研究課題/領域番号 |
22K07956
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野中 綾 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (50786621)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 一細胞解析 / AFPGC / 細胞分化 / AFP産生胃がん / オルガノイド / シングルセル解析 |
研究開始時の研究の概要 |
AFP産生胃がんがどの様に肝臓様と腸管様の二方向性に分化するのかを、一細胞RNA解析から同定した遺伝子を抑制することにより明らかにする。アイソフォームの発現が分化により異なる転写因子についてはそれぞれ個別に抑制を行う。SALL4とHNF4Aは転写因子であり、アイソフォームの違いによりゲノムのどの領域に結合するか、またAFP産生胃がんオルガノイドの分化により、どのように結合領域が変化するのかをChIP-seqにより明らかにする。一細胞解析の結果と比較し、HNF4AおよびSALL4が制御する遺伝子を同定する。その結果、AFP産生胃がんの二方向性の分化制御と悪性度の形質を異種移植によって同定する。
|
研究実績の概要 |
α-フェトプロテイン産生胃がん(AFPGC)は通常の胃がんとは異なり肝細胞がんに類似した遺伝子発現を示す。AFPGCにおいて、胃の組織から肝臓様の発現を示すのか明らかにした研究報告はこれまでにほとんどない。 AFPGCオルガノイドを分化誘導し、single cell RNAsequensing(scRNA-seq)解析を行うと、一細胞から腸管様、肝臓様およびAFPの発現はみられないが、AFPGCおよび肝臓がんで高発現しているGPC陽性細胞の3つのグループに分化することが示された。この細胞分化がどの転写因子がどの様な機構で制御しているかを明らかにすることを本研究の目的としている。我々はこの分化にともない、AFPGCで高発現している転写因子HNF4AとSALL4のアイソフォーム発現も変化していることが明らかにした。しかし、SALL4の結合モチーフは同定方法や発現している細胞により異なり、確定されたモチーフはない。本実験ではAFPGCの細胞株であるFU97を用いて、アイソフォームの違いによる結合モチーフの違いを試みた。またAFPGCのscATAC-seqの結果を腸管様、肝臓様のクラスターに分け、FU97から得られたSALL4の結合モチーフを探索した。その結果、腸管様クラスターで発現するSALL4のアイソフォームの結合モチーフは、腸管様クラスター特異的なATACピークで濃縮することが示された。このことは、SALL4のアイソフォーム発現の変化とAFPGCの発現分化が関連あるのではないかと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AFPGCの細胞株であるFU97を用いた、SALL4のChIP-seqを用いることで、データーベースにはないSALL4の結合モチーフの同定が可能となった。このモチーフをMultiome解析のツールであるScenic plusのデータに組み込むことで、これまで出来なかったAFPGCで高発現しているSALL4を含めた一細胞解析が可能となった。 AFPGCオルガノイドの分化は、非常に似ているためscATAC-seqとscRNA-seqのデータ統合は不十分であった、そのため同一細胞から両データを得られるmultiome single cell解析を行った。しかし、AFPGCオルガノイドの分化をscRNA-seqと同様の条件で試み、multiome解析を行ったが、先行のscRNA-seqと比べると、明確な分化誘導を得ることが出来なかった。これはAFPGCの培養培地は多くのサプリメントを使用し、このうちR-spondin、Wnt, Nogginは当研究室で培養培地から得ている。そのため活性の違いや、オルガノイドの増殖速度の変化で分化効率が変化していると考えられた。また、分化細胞を得るまで2週間かかるため、分化条件を同定するのに時間を有した。
|
今後の研究の推進方策 |
使用するWnt培地の活性の調整や、分化誘導までの培養日数を調整し確実に腸管様と肝臓様に分化する条件を確定し、再度multiome解析を行うことを試みる。解析ツールScenic plusや遺伝子ネットワークを解析するCelloracleを用いて、各クラスター分化に重要な転写因子を同定する。またこの解析ツールには,AFPGCで高発現しているSALL4のモチーフが組み込まれていないため、我々が行ったSALL4のChIP-seqから得られたモチーフをデーターベースに収納し解析を行う。AFPGCではSALL4のアイソフォーム発現が重要であると考えられるため、各アイソフォームのSALL4モチーフを同定する。siRNAを用いた実験では、SALL4の発現抑制効率が50%と低いためサリドマイドを用いた抑制を計画している。サリドマイドはSALL4AとBのアイソフォームのうち、Aのみにある2番目のジンクフィンガードメインを標的としプロテアソームを介した分解を誘導すると報告されている。これにより、同一抗体を用いた、SALL4A/B及び、SALL4BのChIP-seqを行い、結合モチーフを同定する。AFPGCオルガノイドの分化にSALL4がどの様に関与しているか明らかにしていく。
|