABAA受容体の活性化はなくなっていくはずで、2024年は、慢性投与により鎮静効果、主効果がどうなっていくか検証する予定である。上記の結果は2023年、ポルトガルで開催されたヨーロッパ神経科学学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、電気生理学的解析を2023年度に完了し、得られた成果は国際学会で発表するとともに論文として報告した。データは順調に得られ、KRM-II-81がDSマウスにおいて鎮静作用を示すという一部予想外のものもあったが、精密に検証することでそのメカニズムを理解し、より重要な臨床的メッセージを提供することが可能となった。成果は既に国際学会で発表、論文にて報告しており、研究の進行はおおむね想定どおりといえる
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はKRM-II-81の腹腔内投与による慢性投与を1定期間(2週間)行い、鎮静作用、種作用の程度を評価する。また、臨床でベンゾジアゼピンと組み合わせて用いられるスティリペントールをKRM-II-81と組み合わせて投与し、その相乗効果を検証する予定である。成果は2024年日本小児神経学会で報告する予定である。
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